補助犬 トイレのマナー完璧です
法律で保障、入店拒否しないで!
2023年2月1日(水) 中日新聞
盲導犬や介助犬など、障害のある人の生活を支えパートナーとして活躍する補助犬。
そのトイレ事情はあまり知られていない。
実は、補助犬は使用者の指示に従って排せつする訓練を受け、使用者は便の後始末まで徹底している。
ただ、店側がそのことを知らず、違法に受け入れを拒否する背景の一つになっているという。
(佐橋大)
道具を使いペットシーツを拾い上げる松山さん(社会福祉法人日本介助犬協会提供)
岐阜県各務原市の松山ゆかりさん(40)は、病気で手足に力が入らず、車いすで生活。
介助犬サスケと共に暮らす。
外出時は、サスケのトイレ用具を必ず持参。
基本的に多目的トイレの中でペットシーツを敷いて用を足させる。
「排せつで迷惑を掛けないよう細心の注意を払っている」と話す。
補助犬の使用者は、身体障害者補助犬法によって、補助犬を適切に管理するよう義務付けられている。
その一環で補助犬は、使用者の指示に従って排せつするよう訓練され、使用者も排せつのタイミングをつかむ練習などを繰り返す。
それぞれの障害に応じ、便を処理する道具も工夫。
視覚障害のある人が盲導犬を使う場合、シーツの位置を把握しにくいため、犬に排せつ用のベルトや袋をつけるなどして対応する。
松山さんは、事前に多目的トイレの情報を確認。
犬の様子や行動予定を考えて排せつを指示し、サスケはそこで初めて排せつする。
「サスケにストレスをかけないよう、早めの指示を心がけている」と松山さん。
尿の時はサスケにシーツを拾わせ、ふんの時は、自作の道具を使用。
シーツを引っかけるために、伸縮する孫の手の先にフォークを付けたもので、シーツにも輪っかをつけておく。
排せつ後はふんごとシーツを持ち上げ、持ち帰る。
公共施設やデパート、レストランなどは、補助犬の受け入れを法律で義務付けられている。
ただ、松山さんは、この一年で飲食店に入店を拒否されたことがあるという。
理由は不明だ。
「受け入れ拒否の背景には、法律の理解不足や、衛生面での誤解がある」と訴えるのは、日本盲導犬協会の山口義之・専務理事。
昨年12月、日本身体障害者補助犬学会で、スーパーマーケットの従業員に協会が昨夏実施した調査結果が報告された。
388人が回答し、約30%は、視覚障害者が一人で盲導犬の排せつ物の処理をできないと考えていることが分かった。
盲導犬の入店を拒否すると答えた人も4%。
山口専務理事は「店は法律の趣旨にのっとって対応してほしい。一般の方も、補助犬連れで入店に困っている人を見たら、大丈夫だと後押ししてもらえたら」と協力を求めた。
<補助犬>
視覚障害者の安全な歩行を助ける盲導犬、音の情報を聴覚障害者に伝える聴導犬、肢体不自由の人のさまざまな動作の代わりをする介助犬の3種類。
国内ではそれぞれ848頭、58頭、53頭が実働している。
同伴する障害者に使いやすく整備を
同学会理事の高柳友子さんは「補助犬使用者にも配慮した障害者用トイレを整備してほしい」とも呼びかける。
車いすと補助犬が一緒に入って動けるスペースがなかったり、視覚障害者用のセンサー式の音声案内がなかったり、使いにくい多目的トイレがあるという。
「補助犬使用者、訓練事業者が、犬の排せつ方法、障害特性を踏まえた要望をまとめ、伝えていくことが必要」と話した。
高柳さんによると、欧米ではペットシーツを用いない屋外排せつが主流。
空港では、海外の補助犬に配慮し、屋根のついた屋外トイレスペースを設けることも。
中部国際空港では二〇一九年、第二ターミナルの屋外に、尿を流すシャワーも備えたトイレスペースができた。
シャワーも備えた中部国際空港の補助犬用トイレスペース