パンデミック以降、犬を飼うコストは約2倍になったという英国での調査
2022年12月16日(金)
◆世界的な危機と犬を飼うコストの関連
過去3年の間に世界は大きな変化を経験してきました。
コロナ禍によるロックダウン、それに伴う流通や生産の停滞、ロシアによるウクライナ侵攻、ガソリンをはじめとするエネルギー資源の高騰、世界的なインフレと生活を圧迫するような事態が続いています。
経済的な圧迫は当然ながら犬との暮らしにも大きな影響を及ぼしています。
イギリスのドッグ情報サイトPuppies.co.ukがイギリス国内の犬の飼い主813名を対象に行ったアンケートと、物価や飼育放棄との関連を報告しています。
◆飼育費用の高騰に伴って増えている現象
犬と暮らすための費用として最初に頭に浮かぶのはドッグフードの価格でしょう。
皆さんも実感していらっしゃると思いますが、フードの価格は過去3年で大きく上がっています。
パッケージに使われる缶、プラスチック、段ボール、流通輸送のためのガソリン、これらの価格上昇はそのままフードの価格に反映されています。
フードの原材料のうち大豆や穀物の多くがウクライナで生産されていたことも世界中に大きな打撃となっています。
イギリスで犬を飼育するコストはパンデミック直前の2019年には平均55ポンド/月(約9000円)だったそうですが、2021年には平均80ポンド/月(約13200円)、現在は平均109ポンド/月(約18000円)と、3年前の2倍にまで上昇しています。
イギリスの王立動物虐待防止協会は、2022年に飼い主が飼育できないとして動物保護施設に持ち込んだペットの数は、2021年に比較して25%増加していると報告しています。
ザ・ケネルクラブによる調査では3.8%の人が経済的な理由で犬を手放さなくてはならなかった経験があることがわかっています。
この調査では58%の人が愛犬にかかるコストを捻出するために自分のための費用を削ったことがあると回答しています。
しかし他の費用を削るだけではカバーできない出費もあります。
医療費はその最も大きなもので、イギリスではペットの医療費のためのクラウドファンディングが昨年の50倍に増えたということです。
本来なら医療費をカバーするためのペット保険もまた大きく値上がりしていることもこの傾向に影響しているようです。
動物保護団体やケネルクラブでは、ペットを迎える前に経済的なコストをよく考えることはこれまで以上に重要になっていると呼びかけています。
◆苦しい状況だからこそ大切な犬の存在
飼育コストの上昇や生活への圧迫はまったく他人事ではなく、自分の食費を切り詰めてでもという飼い主さんの気持ちは身につまされます。
しかしこのような苦しい状況の中であっても、多くの人が愛犬の存在に救われたことを報告しています。
ザ・ケネルクラブのアンケートでは「生活費が逼迫して落ち込んでいる時、犬が子どもたちのサポート役になった」と約7割の人が答えています。
43%の人が「犬が心の動揺を察してくれる」、52%の人が「犬と過ごすだけでストレスが癒される」と回答しています。
苦しいけれど犬がいるから頑張れるというのもまた真理だと思います。
何の無理もなく犬や猫と暮らし続けられるのが一番ですが、状況が変わってしまった時に手放さざるを得ないこと、無理してでも手放さないこと、どれが正解なのかは他人がジャッジすることではないのかもしれません。
◆まとめ
イギリスでの調査から、フードや保険料など犬を飼うためのコストが過去3年の間に2倍にまで跳ね上がったこと、それに伴ってペットを手放したりクラウドファンディングを行う人が増えているという話題をご紹介しました。
飼育コスト上昇の原因は世界的なものなので、日本においてもこの状況は同じです。
日本では輸入フードを購入している人も多く、円安の影響でフードの値上がりはイギリスよりもさらに深刻かもしれません。
ペットを飼育するための費用のことを考えない安易に動物の購入は常に非難の的となって来ました。
しかしパンデミックや戦争など予期せぬ出来事で厳しい経済状況に陥ることは誰にでも起こり得ると、私たちはこの数年で痛感しました。
危機に備えておくこと、最悪の場合のシミュレーションなどを今一度真剣に考えておく必要がありそうです。
《参考URL》
https://www.puppies.co.uk/puppy-advice/dog-cost-report-2022
https://www.coventrytelegraph.net/news/cost-of-living/dog-owners-going-without-food-25639368