トラック事故で重傷負った元野良犬“うめちゃん”…今は登校見守り、人気者に
2021年10月4日(月) 西日本新聞
かつてトラックにひかれて瀕死(ひんし)の重傷を負った犬が、秋の交通安全県民運動に参加している。
雑種犬の雌「うめちゃん」は、命を救ってくれた飼い主とともに交差点に立ち、児童の登校を見守る。
「わんわんパトロール」中に登校する児童から頭をなでられる犬の「うめちゃん」
平日朝、福岡県飯塚市片島2丁目の片島小学校近くの交差点。
「わんわんパトロール」と記した黄色いベストを着たうめちゃんを見つけると、登校中の児童らが駆け寄り、頭をなでていく。
「おぉ、うめちゃん。今日もお仕事か! ご苦労さんやね」。
散歩中にすれ違う住民も声を掛けてくる。
うめちゃんはすっかり地域の人気者だ。
パトロールを始めたのは8年前。
片島地区の自治会長で飼い主の中村香代さん(74)が、「地域の安全のために何かできることはないか」と考え、飼い犬のうめちゃんと散歩をしながら「地域の見守りをしよう」と思い立った。
日頃のパトロールのほかに、春と秋の交通安全県民運動期間中は毎日、通学路に立つ。
中村さんが、うめちゃんと出合ったのは11年前。
家の前で、4トントラックにひかれた野良犬のうめちゃんを見つけて動物病院に連れて行った。
腰の骨が折れ、獣医師に安楽死を勧められるほどの大けが。
それでもうめちゃんは人工の骨を入れる大きな手術を乗り越え、1カ月間の入院を経て、歩けるようになった。
中村さんは「走って登校する子どもが、うめちゃんを見つけることでいったん立ち止まり、交通事故を防げたらいいな」と話す。
そして、「この子のように大けがをしないように」と、優しいまなざしをうめちゃんに向けた。
うめちゃんは今日も子どもたちの安全のため、パトロールに出かける。
(大橋昂平)