ダマされるな! アメリカで激増する「ペット詐欺」の深刻な実態
2020年12月27日(日) 現代ビジネス
2020年、コロナ禍になり、私たちの生活が一変しました。
会いたい人に会えない、大勢の人と食事を取ることもできない……そんな環境で生きていると、人は温もりがほしいと思い、日本だけではなく米国でもペットブームが起きています。
そして、コロナ禍で自宅自粛が求められ、ネット利用も増えました。
仕事柄、動物を好きになってくれる人が増えることは、嬉しいことです。
しかし、世の中では、多額のお金などが動き出すと詐欺も出てきます。
いま米国で「ペット詐欺」が増えているのです。
写真:現代ビジネス
米国の「ペット詐欺」の実態
CNNはペット詐欺を以下のように報じています。
---------- 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)が始まってから、米国内でペットの購入に絡む詐欺が横行している。
消費者団体に入る苦情の件数は2倍以上に増えたという。
ニューヨーク州に住むキャロリン・バーグさん(62)はインターネット上で見つけたブリーダーから2匹の猫を買うことになり、10月に2500ドル(約26万円)を送金した。
だが猫は今もいない。
外出制限中の寂しさに耐えかねて、どうしても猫が飼いたかったという。
前に飼っていたヒマラヤンが18歳で大往生を遂げた後、夫と話し合ってサイベリアン2匹を引き取ることにした。
送金後におかしいと思って調べてみると、フェイスブック上に同じブリーダーにだまされたという被害者のグループがあった。
バーグさんは消費者保護を目的とする米NPO「商事改善協会(BBB)」に被害を報告した。
BBBによると、ペット詐欺は3年前から増加傾向にあったが、今年は特に激増した。
被害総額は過去12カ月間で300万ドル(約3.1億円)と、3年前の6倍に達していると推定される。
---------- 米国は、国土も広いのでネットで子犬を購入することが、一般的なのでしょう。
詐欺は通常、お金を一度払ってしまうと、返金されることがほとんどありません。
この米国で横行している「ペット詐欺」は、ネット詐欺の典型的な手口のひとつです。
たとえば、子犬ほしさにネットで探していたら、可愛い子犬の写真がたくさん並んでいる販売サイトにたどり着いたとします。
その子犬をほしいと思ったら、犬のケージやフードなどもすすめられて、ついついそれらも購入して、その後、決済アプリで手付金として数百ドルを送金してしまうというものです。
あげくの果てに、その業者とは連絡が取れなくなり、もちろん送金したお金も戻ってきません。
クレジットカードや小切手でもないので、取引のキャンセルができないのが、米国の「ペット詐欺」なのです。
◆日本における子犬・子猫販売
日本では法律上、同様のことが起こらないようになっています。
動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護法)により、対面販売を伴わないインターネット上のみで売買契約を成立させることは禁止されています。
つまり米国と違うところは、ネットで子犬を見つけることはできるけれど、購入するときは、ブリーダーやペットショップのもとに行くことになっているのです。
◆ネット販売の「問題点」
〔PHOTO〕iStock
実際の猫や犬を見ないでネットの写真や動画だけ見るとでは、やはり問題点もあります。
・説明不足のおそれ
動物愛護法で、ブリーダーやペットショップは、「販売する動物の特性などについての十分な説明」をすると、義務づけられています。
この説明には、性成熟時のサイズや飼育方法、避妊去勢手術に関することや、病歴、遺伝性疾患の有無などを飼い主に伝える必要があります。
・安易な購入になりやすい(飼育放棄がないように)
コロナ禍のときに、外出しなくてペットを購入できることは、ありがたいです。
しかし、ペットは生きものです。
健康であるかどうかもちゃんと見てみないとわかりません。
ネットの写真ではもっと小さいと思っていたら、想像していたより大きく違和感があるなどで、愛情を注げないなども起こるかもしれません。
そのようなことを避けるために、購入するときは、実際に、ペットショップやブリーダーのところに足を運ぶことになっているのです。
犬や猫は、いまや平均寿命が伸びて十数年生きる時代なので、しっかり将来のことを考えてから、購入することにしましょう。
◆ネットで子犬や子猫を売っている現実
実際問題、ペットの代金とは別途で、送料は1万~2万円前後出せば送ってくるところもあります。
コロナ禍であるため、写真を見て可愛いから送ってもらって何が悪いのと考えているかもしれません。
日本の動物愛護法で、飼い主はペットショップやブリーダーのところに行くことと決められています。送ってもらうのは違法行為になるので、そこでなにか詐欺行為をされる可能性があることを知っておいてください。
◆ネットで選ぶときのポイント
大前提として、ネットの写真で子犬や子猫を選んで最終的に自分の足を運んで取りに行くということです。
・動物取扱業者登録している
動物愛護法では、ペットショップやブリーダーさんは、動物取扱業者として登録することが必要となっています。
一般愛犬家や愛猫家が自宅で繁殖をして有償で譲渡やペットショップなどに販売している場合においても同様です。
これを行わなければ、法律上「動物取扱業」を営むことができず、もし無登録で営業を行った場合は罰金が科せられます。
・ペットショップやブリーダーが、自分が行ける距離にする
東京にお住まいの方は、神奈川県や埼玉県など、自分で行ける距離にしましょう。
東京の人が、北海道でお気に入りの子犬や子猫を見つけたところで、行くのはなかなか難しいと思います。
自分で行ける範囲内の場所からみつけましょう。
・値段だけで決めない
もちろん、お手頃価格であるといいですが、低価格であることだけで、決めてしまうと、遺伝的な病気を持っていることもあります。
値段だけで決めるのは、よくないですね。
少し幅を持って、購入しましょう。
・マイクロチップが入っている
2019年6月に改正動物愛護法が成立したことによって、ペットショップなどで販売される犬・猫へのマイクロチップの装着が義務化されています。
つまり2022年6月より、犬・猫を販売する業者(ペットショップやブリーダーなど)を対象にマイクロチップの装着が義務付けられることになりました。
いまから購入される人は子犬や子猫でもマイクロチップが入っている方がいいですね。
・遺伝子検査をしている
遺伝病とは、先天性疾患の中でも遺伝子の異常で引き起こされる病気のことです。
遺伝子の異常は一定の確率で親から子に遺伝します。
具体的には、月日が経つと目が見えなくなる「進行性網膜萎縮症」や脊髄の疾患で「変性性脊髄症」などがあります。
犬や猫によって、遺伝病が異なるので、しっかり調べて、それを持っていないことを確認してから購入してください。
◆命を購入するということ
〔PHOTO〕iStock
日本では米国のように、「子犬詐欺」は起こりにくいです。
ただ、動物愛護法により、実際に子犬を迎えに行き、ペットショップやブリーダーを見ないと法律違反だということを知らないと米国のような「ペット詐欺」に遭う可能性はあります。
「ネット」「子犬」「子猫」「販売」などの単語を入れて検索をかけると、写真を見て、代金を振り込めば、送料を別に請求されて犬を購入できる世の中なのです。
しかし、子犬は生きているもの。
気にいらないからといって返品できるものではありません。
子犬という命あるものの購入は、ネットの性質である「手軽さ」「リアルを見ない」などは不向きだということを頭に置いてください。
命あるものなので、一度手に入れると終身飼育が基本です。
コロナ禍で、孤独感や寂しさを感じる人が増えて、ペットをほしい人の気持ちはもちろん理解できます。
子犬や子猫を飼い始めると、あなたはずっと飼い主なのです。
自分が忙しいからといってケータイのようにOFFにすることにできないのです。
そんな基本的なことも忘れてないで、ペットとの生活をしていただきたいものです。
石井 万寿美(獣医師・作家)