追跡ニュース 記者の目
「犬の保護に成功」「こんな劣悪な環境で」ドーベルマン窃盗容疑の3人
動物保護が“暴走” 飼い主攻撃も
社会部 風巻隼郎
2022年5月22日(日)
今月11日、千葉県警木更津署から「“ドーベルマン”所在不明」の一報が入った。
「またかよ!!」と記者は叫んだ。
なぜなら、4月にも、同じ飼い主のもとから、今回の2匹を合わせた4匹が逃げ出していたからだ。
わずか3週間足らずで、2回も飼い犬が逃げ出すのか。
その後、ドーベルマンは見つからず。
逃走騒ぎも忘れ去られていた今月19日、男女3人が逮捕された。
飼い主宅に侵入した「住居侵入」と、ドーベルマンを盗み出した「窃盗」の疑いだった。
”2回目”の逃走騒ぎは、まさかの“窃盗事件”だったのだ。
◆逮捕されたのはドーベルマン”発見”のボランティア
動物保護団体メンバーの岡島愛容疑者(29)と高橋里衣容疑者(29)、佐藤徳寿容疑者(51)は、5月8日午後1時半頃から2時半頃までの間、木更津市内の79歳の男性宅に侵入。
男性が飼っていたドーベルマン2匹を盗んだ疑いが持たれている。
左から岡島容疑者、高橋容疑者、佐藤容疑者(20日 送検時の様子)
千葉県警は、ドーベルマンを捜索するとともに、窃盗容疑でも捜査を進めていた。
なぜなら、犬の檻に取り付けられていたワイヤが外されていたからだ。
周辺の聞き込みや防犯カメラの解析などを進めた結果、まもなく岡島容疑者らの関与が浮上したという。
逮捕後、盗まれた2匹は無事保護されている。
そもそも岡島容疑者は、先月、ドーベルマンが逃げ出した際、捜索に参加し、4匹を発見した“お手柄”ボランティアだった。
その後、ドーベルマンは、飼い主のもとに戻り、逃走騒ぎは一件落着。
それなのに、なぜ、窃盗事件は起きたのか。
◆1回目の逃走騒ぎの後「犬を譲って欲しい」
飼い主の男性によると、”1回目””の逃走騒ぎの後、動物保護団体を名乗る岡島容疑者や高橋容疑者とみられる女と面識ができたという。
岡島容疑者らから「犬を譲って欲しい」と打診された男性は、ドーベルマンの子犬3匹のうち、1匹を譲渡。
男性が飼っていたドーベルマン
その時、岡島容疑者は、自らのTwitterに、男性宅で飼われていたドーベルマンの画像を掲載。
合わせて「こんな劣悪な環境で犬を飼ってはいけない」などと投稿していた。
他にも「オス犬の引き上げ保護に成功しました!まだまだ残っている子もいますが、時間がかかっても順々に保護していけるように頑張ります」とのコメントも書き込んでいた。
男性は、もともとドーベルマンの親子5匹を飼っていた。
”1回目”の逃走騒ぎの後、岡島容疑者に子犬1匹を、他の人に父親と子犬1匹をそれぞれ譲渡。
男性のもとには、ドーベルマンの母子2匹が残っていたが、高橋容疑者とみられる女から、頻繁に「残りの2匹も引き取りたい」と連絡があったという。
◆不審な連絡「犬が腹をくだした。エサを教えて」
そんな中、事件の数日前、男性のもとに、高橋容疑者とみられる女から「引き取った犬が腹をくだしているからエサが合わないかもしれない。もともとあげていたエサを売っている所に連れて行ってくれ」と連絡が入った。
ドーベルマンに与えられていたエサは「どこにでも売っているもの」だったという。
男性は譲渡する際に、エサの種類について「どこにでも売っている」と伝えていた。
ところが、その女は「近くでは売っていない」と聞く耳を持たず。
その上で、8日に、一緒にエサを買いに行くことを提案してきたそうだ。
男性は「犬の体調が悪いならば、翌日すぐにでも来るはずなのに」と不審に思ったという。
そして当日の午後1時半頃、女と一緒にホームセンターを訪れ、午後2時半頃、自宅に戻ると、2匹が姿を消していたのだ。
男性は、”1回目”の逃走騒ぎの後、保健所の指導もあり、犬の檻やワイヤを強化していた。
そのワイヤが外されていたことから「盗まれた」と直感したそうだ。
ドーベルマンが飼われていた檻からはワイヤが人為的に外されていたという(千葉・木更津市)
◆事件から10日余のスピード逮捕 余罪は?
岡島容疑者は逮捕前、報道各社の取材を頻繁に受けていた。
FNNのインタビューに対しては「(発見したドーベルマンを)正直、返したくなかったですよ。ただ、囲いの中にいるだけの野良犬と変わらないんで、それだったら自然にいた方が幸せなんじゃないですか。捕まえてまた戻るくらいなら野犬になった方が幸せ」と強い口調で話していた。
その他にも、SNSなどで、男性を攻撃するような、飼育状況批判を次々と展開。
男性が盗まれたと主張する報道に対しては「私疑われてて笑っちゃった」と書き込んでいた。
しかし、結局、岡島容疑者らは、事件から10日余りでのスピード逮捕となった。
逮捕前、取材に答える岡島容疑者
逮捕後、男性は、取材に応じ、岡島容疑者らの投稿について「私をだまして泥棒までしておいて。動物保護団体だから、劣悪な環境で飼われている犬を救ってあげているんだと、自分たちを正当化していることが許せない」と憤った。
木更津署は、容疑者の認否を明らかにしていないが、さらなる余罪や共犯者が他にもいる可能性も視野に全容解明を進めている。
悪い飼育環境から犬たちを解放する“動物保護”の大義名分を盾にした犯行だったのだろうか。
その動機の解明が待たれる。
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左から岡島容疑者、高橋容疑者、佐藤容疑者
(フジテレビ社会部・千葉県警担当 風巻隼郎)
風巻隼郎
1996年新潟県出身。中央大学卒業。社会部司法クラブで検察担当、コロナ取材班などを経験し、現在は千葉担当。日々奮闘中。
私の今までの経験からすると、動物保護活動をやっている団体・個人の中には、行き過ぎた行動をする傾向の団体が見られます。
関係者とのトラブルを引き起こしたり、保護の繰り返しで多頭飼育崩壊になったり、・・・根本的な解決策を図るどころか、悪循環を生み出すようなマイナスのイメージが多く見られます。
活動の本質が解っておらず、狭い領域で目先のことだけに囚われ、日本においては、こういう保護団体や個人が増えています。
欧米先進国の「動物保護」は行政と民間が連携しながら行っておりシェルター等の設備も整っており、日本の「動物保護」とは全く異なります。
狭い領域を見るのではなく広い領域で、解決策は何なのか、何が目的で活動をしているのか、を認識して活動を行う団体であることが重要なことだと思います。
行政としての大きな課題がここにあります。
(byぬくもり)