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保護活動を支援するマツダ社内クラブの取り組み

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行き場のない犬猫たちのためにできることを…
 保護活動を支援するマツダ社内クラブの取り組み

2021年12月22日(水)  REANIMAL

不幸な境遇に置かれている犬猫のためにできることはないか。
そんな思いに端を発した、保護犬猫活動を支援するクラブが自動車メーカー・マツダの中にある。
現在、日本で飼育されている犬猫の数は、1813万3000頭*。
家族の一員であることは言わずもがな、より良い暮らしを送るためのペット関連商品やサービスも充実してきた。
一方で、環境省の発表によれば、3万2743頭の犬猫が2019年4月から2020年3月の1年間に殺処分されている**。
そのような現状を知ってもらい、解決の糸口を見つけたいと活動を続ける「ワンミャツダクラブ」を取材した。

◆有志の集まりから会社に認められる“クラブ”に
元々は犬好きの同社広報本部 荷堂美紀氏と猫好きの同僚が、犬猫のために何かできることがないかと意気投合したところから始まった。
「今でこそ広島県内での殺処分数は少なくなっていますが、数年前までは全国的に見てもかなり数が多く、問題視されていた。行き場のない犬猫たちが多くいる中で、ペットショップ以外の選択肢があることも知ってほしい、また、広島や山口で保護活動をされている団体の支援をしていきたいという思いもあり、活動をスタートしました」(荷堂氏)
こうして2018年に有志の集まりとして「ワンミャツダクラブ」が発足。
翌2019年11月に社内で親和会同好会に、2021年4月に親和会クラブに認定された。
クラブは会社が公的に認めたもので、多くはないが予算も付く。
単なる趣味の集まりでなく、社会貢献活動の一貫として地域に根付いた活動ができているかが認定の基準になる。
例えば他に陸上やラグビーなどのクラブがあるが、子どもたちに向けて教室を開催したり、地域の人と地元チーム応援したりといった活動もしているそうだ。
クラブのシニアサポーターを務めるのは、シニアイノベーションフェロー(役員)の人見光夫氏だ。
「いつの間にか巻き込まれて…」と冗談めかすが、自身も大の愛犬家。
一緒に暮らすチワワを家族で一番可愛がっているという。
部員は現在103名で、うち11名が社外部員。
最近はオタフクソースやモルテンなど地元の他企業とも交流しており、里親募集情報のチラシを社内に貼ってもらうなどしている。

◆マツダの中から不幸な犬猫を出さない
まず目標にしているのは、マツダの中から不幸な犬猫を出さないこと。
「子どもが動物アレルギーになってしまったり、介護のためどうしてもペットと暮らすことが難しくなってしまったりと、生活のステージによってどうにもならないことも起こりうると思いますが、社内にネットワーク作って、きちんと譲渡先を見つけるようにしています」(荷堂氏)
地域で保護された犬猫も含め、公式ブログやメルマガ、社内報などで里親募集情報を紹介。
ワンミャツダクラブ部員(社外部員含む)とマツダ従業員を対象とした登録バンクも設けている。
現在の登録数は、里親登録が50名、預かりボランティア登録が11名。
これまでに61匹を譲渡している(2021年12月現在)。


ワンミャツダクラブ主催の散歩会に参加した元保護犬たち

◆猫と工場の安全を守る「社内TNR活動」
社内で重要な役割を担うことにもなった。
それが「社内TNR活動」だ***。
マツダの宇品工場ではここ数年、敷地内に現れる猫が増え問題になっていた。
人身事故には至っていないが、車と猫の接触事故が発生するなど、安全対策が急務となっており、社員も心を痛めていたという。
しかし、工場内に猫がいるという状況にどう対処するか決める部署もない。
そんな中、声がかかったのがワンミャツダクラブだった。
「社内での認知度が高まり、工場から相談がありました。最初は、飽くまでも我々のボランティア活動として業務外でTNRをやらせてもらえないかと話したら、工場と総務、安全健康推進部の各部長が、『自分たちできることは協力するから』と言ってくれたんです。そこに人見の後押しも加わり、費用や工数をかけてもらえるようになった。成猫はTNR、子猫や病気などで不妊去勢手術ができない猫は里親を探すという活動を行っています」(荷堂氏)
人見氏も「安全というのは会社、工場にとって非常に大切なこと。この活動でさらに社内での理解が得られるようになったのではないか」と話す。
これまで40匹に不妊去勢手術を行い、譲渡に至った猫は22匹。
工場の一部社員には業務として猫の保護を行う役割が設けられ、捕獲器に猫が入るとクラブに連絡が来るという体制も整った。


マツダ構内の通路で、ワンミャツダクラブの活動や里親募集情報を掲示

◆地域との関わりを大切に
一方、社外での取り組みも活発だ。
2019年には広島市内の商店街夏祭りにてチャリティーバザーを実施。
売上は商店街にある保護猫カフェ・ネコリパブリックに寄付した。
夏祭りのフィナーレでは参加者が手持ち花火をするというイベントがあり、そこで花火に火を付けるためのキャンドル台を部員が制作したそうだ。
「こんな物を作りたいと提案したら、ものづくりの会社なので素晴らしい設計図が上がってきました(笑) 安全のためエッジもきちんと処理し、耐久性も考えています。今はネコリパブリックでキャットタワーとして使ってもらっています」と荷堂氏。
ネコリパブリックからは、「地元の老舗企業であるマツダが協力してくれたことで周囲の理解が深まった」と喜びの声をもらったという。
市内の小学校PTAとも連携している。
呉動物愛護センターの見学イベントを実施し、生徒16人と保護者10人が参加。
犬舎の掃除をしたり、犬の散歩や体を拭いたりしながら触れ合う機会を設けた。
参加した生徒からは「犬が怖かったけど好きになった」「こんなに暖かいって知らなかった」という声が聞かれたそうだ。
「子どもの頃から犬猫のことを知って、感性を養ってもらうことが大切だと考えています。友達にも『こんな体験をしたよ』と話してもらえれば興味を持ってくれる子が増える。今は新型コロナウイルスの影響でなかなかリアルのイベントが実施しづらい状況ですが、これからも続けていきたい」(荷堂氏)
呉動物愛護センターにおいては収容されている犬の散歩ボランティアも行っている。


犬のお散歩ボランティア(呉動物愛護センターにて)

広島市内で見ることはないが、呉市や東広島市の西条には山間部に住んでいる野犬が少なからずいるそうだ。
そういった犬たちは人間に慣れていないため、散歩や触れ合いを通して少しでも心を開いてもらう試みを実施している。
そのほか、部員間の交流のきっかけ作りやクラブの認知度向上を目的として、フォトコンテストを開催。
92件の応募があり、賞品にはボランティア団体のグッズを活用して保護団体への資金支援につなげた。


フォトコンテストの受賞作品

◆保護犬たちの1歳を祝う散歩会
12月12日には譲渡した保護犬の散歩会が広島市内の竜王公園で行われた。
約1年前の雪が降る寒い日、8頭の子犬が西条で保護されたのだという。
しばらくは部員たちの家で預かり、その後それぞれ里親に迎えられた。
1歳を祝う散歩会のため、当日は6頭とその飼い主が参加した。
譲渡された時には1kgほどだったというが、今では11kg~22kgほどに大きく成長。
あまり他の犬や人が得意ではないという子もいるため、最初は距離を取りながらゆっくりその場の雰囲気に慣れさせる。
時間が経つにつれ少しずつ距離が縮まってくる。
最終的にはじゃれ合ったりドッグランで楽しそうに走り回ったりする姿が見られた。
今年3月に一度顔合わせをしており、それ以来約9ヶ月ぶりの再会。
里親には犬の飼育経験がなかった人もいる。
前回は、「どうやって育てている?」「トイレは?」と相談し合うような話題が多かったそうだが、今はだいぶ余裕が出てきたようだ。
「好きなおやつは?」「今の顔そっくり!やっぱりきょうだいだね」などと会話が弾む。
人見氏に感想を尋ねると、「(犬たちが)良い人に引き取ってもらい、可愛がられている姿を見ると心が温まります。クラブの活動には意義があると実感できたし、これからも続けていかなければいけない」と笑顔を見せた。


ワンミャツダクラブで保護した犬たちの1歳を祝うお散歩会

◆人とペット、両方のことを考えて…
社員同士や会社の垣根を超えて、地域とつながり発展を続けているワンミャツダクラブ。
荷堂氏は「マツダは“カーライフを通じて人生の輝きを人々に提供する”というコーポレートビジョンを掲げていますが、人生に輝きを与えてくれる存在という意味ではペットや動物にも共通点がある。そこに共感して、部員になってくれる人もいます。そのビジョンのもと、保護活動の支援もクルマづくりも両輪でやっていきたい」と話す。
人見氏も、「日本では約850万頭もの犬が飼育されているのに、飼い主や犬のことを考えている車はないに等しい。飼い主にとっては子どもと同じようにすごく大切なはずだし、人生の輝きそのものにつながるような存在なのだから、もう少しペットに気を遣ったクルマづくりができたらと思います。例えば、車両の安定化をはかる制御技術『G-ベクタリング コントロール プラス(GVCプラス)』は、疲れにくさや車酔いのしにくさに貢献します。人にもペットにも良いものですから、もっと突き詰めていきたい。そうやって快適にドライブできる車で出かけた先では、どんな面白いスポットがあるのかコネクティビティシステムの『マツダコネクト』を使って探してもらう。運転をどんどん楽しんでもらって、もしドライバーに何かあった時には安全支援技術『コパイロット(CO-PILOT)』でサポートします。そういったトータルの価値を提供していきたいと考えています」と語る。
この活動は「長く続けていくことに意味がある」という荷堂氏。
自分たちが会社から去った後もクラブがなくならぬよう、若手部員とのコミュニケーションをしっかりとっているそうだ。
今後も、行政やボランティア、動物病院などと連携しながら取り組みに力を入れていくとしている。


アニコムとマツダが子犬の「しつけ教室」で初コラボ…絆を深め、お出かけ楽しむコツをアドバイス

* 犬848万9000頭、猫964万4000頭。2020年 全国犬猫飼育実態調査(日本ペットフード協会)
** 犬5635頭、猫2万7108頭。犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況(環境省)
*** TNR:Trap・Neuter・Return。野良猫など飼い主のいない猫を捕獲し、不妊去勢手術を行って、元いた場所に戻すこと

ワンミャツダクラブ公式ホームページ (fc2.com)

REANIMAL 吉田瑶子


マツダ広報本部 荷堂美紀氏の言葉「長く続けていくことに意味がある」
非常に深みのある言葉で、とても重要なこだと思います。
弊会14年間の体験の中で思うことですが、動物愛護活動団体において一時精力的な活動をやっているな~と感動したところ、いつのまにか消滅してしまった、という団体がけっこう多いと思います。
いろんな事情があったにしても、継続して活動するための体制づくりをしていかないといけません。
活動団体の中には、単なる思い付きでやり始め、「こんな大変な活動だとは思わなかった」ということから活動を辞めてしまう、という無責任なケースが多いのではないでしょうか。
自分たちの思いだけでやってしまう(利己的)な考えでは不幸な動物たちを守ることはできないです。
特にひどいのは、活動本質から外れ自分たちの利益を求めて詐欺的行為(寄附を募る・いい加減な譲渡を行う・etc)を行う団体です。
マツダ ワンミャツダクラブの活動の本質というのは素晴らしいと思います。
末永く続けていかれることを切に願います。
(byぬくもり)


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