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野犬に襲われる事案多発

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野犬に襲われる事案、減らない理由は「餌やり」…
 被害突出の市「同情しても不幸な犬増えるだけ」

2021年1月16日(土) 読売新聞

山口県周南市内で市民が野犬にかまれる事案が相次いでいる。
元日には同市古泉で飼い犬を散歩中の女性がかまれて軽傷を負い、今年度の咬傷(こうしょう)被害は3件となった。
県と市は檻(おり)による捕獲を強化しているが、捕獲数は微増にとどまっており、対応に苦慮している。
(大野亮二)


周南緑地の道路を歩く野犬(7日午後)

住宅地に囲まれた都市公園「周南緑地」。
計80ヘクタールの敷地にスポーツ施設や緑地が広がる憩いの場だが、野犬がすみ着き、目撃情報が相次いでいる。
市は公園が広大なために犬が身を隠しやすく、捨てられた犬が繁殖したとみている。
7日午後3時頃に訪ねてみると、国道2号線側の東緑地内に中型の4匹が出没した。
いずれも体は茶色で、顔は黒っぽい。
舗装された道を横切り、植え込みに入っていった。
近くの工事現場で交通整理をしていた男性は「毎日のように見かける。これまでに襲ってきたことはないが、気持ちが悪い」と話した。
市によると、出没が相次ぐようになったのは2014年頃から。
同年度は県全体で捕獲された1322匹の犬のうち、周南市内が518匹と4割を占めた。
県全体に占める市の割合が突出して高い状態は続いており、19年度も市内で841匹が捕獲され、全体の5割を超えた。
一部は迷子の犬が含まれるが、ほとんどが野犬という。
市民が野犬にかまれる被害は17年度が1件、18年度が4件、19年度が2件と、毎年発生。
今年度は昨年10月、12月、今年1月と相次いでいる。
野犬の捕獲は保健所を管轄する県の業務だが、19年5月に就任した藤井律子市長は「市が率先して対策を講じる」と言明。
同7月には県、周南署と連絡協議会を設立し、周南緑地付近の大型檻を1基から7基に増やすなど対策を強化した。
しかし、1年間の捕獲数を強化前(18年8月~19年7月)と強化後(19年8月~20年7月)で比べると、強化前の792匹に対し、強化後は811匹で、2・4%の微増となっている。
市環境政策課によると、捕獲数が増えない理由の一つが、一部の人による餌やりだ。
餌があれば食べ物を求めて檻に入らず、檻が置かれた状態が続けば犬が警戒し始める。
設置の効果が薄れるというわけだ。
餌やりを防ぐため、市は週4回のペースで職員2人態勢によるパトロールを実施。
餌やりを注意したり、放置された餌を撤去したりしている。
橋本俊彦課長は「同情して餌をやるほど、不幸な野犬が増えるだけだ。餌やり禁止を粘り強く伝える」と話す。
むやみな餌やりは、市迷惑行為禁止条例で禁止されており、命令に従わない場合は名前を公表できる規定がある。
しかし、実際に公表した事例はなく、実効性は乏しい。
最近、効果を発揮しているのが、スマートフォンのアプリを活用した市民からの犬の目撃情報の通報。
目撃情報を入力すると、画面上の地図に位置が表示される。
開始した昨年9月10日から12月末までに延べ740件の情報が寄せられた。
通報をもとに鳴いている子犬を見つけるなど、捕獲に役立てているという。
ただ、野犬を怖がる市民の声もアプリに届く。
コメント欄には「ずっと吠(ほ)えられ怖かった」「いつまで我慢をしなければならないのか」と切実だ。
藤井市長は6日の記者会見で、相次ぐ被害に対し、「市民が襲われることになり、申し訳なく思う」と陳謝。
「これからも野犬対策に全力で取り組む」と述べた。


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