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元従業員が告発、悪質ペット繁殖業者逮捕

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「死んだ犬は弁当ゴミと一緒に処理」「餌は2日に1回、水は川から」…
元従業員が告発、悪質ペット繁殖業者逮捕《ペットブームで飼育頭数は2倍強に》

2021年12月10日(金)  文春オンライン

長野県松本市のペット繁殖場「アニマル桃太郎」の中で劣悪な環境で犬など約1000頭を飼育していたとして、長野県警が11月に社長の百瀬耕二容疑者(60)と社員の有賀健児容疑者(48)を動物愛護法違反(虐待)の疑いで逮捕した事件。


「アニマル桃太郎」繁殖場では1000頭を越える犬猫が飼育されていたが… ©文藝春秋

事件が発覚するきっかけとなったのは、元従業員A子さんの告発だ。
A子さんは2011年にアニマル桃太郎に勤め始めて以降、10年にわたって度々保健所に動物虐待があることを通報してきたという。
だが、保健所の指導はアニマル桃太郎への「注意」にとどまり、虐待は放置され続けた。
今年、アニマル桃太郎の飼育環境の劣悪さを、A子さんが女優の杉本彩さんが代表を務める公益財団法人動物環境・福祉協会Evaに告発したことで事態は急転。
同団体が虐待の事実を通報したこともあり、ようやく県警や保健所が動き、今回の摘発につながった。
「今後同じ事件が二度と起こらないように」と、A子さんが告発に踏み切った思いと繁殖場での悲惨な体験について、文春オンラインのインタビューに応じた。
(全2回の1回目/ 2回目 に続く)


小さなケージに押し込められた被害犬

 ◆◆◆

◆糞尿は垂れ流しで、たまにホースでケージに水をかけて床に流すだけ

――A子さんがアニマル桃太郎で働き始めたきっかけは何だったのでしょうか。
A子 元々人とコミュニケーションをとるのが苦手で、人よりも動物を相手に仕事がしたいと思っていました。10年前に地元の求人誌の募集を見ていた時に、たまたまアニマル桃太郎のパートの求人を発見し、応募したんです。希望の職種につけたので最初は嬉しかったのですが、犬舎に入ってすぐに異様な汚さに驚きました。  糞尿は垂れ流しで、たまにホースでケージに水をかけて床に流すだけ。そもそも7~9段ぐらいケージを積み上げていましたから、上段のほうには脚立でもないと手が届きません。冬場は窓を締め切っているので、アンモニア臭が本当にひどくて、臭いが目に染みてくるような状況でした。私と同じように新しく入ってくる動物好きの子たちもいましたが、2~3日で「こんな仕事できない」とすぐに辞める子も多かったです。ペットへの扱いのひどさもありますが、それ以前に臭いがひどすぎて胃がムカムカしますし、その場所で働くことに耐えられなかったんだと思います。

◆掃除が行き届かず、川の水を与え..餌も2日に1回

――アニマル桃太郎にはどれぐらいの動物がいたのでしょうか。
A子 私が入った約10年前は400頭ほどいて、世話は従業員5人でずっと回していました。最近では1000頭ぐらいでしょうか。この3年ぐらいで一気に数が増えましたね。コロナが流行したことでペットブームが起こり、飼う人が一気に増えたので「売れるからどんどん産ませろ」と百瀬がはっぱをかけていました。とてもこれ以上手が回らないと思いましたが、百瀬は従業員の訴えを聞くような性格ではないので止められませんでした。  掃除が行き届かず、川の水を与えていたので、ゴミのペットボトルで作った給水器には藻が繁殖していました。山中にある犬舎の屋根は、ブルーシートを天井に被せただけの簡素な造りで、雨漏りがすればもう1枚上からブルーシートを被せるだけというひどい状態でした。夏は大型の扇風機を置いていましたが、生ぬるい空気が右から左に移動するだけ。冬はだるまストーブを置いていましたが、数は不十分。温度管理すらできておらず、飼育環境は最悪でした。  1000頭いても餌をあげられるのは1日500頭が限界です。だから1度に2日分の餌を置いておくんです。ただ、3~5頭を一緒に入れていたゲージもあったので、力が強く他の犬を押しのけてでも食べる犬もいれば、そうじゃない犬もいる。弱い子は食べられず衰弱していきました。

◆死んだ犬は弁当のゴミと一緒にゴミ袋に入れられて…

――衰弱した犬はどうなったのでしょうか。
A子 死にましたよ。でも、百瀬は気にもとめない様子でした。出勤した時にケージに死体があって、「この犬いつ死んだの?」と聞いても「わからない」と。死後、気づかれず数日放置されたような犬もいました。犬舎のなかが臭すぎるので、死臭もわからないんです。  死んだ犬は糞尿が垂れ流されたケージの下に敷いている新聞紙や、事務所のゴミ箱のゴミ、食べ終わった弁当のゴミと一緒にゴミ袋に入れられていました。さすがにそのまま死体をゴミ袋に入れるのは抵抗があるのか、新聞紙には包んでいました。車にゴミを入れて運びだす時に異臭がしたという近隣住民の話もありましたが、死臭もあったと思います。  何頭か犬と猫を引き取ったこともありますが、主人になつくには1年ぐらいかかりました。人間の男に対するトラウマというか、恐怖が抜けなかったのだと思います。

◆動物をおもちゃのように扱っていた

――他にもアニマル桃太郎では動物を飼っていたのでしょうか。
A子 売り物の犬と猫の他には、鶏、ウサギ、ハムスターも飼っていました。犬と猫以外は売るためじゃありません、百瀬の趣味です。ハムスターは1つの衣装ケースの中に200匹ぐらい飼っていました。餌の管理もろくにやらないので、共食いがひどかったですね。ケージの中には骨になった死体や、下半身を食いちぎられて呻いているハムスターもいました。  鳥もカメレオン用の飼育ケージに入れて2000羽ぐらい飼っていましたよ。オカメインコ、セキセイインコ、ジュウシマツ、マメルリハとか。40~50羽ずつケージに入れられていて、それが何十個もありました。  百瀬は動物が嫌いというよりも、コレクター趣味というか、おもちゃのように動物を扱っていた印象が強いですね。子供がプラモデルを集めて部屋に飾ったりするじゃないですか? あの心理に近いのだと思います。

◆動物の命を、命だとは思っていない

――プラモデル…命の扱いが雑、ということでしょうか?
A子 そうですね。例えば、ペットオークションで売れ残った猫を2000円ぐらいで買ってきて、「ネズミ捕りだ」といって犬舎のある山に放っていました。大人になるまでは一応育てますが、マンチカンなど自然界で生きるのが厳しそうな弱々しいペット猫も多かったので、全部死んだと思います。雨が降った後に水たまりの水を飲んでいる姿を見たことはありますが、それ以外は姿を見たことはありません。イタチやトンビに食べられてしまったのか、死体を見たこともないです。  また、ペットとして人気の純血種の小型犬は、どうしても奇形が多いんです。オスは奇形が産まれれば、売れないのでほったらかしにされてすぐに死にますが、メスは奇形でも子供が産める。だから繰り返し出産させて、もう産めないとなったら『引き取り屋』に売り払う。子犬のオークション会場にいくと、少額の金で『不要』になった犬を引き取り、劣悪な環境で徐々に弱らせて死なせるような業者がいるんです。ちなみに私が引き取ったメス犬はぼろぼろで老犬かと思いましたが、獣医師によると6歳ぐらいとのことでした。出産しすぎて栄養を子供にとられ、歯がほとんど抜けていて、残った歯もボロボロでした。本当は全部引き取りたいぐらいでしたが…。  繰り返しますが、百瀬は犬や猫が嫌いというわけではないと思います。イライラしていても無闇に蹴ったり殴ったりするといった虐待は見たことがありませんし、何か嫌がらせをするということもない。ただ、動物の命を、命だとは思っていないということです。( #2 に続く) 「自分で腸を食いちぎり死ぬ犬も」「足の指が6本ある奇形も生まれて…」

摘発された悪質ペット繁殖場の元従業員が明かす“残酷な飼育実態” へ続く

「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班)

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