豪雨被災犬・クレアが警察犬に
仮設で離れ離れも「電話越しの鳴き声」支えに乗り越え
2021年1月6日(水) まいどなニュース
西日本豪雨で被災した岡山県倉敷市真備町の会社員田中久子さん(48)の愛犬「クレア」が、岡山県警に嘱託警察犬として採用された。
「支えてくれた人たちに恩返しがしたい」。
生活再建のため訓練がままならない時期もあったが、2度目の挑戦となった昨年の審査会で合格。
苦難を乗り越えたコンビは、出動に備えて訓練を重ねている。
審査会に合格して岡山県警の嘱託警察犬になったクレアと田中さん
クレアは、牧羊犬種として知られる「ベルジアン・タービュレン」の雌で5歳。
犬好きだった田中さんが2015年に飼い始めた。
どんなにおいも興味津々で嗅ぎ回るため、警察犬に向いていると感じ、18年1月に自らも初めてとなる訓練をスタート。
本腰を入れようとしたところで7月の豪雨に見舞われた。
当時、田中さんは同県総社市の妹宅に避難していて無事。
クレアも同県浅口市の訓練所に預けていて難を逃れたが、自宅は全壊した。
被災後は自宅の片付けに追われ、訓練所にいるクレアと離れ離れの生活が続いた。
8月に岡山市内のみなし仮設住宅に入居したが、クレアの世話まではなかなか手が回らず、迎え入れることができたのは19年の1月になってから。
「体力的にも精神的にもつらい日々。電話越しのクレアの鳴き声だけが支えだった」
この間はクレアとの訓練は完全にストップ。
それでも、被災地で活動するボランティアの姿に「自分も人の役に立つことで恩返しができたら」との思いが強まったという田中さん。
同年5月の審査会は訓練不足もあって合格ラインに届かなかったが、その後にリフォームが完了した自宅に戻ってからは猛特訓を重ねた。
そして、2度目の挑戦となった昨年11月の審査会を見事に通過。
新型コロナウイルスの影響で当初予定より半年遅れての開催となり、「パフォーマンスを保つのに苦労したが、本番は伸び伸びとやってくれた」と田中さんは振り返る。
クレアの任期は今月1日から1年間。県警の要請を受け、犯人の追跡や行方不明者の捜索などに出動する。
(まいどなニュース/山陽新聞)