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<くらしの中から考える>動物福祉

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<くらしの中から考える>
動物福祉

2023年1月6日(金) 中日新聞

◆配慮が進む動物園…心身の健康目指す
「動物福祉」(アニマルウェルフェア)という言葉を知っていますか?
動物が心身ともに健全な状態であるようサポートすることをいいます。
動物園を手掛かりに考えました。
(長田真由美)

札幌市円山動物園の「ゾウ舎」は、2018年に完成した最新の施設。
アジアゾウ4頭が生き生きと暮らせるよう、さまざまに配慮されている。
飼育場の床材は、一般的なコンクリートではなく砂。
体重が重いゾウは脚への負担が大きく、ひづめがひび割れるなど、コンクリートではトラブルが起きやすいからだ。
ゾウが好きな水浴びは、屋内外の両方にプールを設けて、冬でもできるようにした。
また、飼育担当者はゾウがいるスペースには入らない。
ひづめを整える削蹄や採血などの健康管理も、専用の扉を介して行う。
飼育展示課の坪松耕太さん(39)は「ゾウにとってもストレスが少なく、飼育員や獣医師の安全も考えた飼育をしている」と話す。
私たち人間は、動物園や水族館の展示動物のほか、家畜動物や研究のための実験動物、一般家庭のペットなどさまざまな場面で動物とともに生きている。
目的に合わせ、こうした動物たちが健全な状態でいられるようにするのが動物福祉だ。
適切な環境で飼育され、恐怖や不安、苦痛など不要なストレスがかかっていないかなどに気を付ける。
「動物も心がある存在だと正しく理解して、関わる必要がある」。
東山総合公園(名古屋市)の企画官として13年間務めた中部大特任講師、上野吉一さん(62)が言う。
動物園なら、日陰に入れる、水浴びができるなど、その動物にとって意味のある環境の整備などを表す。
「日本では誤解されがちだが、動物をかわいがることが、動物福祉ではない」と力を込める。
動物福祉の考えは、1960年代ごろから欧州を中心に広がった。
先行する欧州連合(EU)では、動物園はもちろん、家畜に対しても、かごやおりで育てる「ケージ飼育」の将来的な禁止を検討するなど大きく進んでいる。

◆ペット販売も議論…無計画な繁殖制限
ペットショップでの展示販売自体も動物にはストレスだと議論されており、フランスは2024年から、犬や猫の店頭販売を禁止する。
一方、日本でも〇〇年代ごろから研究が始まった。
21年からは犬や猫を扱うペット業者に対し、ケージの広さや従業員一人当たりの飼育数などの管理の方法を段階的に制限。
無計画に繁殖させる悪質な業者を排除するためだ
ただ、NPO法人「アニマルライツセンター」の調査では、約8割が動物福祉という言葉を「知らない」と答えるなど、認知度は十分ではない。
私たち一人一人が、動物にとっての福祉とは何か、考えていく必要がありそうだ。

 


<くらしの中から考える>
動物福祉(みんなの声)

2023年1月27日(金) 中日新聞

◆命を預かる責任ある 物のような扱いダメ
動物が心身ともに健全な状態であるようサポートする「動物福祉」。
6日の記事には、小中学生のみなさんから、身近なペットとの向き合い方を考えた声が多く寄せられた。
一部を紹介する。

動物福祉は、単に動物をかわいがる「動物愛護」とは違う。
ペットもかわいがるだけではダメ?
愛知県豊田市の挙母(ころも)小5年生が、自分たちの経験をもとに考えてくれた。
佐野太紀君(11)は2年前からメダカを飼育する。
「えさで水が汚れたら水替えをする。魚たちが隠れる場所や、遊ぶ場所作りにも気をつける。水槽の広さもよく考えて用意した。なぜなら、生き物の命を預かるには責任があると思うから」と力を込める。
一方、仲野愛弥さん(10)には苦い思い出があるという。
以前、15センチほどのコイを5匹、同じ水槽で飼っていた。
「一週間ほどで4匹が死んでしまった。水槽は決して大きくなかったので、ストレスがかかり過ぎてしまったのだと思う」と振り返り、「そのことがあったので、動物を飼う時は、できるだけストレスのかからない方法を考えたい」と決意する。
ハムスターを飼っていた荒木崇佑君(11)も「心地良く過ごせるように毎日ケージを掃除して、えさやおやつをあげていたが、病気で死んでしまった」とし、「ストレスを感じないように何かできたかもしれない。そのためには動物のことをもっとよく知ることが大事だと思った」と指摘する。
二村舞香さん(10)は、「動物が好きなので、動物が安心して暮らせる世界をつくりたい。どんな動物にもそれぞれに合った環境があると思う。そんな環境をつくれるよう、私も協力できたら」と願う。
コロナ禍で犬や猫を新しく飼育する人は増え、販売を取り扱う「第一種動物取扱業」にあたるペットショップ業者も増加傾向にある。
こうした業者や飼育のあり方についても意見が寄せられた。
岐阜県土岐市泉西小4年、坪井はる香さん(9つ)は「なぜ動物を物のように扱い、値段をつけて売ったり見せ物にしたりするのか不思議に思っていた。人間以外の動物にだって心が存在するはず」。
愛知県東海市の横須賀中2年、岡田心優さん(14)は「動物を飼うことは、動物を私たちのために利用することでもある。動物を苦しめてしまうのはおかしい。飼う時は幸せな生活をしてもらえるよう、快適な環境を用意してあげたい」とつづった。

◆実験動物や家畜はどうか
皆さんは、どんな動物園が良いと思いますか?
緑豊かで広い空間ならいいでしょうか。
でも本当に大切なのは、そこで暮らす動物が元いた環境に近く、心身ともに健全に過ごせること。
ただジャングルに似せただけでは動物のことを考えているとは言えないでしょう。
今回はペットや動物園の動物福祉を中心に紹介しましたが、実験動物や家畜にとっての動物福祉とは?
考えてみませんか。

(長田真由美)


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