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心を閉ざした野犬を迎えた飼い主の奮闘

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トライアル期間を経ても難関が
心を閉ざした野犬を迎えた飼い主の奮闘と、愛犬の成長

2021年8月18日(水) いぬのきもち Web mgazine

優しい表情が印象的なこちらのワンコ。Instagramユーザー@moku_tsukushiさんの愛犬・杢(モク)くん(推定年齢約1才11カ月)です。
元野犬だったという杢くんはとても警戒心が強く、飼い主さんが家に迎えた当初は「野生の動物と暮らしているような感覚だった」そうですが、飼い主さんは少しずつ杢くんの変化を感じているといいます。
いぬのきもちWEB MAGAZINEでは、杢くんとの出会いや今の暮らしなどについて、飼い主さんにお話を伺いました。


笑顔を見せる杢くん

◆怯えた表情をしている杢くんの写真を見て、会いに行くこと決意
友人が飼っている保護犬の可愛さに魅了され、保護犬に関心を抱くようになったという飼い主さん。
保護犬サイトを見てみると、あまりにもたくさんの保護犬が新しい飼い主を待っている現状に驚くとともに、「保護犬を家族に迎えたい」という気持ちが高まっていったのだとか。
そんな時期に、保護犬サイトでなんともいえない怯えた表情をしている1頭の子犬の写真を目にします。
そのコが杢くんでした。


杢くんは壁にお尻をつけると落ち着くのだそう

杢くんは生後約2カ月の頃、広島県の尾道で野犬の群れからはぐれて1頭で歩いていたところを捕獲されました。
その後に、民間保護団体が杢くんを保護したのだそうです。
飼い主さん: 「杢はその後、保護団体の東京支部に移送されていて。偶然にも、杢が保護されている場所が近所だったので、『初めてで保護犬のことが何もわからないからこそ、一度杢に会いに行ってみよう』と施設に行ったのが始まりでした」

◆杢くんを家族に迎えるまでのこと

のぞきに来るのに近寄るとすぐ逃げる杢くん

保護犬といっても、保護されるまでの生い立ちや境遇はさまざま。
なかには、警戒心が強くて臆病なコもいるといいますが、杢くんもそうだったようです。
飼い主さんはどうしたら杢くんに信用してもらえるだろうかと考え、トライアル期間に入る前に「あること」をしていたといいます。
飼い主さん: 「いきなり迎え入れるのは可哀想だと思い、トライアルに入る前の2週間、毎日保護施設に通い、ごはんを手からあげて、杢に信用してもらえるように努力を重ねました。 最初は近づくだけで逃げられてしまいましたが、少しずつ慣れてきて、手から食べてくれるようになったときのことが、今でも印象に残っています」

◆トライアル期間→正式な家族になってからも、さまざまな難関が
その後、トライアル期間を迎えることになった杢くんと飼い主さん。
杢くんは知らない場所に連れてこられて、再び心を閉ざしてしまったようで、ケージから出てくるまでには1カ月以上かかったのだそう。
飼い主さん: 「当時、杢はまだ生後5カ月ほどだったので、『愛情たっぷりに接していたらすぐ慣れるはず!』と何の根拠もない自信がありましたが、そう簡単にはいきませんでした。杢は極度に人への警戒心が強く、もはや野生の動物と暮らしているような感覚で…今まで私が抱いていた犬の概念は覆されました」
また、家に迎えた最初の3カ月は、「散歩」とわかると杢くんはひどく震えてしまい、よくウンチを漏らしてしまったそう。
家でトイレをしない杢くんにとってお散歩は最大の難関で、毎回ブルブルと震える杢くんを見るのがつらかったと、飼い主さんは振り返ります。
飼い主さん: 「真夜中の人がいない時間に散歩したり、保護施設で出会った仲間と一緒にお散歩の練習もしました。恐怖心が強い杢ではありますが、杢自身が『犬が好き』という唯一の頼みの綱を最大限に生かす方法を考えました」

◆杢くんの成長を感じる出来事が

「お散歩に早く連れてって」と階段前でアピールする杢くん

そんなときに、飼い主さんは犬友さんがよくお散歩しているという公園を教えてもらい、そこでたくさんの犬友さんを紹介してもらったそう。
すると、杢くんに少しずつ変化が見られるようになったといいます。
飼い主さん: 「『お散歩=大好きな犬に会える!』という気持ちが、杢に芽生えたようで。これがきっかけで、毎日車で15分かけてその公園に通い続け、お散歩前にはブルブルと震えていた杢が、家の階段前で『早く散歩行こうよ!』と催促するようになったんです。 杢のあの姿を見たときには、本当に涙が出るほど嬉しかったです。迎えた頃の杢からは想像すらできない、びっくりするほどの成長でしたね」
杢くんと日々真剣に向き合っている飼い主さん。
ゆっくりではあるけれど、少しずつできることが増えていく杢くんの姿を見て、飼い主さんは喜びを感じているようです。

◆家族が増えて、杢くんの新たな一面も

ソファでくつろぐ杢くん

杢くんを家族に迎え、約1年半が経過します。
一緒に暮らすなかで感じる杢くんの性格や魅力について、飼い主さんはこのように話します。
飼い主さん: 「杢は寡黙で余計なことは一切口にせず、 飼い主であっても一定の距離を置いています。人には媚びず、悟りを開いているかのような偉大さもあります」

◆優しさで土筆ちゃんを包み込む杢くん
飼い主さん: 「2021年6月15日に、元保護犬・土筆(つくし)を家族に迎えました、杢は散歩のときに後ろを振り返り、土筆がついてきているかを確認したり、見えなかったら立ち止まったり。土筆が声を出すと、杢が心配そうに駆け寄ることもありました。 お散歩が怖かった杢だからこそ、 土筆のお散歩が心配で仕方がないのかもしれません。土筆に『ウー』と言われたり、オモチャやベッドを取られてもそんなことは関係なく、優しさで土筆を包み込む杢の姿を見ると、本当に愛おしい気持ちでいっぱいになります」


家族に仲間入りした土筆ちゃん

◆愛犬たちの成長をそばで見守りたい
杢くんは今もまだ、飼い主さんのほうから触ろうとすると逃げることがあるそう。
家に来て間もない土筆ちゃんは、しっぽフリフリで愛嬌抜群な反面、自己主張が強く大きな声で吠えたり、怖さからなのか歯を剥き出すこともある極端な性格なのだそう。
2頭がどのように心を開いてくれるのか、これからもずっとそばで見守っていきたいと、飼い主さんはいいます。


寄り添う杢くん・土筆ちゃん

飼い主さん: 「杢のしっぽが少し上がっただけでも嬉しかったように、特別なことは求めません。これからも少しずつできることが増えていく日々の成長を楽しみたいと思います」
杢くん・土筆ちゃんと過ごす日々を大切にしている飼い主さん。
2頭と過ごす日常の様子は、飼い主さんのInstagramでもぜひご覧ください。

写真提供・取材協力/@moku_tsukushiさん 取材・文/雨宮カイ
いぬのきもちWeb編集室

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