8畳2間に約160匹の犬
ペットが過剰に繁殖「多頭飼育崩壊」の現場(島根・出雲)
2020年10月30日(金) 山陰中央テレビ
可愛がっているペットが繁殖で増えすぎて飼育不能に陥る「多頭飼育崩壊」。
この「多頭飼育崩壊」が出雲市内でおきていて今、解決に向け多くの人が力を尽くしています。
テーブルの上にのり、狭い隙間にすし詰め状態の犬。
ペットが過剰に繁殖し世話ができなくなる、これが多頭飼育崩壊の現場です。
出雲市内の一般住宅、8畳2間の室内にいる犬の数は163匹。
専門家によると一般家庭で起きた多頭飼育崩壊としては国内でこれまでに類例のない最大級の事例だといいます。
https://news.yahoo.co.jp/articles/1685f3777b4f8492cd525f1617de4fb56f64bd37
(アニマルレスキュードリームロード 原ゆかり理事長)
「一番最初はびっくりしましたけど、あまりの数に。」
こう話すのは保護した犬や猫を新しい飼育先に渡す活動などを続けている出雲市のNPO法人アニマルレスキュードリームロードの原ゆかり理事長です。
原さんは飼い主からの連絡を受け、実際に家に入った。
(アニマルレスキュードリームロード 原ゆかり理事長)
「この生活が飼い主さんには日常なんだと。私たちにも飛びついてきて、しっぽふる犬が多くて、決して虐待されているとかはなくて。ただただ麻痺をして増えたのかなと。」
犬の飼い主は3人家族で飼育歴は30年以上。
元々は数匹を屋外で飼っていましたが、雌犬が子供を産んで数が次第に増えてくると家の中で飼うようになったといいます。
ただ、新しい飼い主を探すこともなく、何より不妊や去勢の手術を行わなかったため、とうとう160匹を超える異常な状態を作り出してしまったということです。
島根県では7年ほど前に犬が逃げ出すトラブルなどがあった際に、数十匹の飼育を確認はしていましたが、現在の異常事態には。
(島根県健康福祉部薬事衛生課 中村祥人さん)
「これほどまでの数を飼っているとは把握していなかった。近隣住民からは鳴き声やにおいの苦情が相次いでいて県などにも立ち入り調査の要望が出たとしています。犬にとっても良好な状態ではないので、これをまず改善することによって周辺住民の苦情を解決していくことが大事だと思います。」
県や動物愛護団体によると、こうした状況にさすがの飼い主も飼育数の削減を決断したといいます。
その一歩として現在県内4つの団体が保護のため犬を連れ帰っていて、ここアニマルレスキューでは早速子犬の譲渡を始めています。
(アニマルレスキュードリームロード 原ゆかり理事長)
「譲渡できる子からしていって数を減らさないと。」
さらに、将来も数を増やさないための抜本的な対策として、大規模な不妊と去勢の手術が決まりました。
島根県が全国で様々な対策を手掛けている公益財団法人の「どうぶつ基金」に救済を要請する形で実現したもので、来月基金が出雲保健所に獣医5人を派遣して実施します。
費用は約800万円近くにもなるということですが、基金が負担します。
(どうぶつ基金 担当者)
「一般家庭で飼われている多頭飼育崩壊で史上最高の多さだと思います。犬も飼い主さんも救ってあげるという意味で不妊手術をしてあげたいと思います。」
(アニマルレスキュードリームロード 原ゆかり理事長)
「飼い主も、もう十分に反省しておられますので、協力をして前向きにやってきたいと思います。」 「生き物を飼う責任」。
事あるたびに言い続けられるこの言葉の重みを今また噛みしめなければなりません。
"8畳2間に犬164匹と人間が生活"悲惨な多頭飼育崩壊を救いたい
どうぶつ基金が緊急支援を呼びかけ、全頭不妊治療を実施
2020年10月27日(火) キャリコネニュース
犬の多頭崩壊
動物の殺処分ゼロを目指す公益財団法人どうぶつ基金は10月27日、多頭飼育崩壊の対応に関する寄付の緊急支援を呼びかけた。
島根県出雲市で8畳2間の平屋に164匹の犬と人間が生活するという、深刻な多頭飼育崩壊が発生した。
島根県行政の要請を受け、同財団は11月10~12日に全頭の不妊治療、ワクチン接種、ノミ・ダニ駆除などの獣医療を無償で行う。
その後は地元ボランティアらにより里親を探す。
床に糞尿が重なる中で164匹と人間が生活「犬も人も普通に暮らしていけるように」
同団体はリリースで、これまで全国の多頭飼育崩壊現場を見てきた中で「この現場は一般家庭の犬多頭飼育崩壊として史上最大級」と説明。
床には糞尿が重なり、縁の下、ベッド、台所、棚、いたるところで「犬たちが立体的にひしめき合っています」と書いており、かなりの惨状のようだ。
犬はかなりやせ細っており、糞を食べて生き延びている状態だ。
この状態の中で人間も共に寝泊まり、食事、洗濯を行い、この場所から通勤しているという。
同団体は家族に対し、「信じられないかもしれませんが、犬を愛する気持ちも感じられました」と綴る。
「きっと、最初は犬好きの普通の家族だったでしょう。早い段階で不妊手術さえしていれば、今も普通の家族で犬と穏やかに暮らしていたであろうことが残念です。飼い主さんはとても反省しています。私たちは、この機会に生活環境の改善をして犬たちを里親に出し、ヒトも犬も普通に暮らしていけるように、元に戻してあげたいと考えています」
「今年の多頭飼育崩壊の多さは異常事態」
今回は同団体獣医師チームを出雲保健所に派遣して対応をする。
公益財団が保健所の施設を使用するのは日本初だ。
これまで行政は「飼い主のいる動物のために税金を投入できない」とし、行政に出来ることはあくまで殺処分のみで、不妊手術をした上で里親探しをするということはなかったという。
しかし環境省は10月15日、自治体向けガイドラインの骨子案を有識者検討会に示した。
その中で、動物愛護部局だけでなく社会福祉部局とも連携し、動物と飼い主を同時に支援するよう促している。
同団体は、今まで飼い主は「保健所に相談すれば殺処分される」と考え相談できず、犬や猫はさらに増え続けるという悪循環が繰り返されてきたと指摘する。
そのため、「今回の一斉不妊手術事業が、今後の良きケーススタディとなることを願っています」とコメントしている。
同団体は公式サイトで「今年の多頭飼育崩壊の多さは異常事態」と延べる。
連日連絡が入り、対応しているが「あまりの件数、頭数の多さに資金不足が深刻です。どうか、緊急支援をお願いします」と呼びかけている。
支援は同団体の特設サイトで受け付けている。
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