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滋賀でウサギ130羽の多頭飼育崩壊

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滋賀でウサギ130羽の多頭飼育崩壊
 眼球がつぶれ、耳がちぎれた子たちも…
   ボランティアが見た壮絶な現場

2021年2月23日(火) まいどなニュース

滋賀県のとある民家。
「家中は牧草で埋もれ、うんちやおしっこがあちらこちらにしてあって、何ともいえない臭いが漂っていました」…ここはウサギの多頭飼育崩壊の現場。
昨年5月、保護ボランティアグループをはじめ、近隣住民や個人の保護ボランティアが現場に入り、約130羽のウサギたちを保護しました。
体にかまれた傷を負った子や眼球がつぶれ膿(うみ)だらけの子、耳はちぎれて皮膚がただれた子、栄養失調のため痩せ細った子など、けがや病気をしている子がいっぱい…あまりにもひどい現場の様子にショックを受けたボランティアたちも泣きながらウサギたちを保護されたそうです。
大きなけがを負ったウサギの中には、今年1月までけがと闘った子もいるといいます。
そんな壮絶なウサギの多頭飼育崩壊現場を見たボランティアに保護当時を振り返ってもらいながら、助け出されたウサギの“今”を取材しました。


うっとこのこレンさんが保護したかえでくん(提供写真)

■10年ほど前に購入したウサギ8羽 避妊・去勢手術をせず増え続けた
多頭飼育崩壊を起こした飼い主。
ボランティアによると、10年ほど前にペットショップで8羽のウサギを購入して飼育を始めたといいます。
しかし、避妊・去勢手術をせずに放置していたため、みるみる数が増えていきました。
そのうちケージ内で飼育することができなくなり、家の中で放し飼いに。
近所の住民や学校などにウサギを譲っていたそうですが、譲っても増え続ける一方で、まさに多頭飼育崩壊となっていました。
飼い主のことを知った近所の住民が、増え続けるウサギたちを助けることができないかとSNSを通じて情報を発信。
その情報をキャッチした保護ボランティアグループ「だるまうさぎレスキュー」をはじめ、個人の保護ボランティアたちが動きました。
昨年5月下旬から、ボランティアや近所の住民ら10数人が2日間にわたって多頭飼育崩壊の現場に入り、ウサギたちのレスキューを行ったそうです。

■ボランティアらが現場で見たウサギたちは…雌は妊娠していた子ばかり
保護当時の現場について、保護ボランティアグループのメンバー、うっとこのこレンさんはこう振り返ります。
「室内は物が散乱しどの部屋にも牧草やふん尿が堆積、壁には穴が開いて、ケージ類は牧草に埋もれた状態になっていました。数年お掃除や片付けをされないままであったため、土足で入ることに…飼い主さんは奥の一室のみで生活。ウサギは放し飼いでご自宅の1階2階を自由に行き来しているようでした」。
さらに、ウサギたちの様子は「多くのウサギは、ノミやダニだらけでけがや病気をしていました。ウサギ同士の縄張り争いやケンカなどで体にかまれたような傷を負っていたり、 眼球がつぶれていたり、耳がちぎれていたり、皮膚がただれていたり。女の子のウサギはほぼ全て妊娠をしていました。 レスキュー後に産まれた子を含めると、保護したウサギは180羽ほど。ただ、出産しても亡くなる子も多かったようで、現場にも赤ちゃんや子どもの死骸が牧草の中からたくさん見つかり、やるせない思いをしながらのレスキューでした」。


ウサギたちが保護された多頭飼育崩壊の現場…どの部屋にも牧草やふん尿が堆積していた

■レスキューの現場は過酷…体調を崩すボランティアも
うっとこのこレンさんによると、レスキューは飼い主からの要望で1日3時間と限られていたということもあり、2回に分けて実施。
使い捨て可能な防護を施した服装に、マスク・手袋・長靴などを着用しての作業となりました。
ただ、マスクを着用していても作業で空中に舞い上がる牧草やふん尿のちりやほこりで呼吸が苦しくなるなど、数分おきに外に出ながらの過酷な環境でのレスキューだったとのこと。
喘息など持病を持っているボランティアも多く、帰宅後に呼吸が苦しく体調を崩して夜間救急に駆け込んだり、ひどい下痢や嘔吐したりする人もいたそうです。
「数日間、鼻の中に現場の臭いが残りなかなか消えませんでした」という、うっとこのこレンさん。
多頭飼育崩壊現場でのレスキューを通じて「ウサギたちが安心・安全で健康で幸せに暮らすために、適正な数の飼育をしなければなりません。ウサギを何羽も飼っている方は、必ず避妊・去勢手術をし、予定外の出産などでそれ以上増えることがないよう、不幸な子が増えることがないようにお願いします。ウサギを含めたペットたちの幸せは飼う人間側のモラルにかかっています」と訴えます。

   ◇   ◇

■助け出された「ひかりちゃん」 生後4カ月で出産、顔の左半分の皮膚や筋肉などが腐っていた…
そんな壮絶な多頭飼育崩壊現場の中から助け出された1羽の女の子がいます。
ひかりちゃんです。


保護当時は生後4カ月ほどだったひかりちゃん…左眼を含む顔の半分の皮膚や筋肉などが腐っていたという

顔の片側に重傷を負い、左眼を含む顔の半分の皮膚や筋肉などが腐っていました。
保護当時は生後4カ月(推定年齢)ほど。
レスキュー初日では見つからず、2回目のレスキューを前に様子を見にきたボランティアがうずくまっていたひかりちゃんを発見。
実は、出産直後だったといいます。
1羽の赤ちゃんウサギは既に死亡…もう1羽も他のウサギにかまれたようなけがをしており、蘇生を施したものの亡くなったそうです。
大事な赤ちゃんをなくし悲しい思いをしたひかりちゃんでしたが、レスキューに入った保護ボランティアの一人、もよままさんがひかりちゃんの保護主となりました。
「うちにきたときはすごい腐臭の上、やせ細っていてガリガリ…皮膚も筋肉も腐り落ち、頭蓋骨が出るほどの大きなけがをしていました。動物病院で診ていただいたところ『こんなひどい状態の子を見たことがない』と言われるほど。他のウサギからかまれたと見られる傷口から炎症を起こし、腐敗していたようです」と、もよままさん。
「しばらくは2日に1度の通院。点滴と傷口の消毒などをしてもらい、自宅では目の消毒や投薬などを行うとともに栄養管理もかなり気を付けていました。ひかりちゃんは大きなけがだけではなく、月齢が若いのに赤ちゃんを産んで体もボロボロの状態だったのですが、食欲旺盛だったことが幸いして生き延びられたのだと思います」と話してくれました。

■保護から5カ月後、左眼の摘出手術を受ける
こうしたもよままさんの懸命な看病のおかげで、ひかりちゃんの顔の皮膚は徐々に再生、頭蓋骨も見えなくなりました。
やせていた体も元に戻って標準体重となり、再生した皮膚から毛も生えてきてフワフワに。
しかし、保護から5カ月。
ひかりちゃんは左眼からの膿が止まらず、食欲も落ちることがあったといいます。
その原因はかかりつけの病院でははっきりせず…心配だったもよままさんは別の病院にひかりちゃんを診てもらいました。
そこで精密検査を受けたところ、左眼の奥に炎症や菌などが見つかり、獣医師から「このままだと命を落とすかもしれない」と宣告。
そこで、すぐに左眼の摘出手術を受けることになったといいます。
手術を決めた当時について、もよままさんは「このまま消毒を続けても良くなることはなく、痛みも続いて命を落とす可能性もあると言われて、私は即手術を選択。この先生に出会わなければひかりちゃんの今はありません。手術は大変なものだったそうです。術後も出血と痛みが相当あり毎日点滴と通院しましたが、ひかりちゃんは痛みをこらえながら乗り越えてくれました」と振り返ります。

■ひかりちゃんは今年1月で1歳 里親募集中です!
手術後の傷も回復して目の周りの毛も生え揃い、避妊手術も完了した今年1月。
ひかりちゃんは1歳(推定年齢)になりました。
今は、左眼のないことも不自由せず快適そうに過ごしているそうです。
もよままさんによると、ひかりちゃんは自由で自己主張がしっかりできる甘えん坊さんで、なでられることが大好き。
大好物は「ニンジンの葉や生の牧草」です。
室内を散歩する“部屋んぽ”も大好きで、「お部屋に戻りなさい」と促すと「ぶー!」と鳴いて怒るほど元気になったといいます。
もよままさんは「犬猫をはじめウサギ、そしてモルモットなどの多頭崩壊の現場はたびたびありました。その飼い主の多くが『かわいいから』と理由だけで飼い始め、適切な医療、避妊去勢せずに増えてしまって崩壊するケースが目立ちます。表に出てないだけで今回のようにペットたちが犠牲になっている多頭飼育現場は他にもたくさんあるのではないかと思います」と話します。
また、現在はひかりちゃんの里親を募集しているそうです。
「飼い主の勝手な飼育で犠牲となったひかりちゃんも今は元気になって、優しい里親さんと出会えることを待っています。里親になってくれる方には、ひかりちゃんの性格や好きなこと、好きな食べ物など全てお伝えしますし、譲渡後もひかりちゃんについて困ったことや不安なことなどが出てくれば何でも相談に乗ります。里親さんは私たち保護活動者にとっていわば親戚のようなもの。お気軽にお問い合わせください」。


ひかりちゃんは食欲旺盛だったことが幸いして生き延びたそう。ニンジンの葉や生の牧草などが大好物

   ◇   ◇

今回の多頭飼育崩壊から助け出されたひかりちゃんをはじめ、ウサギたちの里親さんを募集しています。
「もよまま」さん、「うっとこのこレン」さんのブログをご覧ください。

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)


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