ペット業界の深い闇…
子犬や子猫を量産するヤバいブリーダーがいる現実
2020年8月13日(木) 現代ビジネス
コロナ禍で、にわかペットブームになっています。
家にいる時間が長くなり、見ているだけで癒しになるペットを求める人が増えていることは理解できます。
SNSの中では、かわいい犬や猫の動画や写真で溢れていますから。
一般的には、ペットショップで、犬や猫を購入する人が多いです。
行政や保護団体から、ペットの里親になるという方法もありますが、手続きが面倒だったり、飼い主がひとり暮らしだったり、年齢的に難しいなどの理由でなかなか浸透しません。
今回は、お店にキラキラと並んでいる犬や猫の繁殖、そしてヤバいブリーダーについて考えましょう。
◆ペットショップの犬や猫はどこからやってくるのか?
写真:現代ビジネス
日本のペットの流通経路は以下のような流れです。
つまり、犬や猫を繁殖させて、子犬や子猫はオークションに出され、その子たちをペットショップが購入して、ガラス張りのケースに並べて販売します。
年間数十万匹のペットがこのようなルート通っています。
ここには、命の大量消費、大量販売を前提としているペットビジネスが存在するのです。
---------- (*)改正動物愛護法により、ペットショップの販売ができる犬や猫は、生後56日(8週)からになりました。 ----------
◆ペットのブリーダーとは?
ペット業界において、犬や猫の発情を促し、子どもを産ませる人たちをブリーダーといいます。
もちろん健全なブリーダーもいますが、中には悪徳な業者もいるのです。
◆「パピーミル」「キトンミル」とは?
消費者であるあなたが、ペットショップで子猫や子犬を購入したら、そこの子たちは、「パピーミル」「キトンミル」から来ているかもしれないのです。この事実を知っていますか?
「パピーミル」とは、パピーは子犬、ミルは工場、あわせて「子犬工場」という意味です。
つまり、営利企業で悪質なブリーダーが大量に繁殖させることを指します。
メス犬は、子犬を産む機械のように扱われ、繁殖させられるのです。
「キトンミル」(パピーミルほど、一般的ではありません)とは、キトンとは子猫、ミルは工場なので、「子猫工場」を意味します。
母犬や母猫はこのような環境にいると当然、ボロボロな肉体になり病気になりやすくなります。
人気の種は「高値で売れるうちに」繁殖の回数を増やします。
母犬や母猫が、ずっと哺乳をしていると、次の発情が来るのが遅れたりするので、最低限の日数で子犬や子猫を放します。
こうなると、まだ母親のぬくもりがほしい子犬や子犬の精神面にも影響をきたします。
ペットブームの裏には、こうしたことが起きているのです。
ショーケースに並んだ子犬や子犬だけを見ていると、わからないかもしれません。
その一方、この子たちの母犬や母猫は、狭いケージに閉じこめられたまま生産設備のように飼われて、犬なら満足に散歩もさせてもらえず、猫なら遊んでもらうこともなく、繁殖能力が衰えるまで、子犬や子猫を産み続けるのです。
さらに、糞尿まみれになるなどの劣悪な環境の中で生きている子も多くいます。
◆犬の発情期間、年に何回産むのか?
犬は、生後6カ月ぐらいから、ほぼ年に2回、季節や日照時間に関係なく発情がきます。
発情期の前になると、膣から血液成分のような分泌が出て、膣は軟らかくなります。
犬の発情は人には、わかりやすいです。
一度、発情が来れば、約半年ごとにくるので、年に2回は出産させられます。
良心的なブリーダーは、母犬の体を守るために、年に1回しか産ませません。
◆猫の発情やその期間、年に何回産むのか?
猫の発情は、早い子は生後4カ月できます。
猫も人を同じように時間で刻んでいると思われているかもしれませんが、猫は季節繁殖動物で、一定の季節に繁殖活動を行う動物なのです。
犬とは、全く違います。
長日性季節繁殖動物と呼ばれて「日照時間」が長くなるとメス猫が発情するのですのです。
避妊手術をしていない猫を観察しているとわかると思いますが、月一度でなく、何回も発情がきています。
人のように膣から血のような成分が排泄されないので、人には発情がわかりにくいのです。
以下のようなことが起きるようになります。
・クネクネする。
・懸命に家出を試みる。
・近寄ってくる。
・オス猫が寄ってくる。
飼い主にはわかりにくいですが、猫同士ではすぐわかるようです。
日照時間が伸びた1月から9月ぐらいが猫の発情期になり、日照時間の短い10月から12月は発情しません。
猫の妊娠期間は、2カ月少しなので、暖かい時期に子育てなのでいいのでしょう。
2カ月の妊娠期間を経て、3月生まれから11月生まれるになるわけです。
自然界だと、12月から2月生まれはいないのです(現実には、猫は1年中、生まされています)。
こうした猫の発情期を「悪用」する繁殖業者も存在します。
日照時間をコントロールすれば、犬と違って、猫は何回も発情を迎えて子猫を生むことができます。
つまり年間を通して人為的に照明の光を長時間浴びせ、何度も発情を起こして、オス猫と交配した刺激で排卵する動物(交尾排卵動物、交尾の刺激で排卵する)なので子猫を産めるわけです。
年に3回ぐらい産みます。
この方法を詳しく説明すると、この猫の性周期を悪用したブリーダーは、人工的に照明を長く浴びせて(1日8時間以下だと発情がこないので、12時間以上の光を浴びせる)、年に何度も繁殖させているのです。
もちろん、良質なブリーダーは、年に1回しか繁殖させません。
◆改正動物愛護法の内容とは?
このような劣悪なブリーダーが存在する事態を改善するために、2019年6月に成立した改正動物愛護法で規制強化が決まりました。
2021年6月までに関係省令を改正する予定です。
---------- ・従業員1人当たりの飼育上限を明記 繁殖業者の場合、犬は15匹、猫は25匹、ペットショップなど販売業者に対しては、犬20匹、猫30匹としました。 ・狭い場所に押し込めて飼育させないよう、ケージの大きさも明記 寝床として使う場合、犬猫ともに縦は体長の2倍、横は1.5倍とした。高さは、犬は体高の2倍、猫は3倍にしました。 ----------
◆犬や猫を飼いたい人のできること
犬や猫を飼っていると、ついつい人と同じと考えがちですが、動物の種によって性周期は違うのです。
猫は人と暮らすことで、一年中不夜城な空間での生活を強いられています。
避妊手術をしていない猫は、日照時間が長くなるので、いつでも発情して子を生むことが可能になるのです。
いまや、犬や猫をペットショップで子猫を購入する人が後を絶たない結果、1年中、蛍光灯を12時間以上浴びて、キトンミルみたいな飼い方をしているブリーダーが存在し続ける状況になっています。
このような事実を知って、良心的なブリーダーから購入したり、保護犬や保護猫を探したりすることも選択肢になるかもしれません。
ただ、犬や猫が「かわいい」ということだけでなく、ペット産業に闇があることをもっと浸透してほしいです。
日本では、残念ながら動物が「モノ」と見られている部分がありますが、世界では、「パピーミル」「キトンミル」とつながりのあるペットショップに対して不買運動が続けられています国もあります。
ペットブームが来るとそれに翻弄される犬や猫がいることを知ってもらい、成熟したペット文化になることを切に望みます。
犬や猫は、「命あるもの」ですから。
石井 万寿美(獣医師・作家)