犬猫の「マイクロチップ」義務化から1カ月…課題は「一般への普及」【長野発】
2022年7月25日(月)
犬や猫の体内に埋め込む「マイクロチップ」。
2022年6月から、ブリーダーやペットショップが販売する犬や猫に装着することが義務化された。
マイクロチップには番号が付いていて、災害などでペットがはぐれてしまった際、飼い主を探すのに役立つほか、「飼育放棄」などを防ぐ効果も期待されている。義務化から1カ月。現状と課題を取材した。
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◆装着したマイクロチップで番号を読み取る…飼い主には賛否両論
長野県上田市にある「ペットショップ ワンラブ」。
犬の首の後ろに機械をあてると、15桁の番号が表示された。
見た目や触った感じは全くわからないが、首のあたりにマイクロチップが装着されていて、そこから発信された数字だ。
6月からブリーダーやペットショップで販売される犬や猫に装着が義務づけられた。
ショップの倉島浩章マネージャーは、「今、約40頭いるお店の子は、皆マイクロチップが入っています。
店舗に来る前にブリーダーさんのもとで登録という形になるので、基本的には1回目のワクチンと同じ、生後60日ぐらいで装着をしている」と話す。
購入した新たな飼い主は、この番号をもとに、改めて名前や住所を環境省のデータベースに登録。どの犬がどの人に飼われているかが分かるという仕組みだ。
ペットショップ ワンラブ・倉島浩章マネージャー:
制度を知らない方が多いと思います。
店頭で契約時にお客さまにしっかりご案内して、所有者の名義変更漏れを防ぐ努力をしている 犬や猫を飼っている人に話を聞くと、「震災とかではぐれちゃったりしても、特定しやすいからいいと思う」「いいことだと思います。
飼い犬さんも責任感が持てれば、捨てられる子も減るかもしれないし」という賛成の声がある一方で、「知らないです。ちょっとびっくりですね。どこまで管理されちゃうのかな…」「体の中に(異物が)入るっていうのが、ちょっと抵抗があります」という意見も聞かれた。
【画像】マイクロチップで番号表示、注射で装着する
◆災害時の飼い主探し・飼育放棄防止に期待
欧米では導入が進んでいるマイクロチップだが、異物を入れることに不安を抱く人も多いようだ。
マイクロチップの装着を行っている佐久市の動物病院を訪れた。
この日、小諸市のブリーダー・関口さんが連れてきたのは、生後3カ月のボルゾイ。
飼い主に引き渡す前にマイクロチップを装着する。
佐久平マール動物病院・土屋文人 院長:
心臓の音、問題なしです。
肩甲骨から手のひら1枚上のこのエリアに、打っていきます マイクロチップは、直径1.4ミリ・長さ8ミリ程の円筒形。ガラスのチューブの中に金属のチップが入っている。
佐久平マール動物病院・土屋文人 院長:
注射器のここにチップが入っていて、体にプスッと入れて押し込んで抜く。
(痛みは)一瞬です。
打つ時だけ我慢してねって感じで 小諸市のブリーダー・関口あかねさん:
ちょっと痛そうだったけど、落ち着いていたので良かった。
レントゲン写真をみると… 佐久平マール動物病院・土屋文人 院長:
肩甲骨のちょうど上あたりにマイクロチップが入っている。
皮下脂肪の層に入れるので、動物にとって痛みは少ないとされている。
お尻とかだとぶつかってチップが壊されちゃう。
そういうことも出にくい場所 マイクロチップの装着が日本で大きく注目されるきっかけとなったのが、2011年の東日本大震災と2016年の熊本地震だ。
当時の熊本の保護施設は、飼い主とはぐれた多くの犬や猫で、一時パンク状態となった。
長野県 食品・生活衛生課 高井剛介 課長補佐:
(熊本地震などでは)かなりの数、迷子になって保護されました。
けれども飼い主さんのもとに帰れたのは、ごくわずかと聞いています。
もしマイクロチップが入っていれば、確実に飼い主さんのもとに帰れたと思う。
もう一つ、期待されているのが「飼育放棄」や「虐待」を防ぐ効果だ。
データベースには飼い主の情報も登録されることから、より責任が明確となる。環境省によると、迷子や飼育放棄で保護された犬や猫は2020年度、7万頭余りに上っている。
◆課題は「理解」と「普及」…期待されるメリットは当面限定的か
一方、目下の課題は「普及」だ。
長野県 食品・生活衛生課 高井剛介 課長補佐:
義務化の対象になっていない一般の家庭の犬猫について、どれだけマイクロチップが普及していくか、すごく関心を持っています。
既に飼っているペットへの装着は義務化の対象から外れ「努力義務」とされている。
装着が販売される犬や猫に限られたため、期待されるメリットや効果は当面、限定的と言える。
ボルゾイを連れて来たブリーダーの関口さんは、体への負担を考え、販売しない犬には装着を決めかねていた。
小諸市のブリーダー・関口あかねさん:
老犬や病気の子は体への負担が心配だから、どうしようかなと…
佐久平マール動物病院・土屋文人 院長:
日本より欧米の方が「全頭やりましょう」って国もあるし、そこで実績積んできているから、日本で怖がっているより安全性が高いはず。
スタートから1カ月。
まず制度の周知と装着への正しい理解が必要のようだ。
佐久平マール動物病院・土屋文人 院長:
病院ではこれまで数百匹くらいは打っているかと思う。
7月に入ってからは、15件は打っている。
全て業者さんですね。
一般の方で打ちたいと言ってきた方は、1件あったかないかです。
これからだろうなって感じはしています。
土屋院長によると、マイクロチップの装着はワクチン接種のついでに装着することも可能で、費用は動物病院によって異なるが、3000円から8000円という。
万が一に備えて、あるいはペットを飼う責任感の証しとして、装着を検討してみてはどうだろうか。
(長野放送)
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