イヌやネコをめぐり何が起きている?
販売業者への“数値規制”で行き場を失う懸念も
2020年11月20日(金) ABEMA TIMES
悪質な業者からイヌやネコを守るため、ペットショップやブリーダーが飼育できる数に上限を設ける環境省の省令案に、パブリックコメントで10万件を超す意見が寄せられました。
イヌやネコをめぐり何が起きているのかを取材しました。
(テレビ朝日社会部・藤原良太)
Eva提供
◆「動物愛護の精神にのっとった行政を実行たらしめる」
小泉環境大臣の7月の記者会見での言葉です。
その日、環境省は一部の悪質な業者からイヌやネコを守るための省令案を発表しました。
「飼育するゲージの広さ」「飼育できる数の上限」いわゆる数値規制が盛り込まれ、行政側が業者を指導する際に目で見てわかる判断基準が作られたのです。
■省令案について「イヌ・ネコが行き場を失う」と不安の声も
省令案
悪質な業者の実態とはどんなものなのか?
動物愛護精神の啓発活動をしている団体を取材すると、あるペットショップのバックヤードを撮影した写真には、自分の体よりも小さなゲージに入れられたイヌが。
あるブリーダーのところで撮影されたのは爪の手入れがされずに伸び切って曲がっているネコでした。
一部の悪質な業者が管理できないほど多い数を飼育し劣悪な環境で育てている実態でした。
一方、ペット業界側は環境省の省令案をどう受け止めているのか?
取材を申し込んでみましたが、大手のペットショップ、街のペットショップやブリーダーさんにはことごとく断られてしまいました。
理由は発言したことに対する周囲の目や評判が怖いというものでした。
その後も取材先を探したところ、ペット業界を代表する立場の男性が応じてくれました。
男性は過去にメディアの取材を受けたら、批判や脅しともとれる手紙が届けられたことがあったということです。
男性は省令案について「業界全体の取り組みが不十分だったから数値規制という話になったのは仕様がない。イヌやネコの飼育環境が改善されるのは良いこと」としながらも、数値規制によって「経営が難しくなることを見越して廃業の相談に来る事業者がいること」「行き場を失うイヌやネコが出てくること」など不安が広がっていることを教えてくれました。
省令案について、環境省が一般から意見を募集するパブリックコメントを1カ月間にわたり実施した結果、10万件を超す意見が寄せられました。
担当者によるとこれほど意見が寄せられたことはほとんどないということで、関心の高さが示されました。
より厳しい規制を求める声がある一方、行き場を失うイヌやネコを心配する声も多いということです。
■保険会社・フード会社との連携など 進む里親支援システム
八街少年院
ペット業界では男性を中心に行き場を失うイヌやネコを出さないため、里親を支援するシステム作りが進んでいます。
LINEでの幅広い情報共有、ペットに関連する保険会社や医療機関、フード会社との連携など、1年以内の稼働を目指しています。
一方、千葉県にある少年院では、更生プログラムの1つに、保護されたイヌを人に慣れさせる訓練を取り入れています。
少年らによって人との生活に慣れたイヌは一般家庭に譲渡されるというものです。
環境省はこうした取り組みを視察するなど、イヌたちが活躍できる場所を広げようとしています。
「悪質な業者からイヌたちを守り、同時に行き場を失うイヌたちを出させない」。
環境省はパブリックコメントで寄せられた意見を踏まえ移行期間をどれくらい設けるかなど検討し、来年6月に省令として施行する予定です。
【映像】飼育頭数に制限!? 藤原記者に聞く、動物愛護の新省令
藤原記者
藤原良太(ふじわら・りょうた) 社会部記者2年目。1年目は事件や災害を取材。現在は環境省の担当として生き物の問題などを追っている。大阪府出身で帰省時はNGK(注:なんばグランド花月)に行くことが多い。 (ABEMA NEWS)
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