仲間救う「供血犬」知って 敦賀の児童文学作家・別司さんが本出版
2023年6月7日(水) 中日新聞
児童文学作家の別司(べっし)芳子さん(63)=敦賀市布田町=が、輸血治療が必要な犬を救うために血液を提供する「供血犬(きょうけつけん)」をテーマにしたノンフィクション「元気のゆずりあい 地下室にいた供血犬シロ」(フレーベル館)を出版した。
「子どもたちに供血犬の存在を知ってもらうとともに、命の尊さを考えてもらうきっかけになれば」と願う。
供血犬をテーマにしたノンフィクションを出版した別司さん=敦賀市で
主人公は2017年9月、東京都内のある動物病院でボランティア活動を始めた都内在住の米国人ケリー・オコーナーさん。
病院の地下室で、汚れた狭いケージの中で飼われていた供血犬6匹と出会い、衝撃を受けた。
犬たちの暮らしを良くしようと地下室の掃除から始め、SNS(交流サイト)で発信し、引き取ってくれる人を探した。
犬たちの幸せのために奮闘するオコーナーさんの姿を追った。
別司さんは21年2月、飼っていた雑種猫「つんつん」が足に大けがを負ったことをきっかけに動物の手術や輸血について調べ、供血犬の存在とオコーナーさんの活動を知った。
「なぜ病院で供血犬を飼わないといけないのか」。
疑問に思い、関係者に連絡を取った。
コロナ禍に電話やオンラインで取材を重ね、子どもたちにも分かりやすい文章でまとめた。
全ての供血犬の待遇が悪いわけではなく、大切に育てられている供血犬もいる。
ただ、日本には動物の血液バンクの仕組みがなく、輸血治療が必要になった動物を救うためには献血してくれる動物が欠かせない。
動物の献血や動物の医療費について解説するコラムもあり、動物の健康や幸せを考える「アニマルウェルフェア」を幅広く学べる作品となっている。
別司さんは「コロナ禍でペットを飼う人が増えた。犬や猫は長生きし、輸血や治療、介護が必要になる場合もある。最後まで責任を持って飼うために、動物たちの幸せに関する知識を身に付けてほしい」と話す。
A5判、184ページ。
税込み1,694円。
書店やインターネットで購入できる。
供血犬
病気やけがで輸血治療が必要になった犬に血液を提供するため、動物病院などで飼われている犬。
「供血猫」もいる。
人間は献血された血液を保管して必要な人に届ける仕組みが確立されているが、日本には動物用の同様の仕組みはなく、動物病院で供血犬・猫を飼ったり、献血ドナーに登録してくれる飼い犬や猫を募って輸血に備えている。
県獣医師会によると、県内でも一部の動物病院で供血犬や供血猫を飼っている。
献血ドナー制度を設けている病院もある。
(成田真美)
著者:別司芳子
定価:1,694円(本体1,540円)
発行年月:2023年2月
発行:フレーベル館
サイズ:縦220mm × 横160mm × 背幅18mm
ページ数:184ページ
出版社内容情報
輸血治療をうける犬たちのために生かされているだけの「いのち」があるなんて……。
ボランティアで働くことになった動物病院の地下室のドアを開けたとたん、ひどいにおいに言葉も出なかったケリーさん。
シロたち6匹の供血犬もそのケージも汚れきっていたからだ。
ペットを救うために働く地下室の供血犬たちが幸せに暮らせるように、ケリーさんは行動することに決めた!
内容説明
犬も猫も病気やけがをしたときに、輸血が必要になります。
血液を分け与える仕事をする犬や猫は「供血犬」、「供血猫」と呼ばれます。
動物病院の窓のない地下室で飼われていた供血犬たちに出会い、幸せな暮らしをさせたいと願ったケリーさんの行動から、動物たちの幸せ、アニマルウェルフェアを考えてみましょう。
目次
はじめに 供血犬って知っていますか?
第1章 ケリーさんのボランティア活動
第2章 地下室の供血犬たち
第3章 どうして「供血犬」「供血猫」が必要なの?
第4章 動き始めたケリーさん
第5章 SNS「供血犬ってご存じ?」
第6章 地下室から供血犬がいなくなった日
第7章 シロの幸せを願って
第8章 元気のゆずりあい
さいごに 「わたしにできること」ってなんだろう
著者等紹介
別司芳子[ベッシヨシコ]
福井県生まれ。日本児童文学者協会、日本児童文芸家協会会員。「でこぼこ凸凹あいうえお」にて第23回小川未明文学賞優秀賞を受賞(『凸凹あいうえおの手紙』と改題しくもん出版より刊行)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。