<保護犬保護猫協会>に聞く!
絶対に預けては行けない施設の見極め方。悪質な里親にも注意!
2023年3月25日(土)
環境省の統計資料によると、犬・猫の引取り数は約5万8000匹(令和3年度)。
だがここ数年は、さまざまな自治体や愛護団体の協力、そして並々ならぬ努力により、保護犬・保護猫が新しい里親に譲渡される割合は、増加傾向にある。
「テレ東プラス」は、「Yahoo!ニュース」を通じて、全国の10代以上2000人に「保護猫・犬」に関するアンケートを実施(2023年2月14日)。
結果を踏まえ、専門家に話を聞いた。
絶対に預けては行けない施設の見極め方
「遺棄されたなどのペットが、殺処分されることがあるのをどう思いますか?」の問いに「殺処分をなくしたいと思う」と答えた方は65.2%、「ある程度は仕方がない」と答えた方は26.4%で、関心の高さがうかがえる。
一方で、「保護猫や保護犬を引き取ったことはありますか?」の問いに「はい」と答えた方は、わずか10.8%にとどまった。
「引き取りたいとは思うが難しい」と答えた方は45.4%
「住宅事情など環境が整っている場合、保護猫や保護犬を引き取りたいと思いますか?」の問いに「引き取りたいとは思うが難しい」と答えた方は45.4%、「引き取りたいと思う」と答えた方は21.4%、「引き取ったことがある」と答えた方は、わずか4.3%。
引き取りに関心はあるものの、実行に移せないというジレンマがあることが明らかに
「保護猫や保護犬について、該当するものをお選びください」の問いに対する答えは、上記グラフの結果に。
「興味はあるが、飼えない事情がある」「かわいそうだとは思うが、飼えない」と答えた方が62.8%と過半数以上にのぼり、関心はあるものの実行に移せないというジレンマがあることが明らかに。
中には、「譲渡を受けたいが相談先が分からない」という意見も見られた。
今回のアンケート結果を踏まえ、「日本保護犬保護猫協会」代表・門田充博さんに、保護犬・保護猫にまつわる実情について、話を聞いた。
◆純血種の子猫や子犬は98%ほどの確率で飼い主が決まるが、大型犬や雑種の場合はマッチしにくいのが現状
――「日本保護犬保護猫協会」では、現在どのくらい犬や猫を預かっているのでしょうか。
「シェルターは全部で4つあり、保護犬が約45匹、保護猫が約60匹います。保護する理由はさまざまで、飼い主の経済的な理由や重い病気、逮捕されたために預けられたケースも。保護活動は犬猫だけでなく、飼い主を助ける活動でもあるのです。 私たちの施設では、週に1~2回ほど譲渡会を行っています。純血種の子猫や子犬は98%ほどの確率で飼い主が決まりますが、大型犬や雑種の場合は見つかりにくいというのが現状です」
――やはり純血種や子犬が人気なのですね。アンケートでは、多くの方が保護活動に関心がある一方で、里親になったことがある方は少数でした。これにも純血種の人気が関係しているのでしょうか。
「そうですね。やはりペットショップで純血種を買う方が多いので、里親になる方が少ないのだと思います。 日本の動物愛護の精神は、欧米と比べて30~40年ほど遅れていますが、それでも約30年前と比べると良くなっていると思います。 保健所での犬の殺処分数は、平成16年度は155,870頭だったのに対し、令和元年度の殺処分件数は5,635頭。昔と比べるとかなり減っていますが、まだまだ多くの動物が殺処分されています。安楽死というと安らかに聞こえるかもしれませんが、実際は炭酸ガスを使って窒息死させる...苦しみながら亡くなっていくのです。それでも、こうして取り上げていただいたり、有名人がシェルターを作ったりと、関心は高まってきていると思います」
――欧米では、ペットショップで生態販売を禁止している国も多いですよね。日本もいずれ、そうなる可能性はあるのでしょうか。
「時間はかかるかもしれませんが、そうなる可能性はあると思います。ペットショップではなく、ブリーダーから直接買われる方も増えていますよね。ブリーダー=悪と言う人もいますが、私は一概にはそうは思いません。純血種を一生懸命守っている方も沢山いますから」
――保護された犬や猫は、人に対して恐怖心を抱いている子が多いのでしょうか。
「やはり、虐待されている子は人を怖がります。例えば、足が近づいただけで『蹴られる』と避けたり、掃除のためにホウキを持っただけで『叩かれる』と怖がったり...どのように虐待されてきたのかがすぐに分かります。 噛みつくなど、飼い主が手に負えなくなって預けるケースもあります。私たちは、問題行動がある子もできるだけ引き受けます。預けるハードルを低くしないと最終的に殺されてしまうので、私たちが最後の砦だと思っています」
――問題行動のある子は、次の飼い主さんに繋げるまでにどのような対策をするのでしょう。
「去勢していない子は必ず去勢します。実は、去勢すると大人しくなる確率が7~8割。そこから長い時間をかけて、人間は怖くないということを教えます。怖くて犬小屋から出てこない"引きこもり"の子もいるので、そういう子には時間をかけてコミュニケーションを取り、少しずつ馴らしていきます」
――心に傷を負った子たちを馴らすには、時間がかかるのですね。保護活動には、エサ代などのお金もかかりますよね。
「そうですね。ドッグフードだけでも1日15kgほど消費するので、全国から送られてくる支援物資にかなり助けられています。フードは1ヵ月あたり150ケースほどいただきますし、私たちの施設では、お預かりする時に飼育管理費用を頂戴しているので、それでなんとかやりくりしています」
――本来避けるべきことではありますが、もしもどうしても飼えなくなってしまった場合、預け先の施設選びで気をつける点はありますか?
「保護した子を動物実験用に売り飛ばす悪質業者がいるので、絶対に注意してほしいです。昔は保健所に収容された犬猫が実験用動物として譲渡されることがあったのですが、その制度が廃止になり、実験用動物が高値で取引されるようになりました。その結果、飼い主から安い金額で預かり、高値で売る悪質業者が現れるように。 どうしても飼えなくなった方は、『なんとかこの子を助けたい』と藁にもすがる思いなので、騙されてしまうのです。 事前に施設を見学することができるか、途中で面会ができるか、しっかりと調べておきましょう。悪質業者は見学や面会に来られると困るので、『忙しいし、犬猫が精神的に不安定になるので』など理由をつけて避けようとします。 また、都会の一等地にあり『引き取りや輸送費無料、多頭の場合は50%OFF』など甘い言葉を謳っているところも怪しいです」
高齢者は動物を大切にする方が多い。例え限られた時間でも、保護犬や保護猫が幸せに暮らすことが大事
――里親側にも悪質な人はいるのでしょうか。
「残念ながら存在します。ですから私たちは、動物虐待や転売目的でないか調べるために、かなり厳しく審査します。約40項目の質問に答えていただき、家族全員の写真や身分証のコピー、飼育する場所や外観の写真、マンションの場合はペット規約のコピーも提出していただきます。これまで飼育経験がある方は、かかりつけの動物病院を教えていただき、スタッフが電話で受診歴があるか確認。動物病院から『この方は大丈夫』と言われたら安心です。 また、実際に家まで行き、逃亡できないようになっているかチェック、対策が足りない場合は指導もします」
――絶対に偽れないようになっているのですね。高齢者の場合、里親になるのは難しいのでしょうか。
「高齢の方にはお渡ししないところがほとんどだと思います。その理由は、飼い主が先に亡くなってしまう可能性があるから。しかし私たちの施設は、審査に合格すれば高齢者でも里親になることは可能です。もし先に亡くなってしまったら、犬や猫をもう一度こちらで預かれば良いという考えです。なぜなら、シェルターにいるよりも、1対1で大切にされた方が幸せですから。 私たちも愛情を注いでいますが、やはり集団生活なので、マンツーマンの愛情にはかないません。高齢者は動物を大切にする方が多いですし、例え限られた時間でも、保護犬や保護猫が幸せに暮らすことが大事ですから。 塞ぎ込んでいる高齢者にとっても、犬や猫がいるだけで、どれだけ生活に覇気が出るか...。お互いが幸せになれることが大事なのです」
――最後に、保護活動における将来の希望を教えてください。
「日本はまだ動物愛護に関する法律が少なすぎるので、ドイツやイギリスのように、政治家も一丸となって動物愛護に取り組んでいただければと思います。 保護犬や保護猫を減らすためには、正しい躾も必要です。手に負えなくなった子を預けるケースも多いので、ドッグトレーナーの教育にも力を入れなければいけません。日本はまだ躾の部分でも遅れているので、ドッグトレーナーが一般の家庭のワンちゃんたちを躾けるという文化も広めていかなければいけないと思います」
【日本保護犬保護猫協会】
諸々の理由で行き場がなくなってしまったり、人間に遺棄されたり、保健所へ収容されたりしそうな犬や猫の命を救う団体。里親を探しながら一生涯を保証し、手厚く面倒を見る制度「終身お預かり」を実施している。
スタッフ全員が懸命に新しい飼主を探し、日々飼育管理。
お預かり中は面会も可能。
保護犬や保護猫を一時的に預っていただけるホストファミリーも大募集中。
(取材・文/みやざわあさみ)