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マダニ感染症「東進」じわり ネコ・イヌなどが媒介も

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マダニ感染症「東進」じわり ネコ・イヌなどが媒介も

2023年4月2日(日) 東京新聞

◆要注意!春から秋にかけて活動活発化
マダニが媒介する感染症で、悪化すると死亡する恐れのある「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」の感染者の増加傾向が続いています。
感染地域は西日本が中心でしたが、東日本へじわじわと広がりつつあります。
野山や草むらでマダニにかまれるだけでなく、感染したネコやイヌとの接触で飼い主や獣医師らにうつる感染ルートも確認されています。
マダニは春から秋にかけて活動が活発化するため、厚生労働省などが注意を呼びかけています。
(榊原智康)

SFTSは、ウイルス性出血熱の1つで2011年に中国で初めて報告されました。
国内では13年に山口県で初めて確認されています。
主に野山や草むら、畑などで、SFTSウイルスを保有するマダニにかまれることで感染します。
動物へも感染し、イヌやネコのほか、野生のタヌキやイノシシ、シカなどからもウイルスの抗体が見つかっています。

◆致死率30%
人が感染すると、発熱や下痢、嘔吐(おうと)、下血などの症状が現れます。
血小板や白血球が減少し、重症の場合は多臓器不全を起こします。
国立感染症研究所によると、致死率は約30%。有効な治療薬はなく、高齢者ほど重症化しやすいといいます。
感染者は増加傾向にあります。
13年は48人でしたが、19年には100人を突破。
21年は110人、22年は118人と2年連続で最多を更新しました。
一方、感染地域も広がりを見せています。
これまでは西日本が中心でしたが、徐々に東へと進んでいます。
21年には愛知県と静岡県で、22年には富山県で初確認されました。
感染研などの21年の調査では、17年に採取していた千葉県の男性の検体からSFTSウイルスが見つかっています。
感染研の前田健・獣医科学部長は「SFTSウイルスを保有するマダニが、イノシシやシカなどの野生動物にくっついて運ばれ生息域を広げている」と推測。
「関東地方にも野生動物が多く生息している。何年先になるかは分からないが、関東もSFTSの感染地域になるのは間違いない」とみています。

◆新ルート
これまでSFTSへの感染が懸念される場面としては、農業・林業などの野外作業やアウトドアレジャーの際などが中心でした。
17年にSFTSに感染したネコが初めて確認された後は、屋外に出して飼育されているペットのネコやイヌとの接触という新たな感染ルートが報告されるようになりました。
日本医療研究開発機構(AMED)の研究班がまとめた統計によると、17年から22年末までにネコ598匹、イヌ36匹の感染が確認されています。
症状は食欲低下や嘔吐、下痢、黄色い尿が出る、などで致死率はネコで60%程度、イヌでは40%以上とされます。
イヌは症状が出ないケースがあるため、ネコより感染の報告が少なくなっているとみられます。
感染研によると、ネコやイヌなどの診療を通じて感染したと推定される獣医療関係者は18年以降で計10人に上ります。
飼い主が感染したケースの統計はまとめられていませんが、前田部長は「獣医療関係者の倍ぐらいあるのでは。飼い主と獣医療関係者を合わせると、年間のSFTS患者のうち数%がマダニを介さず、ペットから感染しているとみられる」と指摘します。
ペットの嘔吐したものやふん尿を処理したり、かまれたりした際に感染していると考えられています。

◆住宅地にも
感染地域を中心に各地域の獣医師会では、獣医療関係者やペットの飼い主らに注意を求めています。
東京都ではこれまで感染報告はありませんが、都獣医師会は20年度にSFTSが疑われるネコの診療マニュアルを作成。
疑いネコが来院した際は獣医師らはマスクやガウン、ゴーグルなどを着用し、入院させる場合には隔離が必要とし、動物病院に周知を図っています。
ただ、すべての動物病院に隔離施設があるわけではなく、備えは十分とはいえません。
都獣医師会の中川清志副会長は「屋外に出ることがあるペットのネコやイヌが、元気がなく尿が黄色くなるなどの症状が出たら、まずは動物病院に電話して相談してほしい」と呼びかけます。
感染研の前田部長は「マダニはタヌキやアライグマ、ネズミなどあらゆる野生動物によって運ばれ、野山に限らず住宅地にもいる。ネコは屋内飼育で外に出さないのを原則にすべきだ。イヌやネコ用の防ダニ薬も一定の効果はある」と説きます。

◆ペットに関する報告制度なし
SFTSは、感染症法上は「4類」に分類され、患者を診断した医師は保健所に届け出る必要があります。
一方、ペットがSFTSに感染した場合、獣医師が行政などに報告する制度はありません。
日本医療研究開発機構の研究班がイヌやネコの感染例について統計を取っていますが、自主的な報告に基づいています。
家畜の感染症に関する報告制度は家畜伝染病予防法で定められていますが、ペット全般の感染症を対象にした法律はありません。
感染研の前田部長は「今は研究ベースで報告を求めているが研究費がつかなくなったら途絶えてしまう。しっかりとした報告制度をつくる必要がある」と話しています。


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