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「猫の日」に考える殺処分ゼロのためにできること

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“飼い主ロス”になる保護猫も
 「猫の日」に考える殺処分ゼロのためにできること

2023年2月22日(水)

家族として猫をお迎えするにあたり、近年は保護団体からの譲渡を考える人が増えています。
保護猫の譲渡率は上昇し、それに伴い殺処分数も減少傾向にあるものの、いまだゼロにはなっていません。
また猫の殺処分数は犬と比較して非常に高く、安易にお迎えを決め、飼育を放棄する飼い主が後を絶たないのが現状です。
そこで、無責任な飼い主にならないよう、猫を迎える前に考えてほしいことや保護猫の現状について、NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」(広島県広島市)で理事長を務める佐々木博文さんにお話を伺いました。


新しい家族との出会いを待つ保護猫【写真提供:NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」】

 ◇ ◇ ◇

◆ペットショップを廃業し犬猫の保護シェルターに
「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」では、広島と東京のシェルターにて、一般家庭などでやむを得ず飼えなくなった全国の犬や猫、小動物の引き取り保護をし、里親探し活動を行っています。
また、犬猫の殺処分ゼロ、無責任な飼い主ゼロを目指し、TNR活動(野良猫に不妊手術を施し元の場所に戻す)を推進。
地域猫活動にも率先して取り組んでいます。
始まりは今から25年前の1998年。広島県でペットショップを運営していたところ、犬猫の殺処分に関するニュースを目にし、その数に驚きました。
それととともに責任の一端を感じ、ペットショップと並行して保護活動と里親探しを開始。
その後ペットショップは廃業し、2005年にその場所を保護シェルターに改装しました(現在の広島本部)。


東京支部は保護犬・猫カフェスタイルで運営【写真提供:NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」】

その後は広島県内を中心に保護活動をしてきましたが、2011年の東日本大震災時には、福島第一原子力発電所近くに取り残された犬猫の保護活動も行っています。
それと同時に、被災が原因で飼い主を失った犬猫の一時保護や里親探し活動も開始しました。
そして、2018年には東京支部を開設。
これは、2016年に東京都が「犬猫の殺処分ゼロ」政策を打ち出し、行き場のない犬や猫が公的機関ではなかなか引き取ってもらえなくなった余波として関東での保護依頼が急増し、模索した結果でした。
保護犬・猫を取り巻く現状を多くの人に知っていただくために、東京支部は施設内へ入りやすくなることを意識し、保護犬・猫カフェスタイルで運営しています。

◆ペットの所有者には「終生飼養の努力義務」がある

猫の引き取り依頼は多い日だと10件以上にも【写真提供:NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」】

現在、東京支部では1日に平均して5~6件、行き場のない猫の保護依頼があります。
多い日は10件以上になることも。
しかも、引き取りの数は1件につき1匹ではなく、だいたい2~3匹。私たちは非営利の民間団体のため、依頼者にやむを得ない理由があった場合にのみ保護を引き受けています。
そのため、すべての猫を保護できるわけではないというのが現状です。
引き取りの依頼者のなかには、「飼えなくなったから引き取ってほしい」「保護したけれどうちでは飼えないから」という人もいます。
もちろん、一緒に暮らせないことにはさまざまな理由があると思います。
しかし、所有者にはペットに関する法律として「終生飼養の努力義務」が定められており、絶対に守らなければなりません。
無責任な育児放棄は法律違反です。
もちろん、保護団体へむやみにペットの引き取りを依頼するようなこともあってはなりません。
一緒に暮らしていたペットが亡くなったことで「ペットロスになった」という飼い主たちの声もよく耳にするようになりましたが、それはペットたちも同じです。
飼い主に手離されたことで、ペットたちが「飼い主ロス」に陥ってしまうことをよく理解してほしいと思います。

◆新しい家族と出会えないまま最期を迎える保護猫も
日本では、幼齢の保護猫はすぐに里親が決まります。
しかし、歳を取っていれば何年経っても譲渡先は見つかりません。
高齢の保護猫たちは、新しい家族を見つけられないままシェルターで命が尽きることがほとんどです。
人によって飼われ、飼育放棄され、最期は家族のいないまま亡くなっていく姿には大変心が痛みます。


高齢の猫は新しい譲渡先がなかなか見つからない現状も【写真提供:NPO法人「みなしご救援隊 犬猫譲渡センター」】

「かわいい」や「かわいそう」といった感情だけでは、猫を幸せにすることはできません。
保護猫のお迎えを考えている人たちは、以下の2つのことを必ず守ってください。
・猫の習性と飼育方法、猫のデメリットを知ったうえで飼うこと
・飼う前に猫アレルギーの検査をすること
そして、猫が生きる15~20年ほどの時間のなかで、自分の結婚や出産、仕事の転勤、親の介護、病気……ライフスタイルの変化や年齢を想定して、猫の命が尽きる最期の日まで、しっかり責任を持って面倒を見ることができるかをよく考えることが大切です。

◆「人と動物の共生」を達成するために
最近では、保護猫の会員制サービスが話題となりました。
一見、猫のためであるかのように思えても、よく調べてみると、人間目線だけの一方向からしか見ていないサービスが散見されます。
しかし、猫が幸せになるための、猫目線のサービスを作ろうとするとそれなりの資金が必要で、存続が難しいのも現実です。
利益や人間だけが楽しむことだけを目的とせず、猫も人間も幸せになれるよう「人と動物の共生」を達成するために、必要なことをもっとしっかり考えるべきだと思います。
飼う側一人ひとりが、猫たちの命の重さに責任を持って迎え入れることができれば、保護猫という存在も生まれないはずです。
保護猫への関心が高まっていますが、その一方で少子高齢化も進み、今後ますますペットの飼育放棄が増える可能性もあるでしょう。
そうならないためにも、飼い主たちが動物の命に対する意識をもっと向上させることを望みます。

【写真】厳しい現実を生きる保護猫たち 施設内には新しい飼い主を待つ保護犬たちの姿も

Hint-Pot編集部


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