猫との出会い、もはやペットショップは少数派
保護猫の底なしの魅力
2020年12月15日(火) AERA.dot
岩下明日香
写真はイメージです
コロナ禍で外出が減った今年、猫と過ごす時間が増えた人も多かったのでは。
そこで本誌は猫の飼い主にアンケートを実施し、200を超える回答から読者と猫との関わりを調査した。
結果からは、孤独を癒やし家族の絆をつなげる猫たちの大活躍が見えてきた。
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本誌が猫を飼っている人を対象に11月11日から12月1日にかけて実施したウェブアンケートには、211件の回答が寄せられた。
飼い猫との出会い (週刊朝日2020年12月18日号より)
最初の質問は「飼い猫との出会い」について。最も多かった回答は「拾った(保護した)」(76票)で、次いで「知人からの譲渡」(49票)や、「里親・保護施設」(41票)などが多く、ペットショップでの購入は少数派だった。
拾ったケースについては、
<庭で野良猫が産んだ子を育てたのが始まり>
<開いた窓から勝手に入ってきた。追い出しても懲りずに入ってきて、いつの間にか飼うようになった>
など、猫の側から「保護」を求めてきたかのような出会いが複数あったのも印象的だ。
元東京農業大学教授の大石孝雄さん(伴侶動物学・動物遺伝学)がこう解説する。
「猫は犬と違ってつながれていないので、野良猫や捨て猫を拾う人が多い結果になったのでしょうね。猫はすみかを選ぶ時、雨風をしのげる、樹木の陰など身を隠す場所がある、冬場に暖をとれるといった条件を求める習性がある。人間の家はそうした条件を満たしていますから、猫が近づいてきやすいのです」
続いて、「飼い猫が冬になるとよくする行動」という質問に対して、最も多かった答えは「窓辺で日向ぼっこ」(48票)。
次いで「人で暖をとる」(39票)、「ストーブの前に陣取る」(34票)といった回答が続く。
中には、次のようなユニークな報告もあった。
<日差しの動きに沿ってベッドの上を移動して寝ている>
<膝の上でニャンモナイトになります>
暖を求めてのんびり過ごす猫の姿は、多くの家に共通する光景のようだ。
「室内飼いの場合、日差しの当たる窓辺や毛布の上などの暖かい場所を好みます。『丸くなる』という回答が多いですが、寒いせいもありますが、猫は体が柔軟なので自然と丸まった状態になりやすいですね」(大石さん)
飼い猫の「好きな食べ物」について聞くと、「魚・刺し身」(28票)、「鶏肉・ささみ」(24票)といった天然素材を抑えて断トツ1位だったのが、いなばペットフードのキャットフード「CIAO ちゅ~る」(61票)。
テレビCMも有名だが、実力は本物のようだ。
中には、<マグロの刺し身、特に大トロ>という舌の肥えた猫や、<納豆(味付けなし)><みたらし団子>と、“珍味”な猫もいた。
「猫の食欲がない時は、ドライフードなどにちょっとかつお節をまぶして与えるのもよいですよ」
「猫と暮らして良かったと思った瞬間」という質問には、様々な回答が寄せられた。
今年リタイアし、夫婦2人で東京から伊豆に移住したという60代の回答者からは、
<猫のことでとにかく会話が増え、2人で考える機会も増え、愛情表現も素直になった気がする>との声が。
ほかにも、
<家族の会話が増える。猫はかすがい>などと、家族のコミュニケーションに一役買っている猫たちの姿が浮かび上がってきた。
一方で、一人暮らしなどで時に孤独を感じる環境にいる読者からは、こんな回答が。
<一人暮らしなので生きる糧になる。一心同体で、猫が元気だと私も元気。私の顔色をいつもうかがっていて、猫がこんなに素晴らしい動物とは、飼うまで知らなかった>
<去年離婚して子供も独立し、一日中誰とも話さない日がありましたが、それがなくなりました>
猫が孤独を癒やしてくれるという声は多かった。
さらに、猫のありがたみを感じるこんな回答も。
<息子が拾った猫を受験勉強の合間に膝の上で撫でて、精神的に安定していた>
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2020年12月18日号より抜粋
猫の平均寿命は15歳、猫が死ぬまで這ってでも死ねない…
後見人には餌代を持参金で
2020年12月15日(火) AERA.dot
岩下明日香
コロナ禍で外出が減った今年、猫と過ごす時間が増えた人も多かったのでは。
そこで本誌は猫の飼い主にアンケートを実施し、200を超える回答から読者と猫との関わりを調査した。
結果からは、多くの人が抱く将来への不安が見えてきた。
【前編:猫との出会い、もはやペットショップは少数派 保護猫の底なしの魅力】から続く * * *
孤独を癒やし家族の絆をつなげる猫たち。
一方で、猫を飼うことには様々な困難が付きまとう。
特に飼い主が高齢の場合、愛猫の将来が不安になる。
アンケートで「飼い主が高齢でいつ緊急入院するかわからない場合、猫をどうするか心配か」と問うと、52%が「はい」と答えた。
では、飼い主たちは「不測の事態」にどう備えているのか。
「もし飼い主が病気や災害などで飼い猫と離れなければならない時はどうするか」という質問に対しては、<信頼できる知人に頼む><家族に頼む>といった回答が多数を占める一方、<考えたくない><困ってしまいます>と、具体的なプランが描けていない人もいた。
アンケートに応じた福島県須賀川市の吉越美絵さん(61)も、いざという時のことを心配する一人だ。
現在6匹を飼っているが、5年前、最後に保護したチビ太については、同居する高齢の母から飼うことを反対されたと話す。
吉越さんが飼うチビ太(5歳、オス)。駐車場の脇で鳴いていたところを保護した。当時は推定生後2カ月で痩せていたが、今はまん丸だ(吉越さん提供)
「動物が大好きな母ですが、『私たちに何かあったら面倒を見切れない』と言って、別のもらい手を探そうとしていました。でも、まだ生後2カ月ほどのチビ太が熱を出すと、治療するうちに情が移ってしまった。今ではチビ太が母に一番懐いて、母が面倒を見ています。お年寄りは面倒を見られるよりも、見るほうが元気になるのかもしれません」
幸い、近くに娘が住んでいるため、いざという時には猫の世話を頼んであるという。
東京都清瀬市で人と動物に関わる問題を検討する「動物問題を考える会」の立ち上げに関わった「きよせボランティア・市民活動センター」の星野孝彦センター長が話す。
「老夫婦がそろって入院してペットが残されていたという相談を受けたのをきっかけに会が発足しました。行政や市民活動団体などと連携して情報を共有しています」
清瀬市が作成したエンディングノートには、ペットに関する項目も加えられた。
健康なうちに、将来ペットを託せる人の名前を書き出すことで具体的に預かってくれそうな人に相談するきっかけにもなる。
東京農業大学教授の大石孝雄さん(伴侶動物学・動物遺伝学)は、飼い主の健康寿命と猫の寿命を計算して備えておくことを勧める。
「猫の平均寿命が15歳であることを踏まえて、将来、代わりに面倒を見てくれる人を確保しておくべきです。その際、餌代程度の持参金を渡すことを検討してもいいでしょう。餌代よりもかかるのがペットの医療費ですが、ちゃんと獣医に見せてケアをしてくれる後見人を選ぶことも重要です」
猫だけでなく自分や家族の心配も必要な災害時については、こんな回答があった。
<東日本大震災の時、避難所に入れないと知り、自家用車をワンボックスカーに乗り換え、後部荷室で暮らせるように改造した> <災害時は極力自宅避難を想定して物資(エサなど)を備えるつもり>
環境省は東日本大震災での事例を基に「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」をまとめて飼い主を啓発している。
避難生活に備えてケージやキャリーバッグを嫌がらないよう慣らしておくこと、各種ワクチン接種や寄生虫の予防・駆除を行っておくことなどが勧められているので参考にしたい。
癒やしを求めるだけでなく、様々な備えも必要な猫との生活。60代の回答者からは、<這ってでも猫が死ぬまで死ねない>という声も寄せられた。
猫も人も長生きする時代、うまく共生できる仕組みを整える必要がありそうだ。
(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2020年12月18日号より抜粋