障害者と保護犬・保護猫の幸福な生活
県内唯一のペット共生ホームに密着【福井市】
2022年6月15日(水)
障害のある人たちが犬や猫と暮らすグループホームが全国で増えている。
その数900カ所以上。
福井市にも、県内唯一とされる同様の施設がある。
なぜペット共生型のグループホームが増えているのか?
福井市の施設を取材して、動物たちの役割が見えた。
夕方5時、女性が仕事から帰宅した。
真っ先に向かったのは、かごの中の猫のもと。福井市内のグループホーム「おーるわん」。
障害がある人たちが地域との関わりを持ちながら、自立した生活を目指すグループホームで、この施設の最大の特徴は、犬や猫などの動物と共に暮らしていることだ。
ある入居者は「猫じゃらし、作ったおもちゃで遊ぶ。楽しくて大好きです」と話す。
ここで暮らす動物は、1匹の保護犬と5匹の保護猫たち。
甘えん坊のラブラドールレトリバーのサン君、社長の椅子がお気に入りのてんちゃん、おとなしいけど食いしん坊ののんちゃん、一番人懐っこく、おしゃべりなみーこちゃん、好奇心旺盛、やんちゃなコクちゃん、ハクちゃん姉妹。
1匹でも犬猫の命を救いたいと迎え入れられた。
1年半前にオープンしたこの施設には、3つの建物に20代から60代までの27人が暮らしている。
その多くは、日中、仕事に通うなど自由に外出し、帰宅後はそれぞれの部屋と共同スペースで思い思いに過ごしている。
入居者たちは「今まで家で飼ってたけど、亡くなってしまったからここに来て平和です」「(犬を)3匹飼っていた。ゴールデンレトリバーも死んだし、さびしい思いをしていたが、やっとここへ来てサンちゃんとかと遊ぶようになった」などと話し、動物と触れ合う時間を大切にしている。
これまで飼っていたペットを失ったという人も、グループホームで動物たちと暮らせることが心の支えになっているようだ。
また、自分が飼っていたペットと共に入居できることも安心につながっている。
社長の石山大作さんは、警備会社を経営してきたが、人も動物も幸せになれる取り組みをしたいと2020年12月、県内では初となるペット共生型の障害者グループホームを設立した。
警備会社での経験も生かし、防犯カメラを完備。
スタッフが24時間常駐する。
石山さんは「いざ仕事としてみんなと生活していくと、徐々にお客様というより仲間、友達、家族という感じで他人事でなく自分事になる。なんとかしてあげたい、何とかしなきゃという思いが日々高まった1年半だった」話す。
平成元年、障害者が入所施設だけで暮らすのではなく、できる限り地域に出て普通の生活を送れるようにと国が創設したグループホーム制度。
現在、県内には障害者を対象としたグループホームは106カ所ある。
入居者の多くの人が仕事に通い、自立した生活を目指している。
精神的に不安定な時や体調の悪い時もあるが、「おーるわん」では動物と接することで入居者が気持ちのバランスを取っているようだ。
入居者は「僕に懐いてくれる。自分がイライラした時には癒される」とその効果を話す。
サン君の朝の散歩。
動物の世話は基本スタッフが行うが、仕事が休みの時は入居者も同行する。
動物を介して、入居者同士、スタッフとの人間関係がうまくいっていると石山社長は感じている。
石山さんは「入居者とスタッフ、人と人とのつながりがあるが、そこにペットがいることによって共通の話題で会話するようになったり、元気のない入居者がいれば、犬猫のもとへ連れていって励ますとか、人間にはできないことが犬猫にはあると思う」と話している。
動物たちの無邪気で愛らしい姿に癒される入居者たち。
きょうも犬や猫を囲んで、会話を弾ませている。