「人の食費を削ればいいじゃん」
炎天下放置された子犬を迎えた優しい一家 今やお店の看板犬に
2021年9月27日(月) まいどなニュース
■駐車場に捨てられていた子犬
まいこちゃん(13歳・メス)は、2008年6月27日、青森県の大型ショッピングセンターの駐車場にいた。
その日、青森県に住む岩沢さんとお母さんは、車で15分くらいの大型ショッピングセンターに買い物に行った。
駐車場に車を停めると、小さな白い子犬がうろうろしていたという。
「その頃、以前よりも捨て犬が減っていたので、近くに飼い主さんがいるのか、はたまたショッピングセンターの敷地内で、譲渡会でもやっているのかと、母と2人で周囲を見回しました。しかし、それらしき人は見つかりませんでした」
■連れて帰るしかない!
当時、岩沢家には保護犬の鉄平くん、保護猫の櫻子ちゃんと漱石くん、総勢3匹がいたので、岩沢さんは子犬を保護するかどうか迷った。
車を降りる時に、お母さんと「目を合わさないようにしようね」と言って降りたが、2人とも子犬のことが気がかりだった。
大きな車の下でくったりしていた子犬に声をかけると、お母さんの方にちょこちょこ歩いてきた。
「6月とは思えないくらい暑い日だったので、このままこの子を放置できないと思いました。『もうこれは連れて帰るしかない!』と二人で腹をくくり、買い物もせず、そのまま動物病院に直行しました」
■行き場のない子を迎える
岩沢家では、それまでにも行き場のない子を家族に迎えていたので、捨てられたであろう子犬を迎え入れるのは自然なことだった。
「私や母が保護した犬や猫を持ち帰っても、父は嫌な顔ひとつせず、ニコニコと笑顔でいてくれて、父には感謝しています。定員オーバーと思っても、『人の食費を削ればいいじゃん』という感じだったんです(笑)」
暑い日だったので、「この子の身体は大丈夫だろうか」と、岩沢さんは心配した。
生後2カ月くらい。
もとは白い犬だが、かなり汚れていた。
母犬から離された直後だったのか、子犬特有の乳臭い匂いもしていたという。
「いったい誰があんな大きな駐車場に、あんなに暑い日にこの子を放置したのか。正直腹が立ちました」
いい笑顔です
■仲間入り
岩沢家では、代々、人のような名前で、漢字の名前を付けたが、子犬はくるくると落ち着きなく舞うように歩いていたので、「舞来(まいこ)ちゃん」という名前にした。
岩沢さんは、新しい子を迎え入れる時、いつも先住の動物との相性を心配する。
犬の鉄平くんは、近所の子犬を見るとなぜかプルプルと震える子だった。
「そんな鉄平なので、新しい子を受け入れられるかどうか心配でしたが、まいこを連れて帰って、鉄平の前にポンと置くと、まるで興味を示さなかったんです」
鉄平くんは、子犬の匂いを嗅ぐわけでもなく、見るわけでもなく、威嚇するわけでもなく、全く無視した。
岩沢さんは、「この反応をどう考えたらいいのか」と考えたが、たぶん大丈夫だろうと思った。
最初の反応は薄かったが、鉄平くんが2014年2月20日虹の橋を渡るまで、まいこちゃんと一緒に暮らした。
猫たちは2階で暮らしていたので接点がなく、特に問題はなかった。
ただ、何となく「新しい住人が増えたのかな」と、感じているようだった。
イヌとネコ。おでことおでこがごっつんこ
■傷心の犬と猫
まいこちゃんは、おっとりしたマイペースな犬だったが、岩沢さんのお父さんが亡くなった時、異変が起きた。
お父さんは2014年5月、日課の昼寝の途中で亡くなった。
まいこちゃんはかなりショックだったようで、救急隊員が心臓マッサージをするためお父さんが横たわるベッドに近づいたら、激しく吠えたてた。
死亡確認が終わり、遺体を仏間に安置している間、まいこちゃんはずっと遺体の側から離れなかった。
まいこちゃんは、その日以来しばらくずっと元気がなく、仏壇の側から離れなかったという。
傷心のまいこちゃんを救ったのが、保護猫の愛實(まなみ)ちゃんだった。
まなみちゃんは、お父さんが亡くなってからちょくちょく岩沢家の庭に現れて、お父さんがお骨になって帰宅した時には、玄関先で迎えてくれた。
お父さんの葬儀から落ち着きを取り戻した頃、岩沢さんはまなみちゃんを岩沢家に迎えいれた。
しかし、2階で暮らしていた先住猫との相性が悪く、とても2階に置いておける状態ではなかったという。
「あまりにもひどいイジメで、見かねた母が、私が仕事でいない時に、1階に連れて来て仏間にポンと置いたそうです。父を亡くしたショックを抱えるまいこと2階で猫にいじめられたまなみ。相通じるものがあったのか、相性はバッチリでした」
傷心のまいこちゃんは、まなみちゃんと出会って生きる張り合いができたようだった。
いつも一緒だったね
■異種動物だが仲良く
岩沢さんは犬と猫を飼っていたが、同じ空間での同居は初めて。
違うもの同士が仲良くしている姿は、お母さんと岩沢さんの心を明るくさせたという。
残念なことに猫のまなみちゃんは、2018年8月27日に虹の橋を渡った。
岩沢さんは、相棒を失ったまいこちゃんのことを心配した。
まいこちゃんは、数日まなみちゃんを探していたが、後は何事もなかったかのように普通の生活に戻ったそうだ。
いま、まいこちゃんは、岩沢さんが経営するサロンの看板犬としてお客様に可愛がられている。
まいこちゃん目当てに来店する人もいるという。
お散歩、楽しい!
今日はドライブに来たよ
【写真】優しい一家に迎えられ幸せな時間を過ごしています
(まいどなニュース特約・渡辺 陽)