多摩川河川敷の野良猫を守ろうとする人々…
映画「たまねこ、たまびと」完成
2023年1月19日(木)
川崎市などの多摩川河川敷で人間による虐待を始めとした過酷な日々を生きる野良猫たちと、猫を守ろうとする人々を追うドキュメンタリー映画「たまねこ、たまびと」が完成し、各地で上映が始まった。
映画の中心は、猫と河川敷で暮らすホームレスの支援を続ける写真家、小西修さん(67)。
映画を通じて「動物の遺棄や虐待、ホームレスの人への差別がなくなってほしい」と願う。
(中山知香)
男性(左)が世話をする黒猫「ちび」を囲み、談笑する小西さん(中央)と村上監督(多摩川河川敷で)
小西さんが河川敷の捨て猫を知ったのは1989年。
妻の美智子さんが支援活動に関わり始め、小西さんは「捨てられてかわいそうだが、ごはんを食べられるだけ幸せだろう」と思っていた。
だが人目につかない場所で猫を虐待する人間がいると知り、「現場に出てみよう」と思い立った。
一見ごく普通の老若男女が、ゴルフクラブで殴りかかり、どう猛な犬をけしかけて襲わせる。
殺された猫たちの姿に「弱いものへの理由なき暴力。人間ほど怖い動物はいない」と感じた。
30年以上経過した今も、捨て猫はなくならない。
小西さんたちはボランティア団体を通じて新しい飼い主を探し、譲渡が難しい複数の猫は自宅に引き取った。
だがそれも限界があり、河川敷で生きる多くの猫たちには不妊手術を施して見守るしかない。
悪天候でも猫の無事を確認し、動物病院へ連れて行くことも。
河川敷では猫だけでなく、ホームレスに対する投石などの暴力も起こる。
小西さんはホームレスの人たちの支援活動も始めた。
小西さんと「20年来の仲」だという男性(90)は捨て猫を見かねて世話をしており、「どうしても飼えなくなったらボランティアに相談してほしい」と訴える。
今回の映画は、監督の村上浩康さん(56)が小西さんを知り、2年以上追いかけた記録だ。
河川敷に多くの猫が捨てられることに驚いたといい、「猫を捨てたのも人間だが、守るのも人間。それを知ってほしい」と話す。
昨年11月から東京都内や川崎市などで上映が始まり、「猫たちを通して、人間社会が抱える様々な問題、闇が見えた」などの感想が寄せられているという。
今月28日からは、横浜市中区の横浜シネマリンで上映予定。
28、29日は村上監督の舞台あいさつも予定されている。