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保護団体が見た動物虐待の今

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「猫にエサをあげてみた」動画、薬品でボロボロになった猫…
保護団体が見た動物虐待の今

2021年12月25日(土) ORICON NEWS

外で懸命に生きる猫、ケガや病気をした猫…。
NPO法人『ねこけん』には、日々さまざまな猫が保護されてくる。
なかでも心を痛めるのが、虐待された猫の通報だ。
そここでは、2021年とくに反響の大きかったエピソードをあらためて紹介。
YouTube動画にまつわる通報の事例、実際にあった虐待について、代表理事・溝上奈緒子氏のコメントとともに振り返る。


虐待され『ねこけん』によって保護された猫たち(写真:ねこけんブログより)

■自作自演も?「猫にエサをあげてみた」動画に批判、“通報”しても救えない葛藤
今年、「猫にエサをあげてみた」などの動画が数多くアップされ、YouTube側が「暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシー」に、「準備された危ない状況にわざと動物を置いて救助するコンテンツ」を追加。
これを許可せず、ポリシー違反であることを明記した。
このような、動画にまつわる動物虐待はあとを絶たず、『ねこけん』にも「このYouTubeチャンネルで、猫を虐待しているのではないか?」という通報が数多く寄せられているという。
「よく、“痩せた猫にエサをあげてみた”というような動画が配信されています。でも、毎日のようにガリガリの子猫に会うことは難しいはずですし、その猫ちゃんがすでに人慣れしている様子なのはおかしい。どう見ても、YouTuber自身が猫をガリガリのやせ細った状態にしてから、外に連れ出してエサをあげているように見えるのです。あくまで推測ですが、このような自作自演であれば、明らかに虐待といえる行為です」
もちろん、すべてが自作自演とは限らず、本当に猫を救ったケースもあるだろう。
だが、問題のある動画が近年増えていることは事実。
とはいえ、こうした虐待をするYouTuberを特定することは、想像以上に難しいという。
「YouTuberの所在地を調べるために弁護士を雇うとなると、かかる費用はどんなに安く見積もっても60万円以上。しかも、いたちごっこになってしまう可能性が高く、かつ虐待かどうか真偽もつかみにくい。私たちもなかなか前に進めないというのが現状です。本当は、虐待の可能性のある動画は上げさせないようにして欲しい。ただ、やはり真偽を判断がしにくく、とても難しい問題なんです」

■薬品かけられボロボロに…、悲劇の地域猫の再生

薬品をかけられてボロボロになった虎吉を洗う(写真:ねこけんブログより)

猫の虐待については、もちろんネットにアップされるものがすべてではない。
むしろ、人目につかない水面下でこそ残酷な事件が数多く起こっている。
つい先日も、千葉県での猫の虐待事件が報道されたばかりだ。
『ねこけん』にも、虐待を疑われる通報は後を絶たないという。
なかでも、何らかの薬品をかけられ、ボロボロな姿で発見された虎吉は悲惨だった。
白い粉だらけになった虎吉の毛はゴツゴツと固まり、まぶたの皮膚が溶けかかっていたという。
「猫を連れて帰る車の中は、薬品の匂いでこちらも具合が悪くなりそうなほど」と、保護当時の様子を振り返る。
さらに虎吉は、薬品のせいで急性腎不全と急性肺不全になっており、治療も必要だった。
当時の『ねこけん』ブログには、「強烈な薬品を漂わせ、ボロボロの猫を前に改めて、動物虐待の撲滅を強く願うのであります」と、強い思いがつづられている。
そんな大変な思いをした虎吉だったが、保護されてからは治療を受け、徐々に元気を取り戻した。
ただ、体の状態は良くなっても、心の傷はすぐに癒えるものではない。
人間不信に陥った虎吉を『ねこけん』メンバーが献身的にお世話し、徐々に癒していった。
「薬品をかけられる前は、人に慣れていた地域猫だったんでしょうね。少しずつ触らせてもらえるようになり、医療ケアもやらせてもらえるようになりました」。
治療を終えると、すっかり元気になり、『ねこけん』の中でも「イケメン」と呼ばれるほどに回復。
ボロボロだった状態からは想像もつかないほど、毛もフサフサになった。
ブログにもたびたび登場し人気だった虎吉は、『ねこけん』に来て1年で譲渡先が決まり、今では新たな家族と幸せに暮らしているという。

■粘着テープでぐるぐる巻き、虐待受け人間不信になってしまった猫
もう1例。
2015年、豊島区の公園で粘着テープをぐるぐる巻きにされた状態で発見されたのが、次郎だ。
犯人は、猫を飼おうと野良猫を捕まえたものの、逃げ回るので粘着テープでぐるぐる巻きにして、それでもおとなしくならないのでトンカチで叩いて公園に放置したという。
次郎はそんな状態からなんとか生き延び、『ねこけん』に保護された。
その後、次郎が『ねこけん』のブログに登場したのは2年後。
殴られた後遺症で首が傾き、片方の目は小さく、視点が定まらないまま。
さらに、虐待という恐怖の体験から、すっかり人間に心を閉ざしていた。
「心についた傷はなかなか癒えません。人間への恐怖心を取り除くにはとても時間がかかるため、記憶の上書きをしていくしかない。人間は優しい、あなたを傷つけないということを次郎に知ってもらうために」。
そうして、『ねこけん』メンバーによる懸命な努力は少しずつ実っていく。
人がいても隠れないようになり、ようやく体をなでさせてくれるまでになった次郎。
やっと一歩を踏み出すことができたが、次郎が新たな家族を作るまでには、まだまだ遠い道のりが残っていた。
そんな次郎だったが、少し前にやっと家族が見つかった。
次郎の虐待事件が起こってから5年。
傷ついた心が癒えるまで、じつに5年の月日を要したのだ。
「急がなくていいんです。ゆっくりでいいから幸せになって欲しいというのが私たち『ねこけん』の願いでもあるんです」。

NPO法人『ねこけん』で保護された猫たち 2021(67/170枚)

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