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ラッコがいなくなる!? 絶滅危惧種

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ラッコがいなくなる!? 絶滅危惧種 国内水族館飼育数3匹に減少

2023年2月27日(月) 東京新聞

水族館の人気者「ラッコ」は、実は絶滅危惧種。
現在、国内で飼育されているのは3匹だけだ。
主な生息地である米国からの輸入は、保護規制で4半世紀途絶えており、日本での繁殖も不可能な状況。
生態の把握や海の環境を考える上でも貴重な存在だが、国内の水族館からラッコが姿を消す日が近づいている。
(有賀博幸)

三重県鳥羽市の鳥羽水族館。
ラッコのお食事タイムは来館者のお目当ての一つだ。
飼育員が投げ、水槽のガラス面にはり付いたイカ耳を、2匹のラッコが競うように水中から跳び上がって取る。
今度はもう少し高い所に。
届かないとみるや、さらに深く潜って勢いよくジャンプ、見事ゲットした。
飼育歴40年の石原良浩さん(61)は「いろいろな動きをさせるのは、体に異常がないかチェックし健康管理をするため。運動にもなるし、お客さんが喜んでくれれば、一石二鳥にも三鳥にもなります」。


ラッコのメイ(右)とキラ=鳥羽水族館提供

◆ピーク時は122匹
同館では、全国で2番目に早い1983年にアラスカラッコ4匹を米国から輸入し、飼育を開始。
翌年赤ちゃんが生まれ、ラッコブームに火がついた。
日本動物園水族館協会(東京)によると、以後、集客の目玉として各地の施設が飼育を始め、ピークの94年は28施設で122匹に。
その後は減少の一途をたどってきた=グラフ。

鳥羽水族館には多い時で6匹いたが、今は同館生まれのメイ(18歳)と、2021年3月にアドベンチャーワールド(和歌山県白浜町)から来たキラ(14歳)の雌2匹。
あとは、マリンワールド海の中道(福岡市)に雄のリロ(15歳)が1匹いるだけだ。
ラッコの出産年齢は3〜16歳で、メイはすでに高齢の域。
キラはまだ出産可能だが、福岡のリロとは兄妹のため近親交配になり、繁殖は諦めざるを得ない。
飼育下でのラッコの寿命は20〜25歳とされ、3匹とも2〜6年後にはその域に入る。

◆乱獲などで禁輸
国内のラッコの繁殖計画にも携わってきた石原さんは、危機的状況に「急な話ではなく、予想されたこと」と受け止める。
主な要因は、北太平洋東部に生息域を持つ米国が、乱獲やアラスカ沖でのタンカー事故(1989年)による個体数の減少を理由に、98年を最後にラッコの輸出を禁止したことにある。
国内で増やすしか手がなく、自館や水族館同士での貸し借りで繁殖に努めた。
これまで国内で扱われた3百匹余のうち約2百匹が施設で誕生。
成果はあったが、「年齢や世代を重ねるにつれて交尾意欲が薄れ、繁殖への参加率が落ちてきた」という。
 一方、野生では2017年ごろから北海道東部・霧多布(きりたっぷ)岬沖で、アラスカラッコより一回り大きいチシマラッコが目撃され、繁殖も確認されている。
4年前から現地調査に加わる石原さんは、赤ちゃんが親からはぐれて保護が必要になった場合などに備え、関係者間で受け入れ態勢を考えておく必要性も指摘する。
鳥羽水族館では、絶滅危惧種の草食海獣「ジュゴン」(推定36歳)も飼育しており、こちらは世界の2水族館で2頭のみ。
飼育研究部課長の半田由佳理さん(49)は「絶滅危惧種と言っても実際に見たことがないと、その動物や生育環境への関心を持ちにくい。希少な動物を1日でも長く見てもらえるよう、大切に飼育したい」と話す。

<ラッコ>
食肉目イタチ科の海生哺乳類。
チシマラッコ、アラスカラッコ、カリフォルニアラッコの3種がいる。
北太平洋の北米大陸から千島列島にかけての沿岸に生息。
通常1産1子。
18世紀以降、良質な毛皮を目的とした乱獲で激減し、2000年に国際自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧種に指定した。


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