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猫からの手紙

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「猫からの手紙」が生んだ心の交流にほっこり、地域猫を見守る住民と保護団体の連携で1匹の猫が幸せに

2023年2月2日(木) 

練馬区のある施設の木に、“猫からの手紙”が貼り出された。
タイトルは<僕を可愛がってくださった皆様へ>。
もともと地域猫として見守られてきたこの猫が、ケガをして保護され、新たな家族を得るまでこの手紙は続き、住人たちからも返事が届いた。
地域猫をめぐる住人との温かい交流について、NPO法人『ねこけん』代表理事・溝上奈緒子氏に聞いた。

■「ケガした猫を助けて!」住民たちから通報、地域猫を心配する声が相次ぐ
パン君は、『ねこけん』の地元、東京都練馬区のある地域施設の周りで暮らしていた猫。
白黒のちょっぴり地味な出で立ちの猫だが、周辺の人々から愛され、ゴハンをもらって生活していた。


保護された当時、首にケガをしていたパン君(写真:ねこけんブログより) 

かつて、『ねこけん』はこのあたりで大規模なTNR(飼い主のいない猫を捕獲し、不妊去勢手術を施し、元の場所に戻す)を実施しており、パン君もその際に去勢手術を受け、同じ場所に戻された猫なのだという。
そんなパン君が、あるとき首に大ケガをし、血をにじませてうずくまっていた。
2017年のことだ。
「当時、『猫がケガをしている』『なんとか保護してほしい』といった通報が、何件も何件も寄せられました。それだけ、周囲の方々から心配された猫なんでしょう」
地域猫といえば、管理がずさんだと他の住民とのトラブルにもなりかねない存在ではある。
だが、その周辺は餌やりさんによってしっかりお世話・管理が行き届いていたおかげか、近隣の人からの苦情はほとんどなかったという。
飢えた猫がゴミを荒らすようなこともなく、TNRを実施したため繁殖して頭数が増えることもない。
そんな環境だったからこそ、多くの人がパン君ら地域猫を可愛がり、心配してくれたのだろう。
通報を受けた『ねこけん』は、無事にパンくんを保護することになった。
「パン君はひどいアレルギー性の皮膚炎でした。獣医さんによると『家の中に入れたら治るかもしれない』ということだったので、保護して室内でケアをすることになりました」
さらにパン君が元いた場所に、心配する近隣住民に向けた“パン君からの手紙”を貼ることにした。
<僕は今、入院して傷の治療をしています。心配かけてごめんなさい。命に別状はありませんので、安心してね。いつも可愛がってくださり、ありがとうございます。  白黒の猫より 代筆 NPO法人ねこけん>
「手紙を貼ったのは、パン君への温かい気遣いへのお礼の意味も込めて。また、ゴハンをあげて世話している猫が急にいなくなったら、とても不安になりますよね。車にひかれたんじゃないか、病気で苦しんでいるんじゃないかって。その気持ちはすごくわかるので、保護されて治療していることを伝え、安心していただきたかったんです」

■「ありがとう、感謝!」住民からの温かい返事、最後の“手紙”は――

今では家族と穏やかに暮らしている(写真:ねこけんブログより)

そして、その“手紙”は一方通行では終わらなかった。
ふたたび経過報告の手紙を貼りだすと、ある日、住民からの返事が記されていた。
<姿が見えなくなり心配していましたが、治療うけさせてもらっていたと知り安心しました。ありがとうございます。 近所のおばさん>
さらに、パン君が正式に『ねこけん』の保護猫となったことを報告すると、<ありがとう、感謝>の文字が。
時間が経っても、変わらずパン君を想う住民たちの温かい気持ちが伝わってくるようだった。
「このような交流があることは、本当にありがたいですね。この地域の餌やりさんがしっかりお世話と管理をしてくれていたから、猫たちを見守ってくださる方が増えたのではないかと思います。しかも、手紙はパン君が元いた地域施設付近に貼っていたのですが、区の職員さんも温かい目で見てくださり、はがさずにそのままにしてくださったようです」

そして今年。『ねこけん』の代筆で<僕を可愛がってくださっていた皆さまへ>という新たな手紙が貼り出された。
そこに書かれていたのは、パン君が保護猫生活を終え、<本当の家族>を得て平和に暮らしていること。
楽しく、元気で、健康であること、幸せに過ごしていること。
最後には、<皆さんも、お元気でお過ごしくださいね>という住民たちへの温かい思いが綴られていた。
なかなか家族が見つからず、長い間シェルターで暮らしていたパン君。
面倒見が良く、ほかの猫たちから兄のように慕われる優しい猫だった。
現在は、新たな家族となったボランティアメンバーの家で、仲間に囲まれ幸せに暮らしている。
遠くから見守っていた住民たちも、手紙を通じてパン君の状況を知り、ホッと胸をなでおろしていることだろう。


パン君にやっと家族が見つかり、最後の手紙が貼り出された(写真:ねこけんブログより) 


「地域猫」と「TNR」について

野良猫を「地域猫」に、というのがベストな方法だと勘違いしている人間が多いと思います。
また、TNRという言葉を鵜呑みにして、不妊手術したら放す、このような行動を興す人間が多いのではないでしょうか。
本来、「地域猫」と「TNR」とは意味が異なります。

◆地域猫活動とは
「地域猫」とは、一言でいうと「飼い主がいなくて地域で管理されている野良猫」のことです。
特定の飼い主がおらずお外で生活するという点では野良猫と同じですが、地域住民の方々の合意のもと特定の餌場やトイレを設置し皆で適切に面倒を見ていくという点で大きく異なります。
地域猫は不妊手術を受け、目印のために耳先をカットしたりピアスをつけたりします。
もしあなたが道端で耳先をカットされた猫に出会ったならば、その子はきっとその付近で可愛がられている地域猫さんでしょう。
望まれない命は作らない、作らせない。
でも、生まれてきた命はできるだけ長生きさせてあげたい・・・。
こんな気持ちを持つ人たちが、猫と地域の共生を目指して、「地域猫活動」を進めるケースが増えてきていますが、「地域猫活動」が、ただの「エサやり」になってしまうと、地域社会に新たな問題を起こしてしまうことになりかねません。
また、「地域猫」といえど、飼い猫のように飼い主のもとで安全に生活できる環境ではなく、危険が付きまとっています。

◆TNR活動とは
T=TRAP(つかまえる) 捕獲器を使って野良猫を捕まえます。
N=NEUTER(不妊手術する) これ以上不幸な猫が増えないように、不妊手術を行います。この時に不妊手術をした証として耳をカットします。
R=RETURN(元の場所に戻す)  その猫が暮らしていたもとの地域に戻す。
「地域猫」のように地域の方々が協力し合い、上記の「地域猫とは」のように適切に面倒を見ていくような環境ではない場合、この「TNR」が手段となるのです。
不妊手術により子猫が産まれず不幸な猫が増えないという効果はありますが、それ以外は猫にとっては野良猫同然、なんの安全保障もないのです。
動物愛護活動団体ですら、これを地域猫活動と混同して行っているところが見受けられます。
いずれにせよ、「捨てる人あれば拾う人あり」という言葉がありますが、捨てる人間がいるから不幸な動物が発生する、捨てる人間の裏では保護する人たちの苦労が絶えず、無責任な捨てる人間が犯した大きな罪ではないでしょうか。


(byぬくもり)


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