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「36回ローンで購入された猫」の悲しすぎる結末

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「36回ローンで購入された猫」の悲しすぎる結末

2020年10月3日(土) 東洋経済ONLINE

日本で飼われているペットの数は年々増加傾向にあり、その総数は15歳未満の子どもの数(1533万人)を追い抜きました。
一般社団法人ペットフード協会が発表した「2019年全国犬猫飼育実態調査結果」によると、犬は879万7000頭、猫は977万8000頭で犬猫推計飼育頭数の全国合計は1857万5000頭です。
犬の飼育頭数は減少傾向にあるようですが、コロナ禍の在宅勤務で世話がしやすくなったことなどから、心の癒やしを求めてペットを飼う人が増えおり、これから飛躍的に飼育頭数が増加する可能性もあります。
しかしながら、犬や猫をペットショップなどで購入する場合の値段は高額です。
一括で支払うことができずに、最近はローンを組んで購入する人も増えています。
また、ペットの購入を目的としたローン商品を取り扱う銀行も出てきており、それを利用することが一般的になりつつあります。
ある日、ふらっと立ち寄ったペットショップで「運命の出会い!」「連れて帰りたい!」「でも値段を見ると手が出ない……」と思っているときに、分割払いを利用できると聞いて購入を決める。
でも、その安易な選択が後悔を伴う不幸な事態を招くこともあります。


月5000円、36回ローンで買われた猫が直面した悲劇とは? (写真:Nynke van Holten/PIXTA)

■ローン返済も猫の飼育も破綻したAさん
先日、筆者のところに知人からある相談がありました。
「友人のAさんがローンを組んで猫を購入したのですが、収入が減りローンも払えないし、飼育もできないと言っている」と。
詳しく話を聞くと、ペットショップで一目ぼれして、全額支払うのは無理だったので、残りは月々5000円36回払いのローンを組んで購入したとのこと。
しかし、いざ飼い始めると医療費などに、思っていた以上のお金がかかってしまったというのです。
まだ、返さなきゃいけないローンは半分以上残っているとか。
私はコロナ禍が大きな要因なのかと考えていたのですが、もともとAさんは生活に余裕があったわけではなかったようです。
猫はどうするつもりなのかを聞くと、「どうしたらよいのかわからない」と困りはてています。
私はとりあえず知人とともにAさんの家に行き、猫の状態を含めて詳細を確認することにしました。
相談を受けた翌日、Aさんの自宅を訪れると愛猫と共に出迎えてくれました。
その猫はチャッピーという名前がつけられたメインクーンの男の子でした。
しかし、歩く姿はヨロヨロで今にも倒れそうです。
触ると全身が毛玉だらけで、体もガリガリにやせています。
抱き上げると、とてもメインクーンの成猫とは思えない軽さ。
十分な世話もしてもらえず、まだまだ成長期であるというのに満足のいくご飯ももらえていないことがすぐにわかりました。
持参したフードをチャッピー君の前に置きましたが、匂いを嗅いだだけで食べようとはしませんでした。
その様子から緊急性があると判断し、まずは私が引き取り、しっかり健康診断をして、体調が整ったら里親募集をしたらどうかと提案しました。
するとAさんは「自分のことで精いっぱいなので、よろしくお願いします」とすんなりと同意してくれました。
すぐにチャッピー君を連れて帰り、動物病院で診察を受けると、衰弱していることに加えて、軽い熱中症の症状、腎臓の機能も低下していたため、回復するまで入院が必要との診断を受けました。
猛暑であるにもかかわらず、Aさん宅のエアコンは稼働していなかったためです。
「もう数日遅かったら確実に命を落としていたかもしれないね」と獣医師は言います。
チャッピー君の状態にまだ不安はあるものの、最悪の事態になる前に保護できたことが何よりの救いでした。

■「100万円を超える」犬猫の飼育費用
犬や猫の世話にかかる費用は決して安価ではありません。
たとえローンで購入できたとしても、その後の飼育用品、フード代、予防接種代、医療費など生涯に必要になる費用は大きなもの。
冒頭の調査結果によると、犬の生涯必要経費は超小型犬が最大で220万1448円、猫は139万1199円とされています。
超小型犬の場合は平均寿命15年とすると1カ月に約1万2200円、猫の場合は平均寿命15年とすると約7700円かかる計算になります。
もし病気やケガをして医療費がかさめば、それ以上の出費となるでしょう。
Aさんの場合は、「その部分は何とかなるだろ」と軽く考えていたと言います。
しかし、実際に飼い始めるとチャッピー君が体調を崩すことや病気になることが多く、医療費等がかさみ、それがAさん自身の生活を圧迫する要因になっていたようです。
さらにコロナ禍が重なり、キャッシングでの自転車操業もままならず。
ローンを支払うことも、体調が悪いチャッピー君を病院に連れていくことも、必要な食事を与えることもできなくなりました。

■ペットを安易に購入してもいいのか?
今回のコロナ禍でわかるように、飼い主自身の経済状況が突然に変わる可能性もあります。
そのような状況になっても犬や猫がつらい思いをしないように備えておく必要があります。
また、犬や猫は10~15年以上を生きるわけですから、そもそも経済的に不安定であれば避けたほうが賢明でしょう。
もちろん飼い主だけでなく、ペットを販売する側にも問題はあります。
ペットショップの店員は販売するのが仕事ですから、一括での支払いが難しいお客には当然ローンを勧めます。
その際、飼い主の経済状況まで注意を払っているかというと怪しいもの。
Aさんのケースから見てわかるように、安易な購入を増長しているのが現状です。
結局、Aさんは愛猫のチャッピー君の命を危険にさらしてしまったため、手放すことになりました。
共に過ごしてきたチャッピー君にとっては悲しい結末でした。
犬や猫を飼うということは簡単なことではありません。
どこから、どのように迎えるにしても、共に幸せに過ごしていけるのかどうか、時間をかけて事前に考えることが大切です。
飼い主の安易さで犬や猫につらい思いをさせることがないように、真面目に命と向き合い、愛情と責任を持ってその答えを出すことが必要なのでしょう。
阪根 美果 :ペットジャーナリスト


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