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コロナ禍に漂うペットを守る人たちの苦悩

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「小さな命を助けたい」もう一つの命・・・
 コロナ禍に漂うペットを守る人たちの苦悩

2020年5月16日(土) FNN PRIME

◆長引く外出自粛で猫カフェ・里親探しがうまくいかない


「このままでは、あと2ヵ月もつかどうか…不安です」
そう語るのは、札幌市で猫の保護活動をしている団体『ねこたまご』の共同代表である後藤さん だ。
『ねこたまご』では、猫カフェの経営をしながら保護した猫の里親探しをしている。
里親との出会いの場になる猫カフェには客が来ず、里親への譲渡もできない。
保護している猫の医療費もかさむ。
1ヵ月前に融資申請した政策金融公庫からは、つい先日、ようやく返答が来たところだが、手続きをして入金されるまでには「もうあとひと月かかるのでは」と肩を落とす。
新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、日本全体が長期にわたる自粛や自宅待機を余儀なくされ、その影響は周知の通り、社会の様々なところに及んでいる。
そして今も、人間にとって新たなる感染症との戦いは予断を許さない状況にあり、「小さな動物の命を守りたい」と願う人々の活動にもこのウイルスは容赦なくにじり寄り、飲み込もうとしている。
『ねこたまご』は現在、76匹の猫を保護している。
猫カフェには9匹、店舗2階のシェルターに11匹いて、まだ新しい家庭に渡すことのできない弱った子など56匹を「預かりボランティア」という家庭で面倒を見てもらっている。
活動は順調で、特に春先は猫の繁殖期であるため多くの子猫が保護されることもあり、またいつも通り忙しくなる。
そう思っていた。
そう、いつも通り… ところが、北海道では全国に先駆けて2月に緊急事態が発令され、状況は一変。
猫カフェに来る人もいなくなり、団体の運営資金の大半を占める寄付金も大幅に減った。
「もともとカフェに来て手渡しで寄付をしてくれる人も多かったし、外出を控えて銀行に行かなくなった人も多いからなのではないか」と後藤さんは推測する。
2月から徐々に収入は減り、4月は前年比4割減にもなろうかと危惧する。
さらに、収入が減っただけではなく負担も増えた。
保護した猫の治療費は、本来は里親に負担してもらうことで医療費循環をしてきたが、今は里親を探せないので治療費も団体がまるまる負担しなくてはならない状態が続いている。
北海道は他県より長い自粛が続くため、その影響はより重い。
「猫を飼うのは『不要不急』じゃないですから。もう少し経ってからと皆さんが思われるのも無理はないのですが…」と焦りがにじむ。
ごくごく普通の主婦だったという後藤さんが、もう1人のママ友とこの活動を始めたのは9年前。
札幌動物管理センターで、年間1500匹もの猫(大半は産まれて間もない子猫)が、収容されたその日のうちに殺処分されていると知ったことがきっかけだった。
「とにかく小さな命を助けたい」という気持ちで広がっていった後藤さんらの活動は、着実に実を結んでいった。
札幌市ではその後、動物の命に対する意識の高まりとともにボランティア登録制度ができて殺処分の頭数は年々減っていった。
2016年度からの3年間は、治癒の見込みのない猫1匹の安楽死を除いてはゼロとなった。
「せっかくここまでもってきたのに」 と後藤さんは悔しそうに唇を噛む。
2019年度は174匹の小さな命を救った。
特に病気やケガをした乳飲み子など、その日にも救い出さなければ生きていけない命は待ったなしだ。
今のところはまだ、ボランティアや支援者の力を借りて、行政に収容されている猫たちのレスキューはできているというが、それもそんなに長くは続けられないだろうと言う。
「譲渡ができないと、あたらしく保護して受け入れてあげることができなくなります。運営資金と飼育できる頭数を調整しないと破綻します。私たちが多頭飼育崩壊になってしまっては元も子もないですから。カフェやシェルターを閉めて、活動形態を縮小するという選択肢も視野に入れ始めました」
次こそは温かい家庭を。
その一心で里親には必ず面会をしてきた。
また、託す日は里親の自宅 まで送り届けて確認をしてきた。
しかし、感染症との闘いの中ではそれもなかなか叶わない。
「とにかく支援策の手続きを簡単、簡略化してほしいです。様々な支援策はあるのですが、 わかりづらいし、集めなくてはならない資料はとても短時間でできるものではない。そして、それを頑張ってやったところでいつになるかわからない。公庫の融資も入金はあとひと月かかるのでしょうか…致し方ないところもあるのは理解できますが、こうしている間に体力がもたなくなってしまうところが、うちも含めて多いのかなと思います」

◆感染者のペット預かりの依頼も
全国で唯一、いまだに陽性者が報告されていない岩手県(5月14日現在)で活動する『動物いのちの会いわて』の下机さん。
彼女のもとへ、他県で新型コロナウィルス患者の治療にあたる医師から電話がかかってきた。
「陽性になったひとり暮らしの患者さんが猫を飼っていらして、家を出る時に2週間分の餌と水を置いてきたんだそうです。でもまだ陽性で、あと2週間、今度は軽症者施設にいなくてはならなくなってしまい、困った患者さんから相談を受けたお医者さまがうちに連絡をくれたんです」
聞けば、その家には10匹もの猫がいるという。
下机さんは頭を抱えた。
「東日本大震災の時は、私たちは福島にもレスキューに行きました。でも今回は感染症ですから、簡単には行けません。もうダメかもしれないと危ぶみましたが、結局、現地の保健所に相談して患者さんの家の消毒をしてもらってから現地のボランティアと連絡を取り合い、餌と水をあと2週間分置いてきてもらいました。猫たちは、今回はなんとか生きていました」
しかし、と下机さんは言う。
「こういうことが、これからはどんどん増えてくると思います」。
確かに、ひとり暮らしでペットを飼っている人は多い。
現在のところ感染者のいない岩手県でも、感染者が出た時のための医療従事者の要請リストに入っている人たちから、ペットを預かってほしいという依頼もきているという。
『動物いのちの会いわて』では、本来こういった預かり事業はしていないが、家族がいない場合に限り引き受けているという。
「安心して働いていただくために、私たちが今できることをやらせていただきます」と語る下机さんだが、寄付や寄付金が減り続ける中で月々300万円かかる維持費用を今後どうするのか、頭を抱えている。
下机さんの団体は、猫180匹と犬30匹を施設で保護している。
9人のスタッフで世話をするのが精いっぱい。
そんな中で自分たちが感染してしまうことが、今一番恐ろしいことだという。
「もしそうなったら別のもう1組、ボランティアを募ってやってもらうしかないです。でも、施設が汚染されているので消毒をしたとしても完全にされているかどうか。次に入るボランティアさんの安全を守れるかどうか、計り知れない不安が毎日あります。ですから今は、最低限の活動に制限してやっています。新しいボランティアの申し出があったとしてもお断りしている状況なんです」
現状ではもう保護できるキャパシティはないのだが、保健所からは、いつもと変わらず引き取りはできないだろうかと依頼が来るという。
確かに例年、『動物いのちの会いわて』で引き取る年間300から400匹のうちの半分は行政からで、この施設を当てにするのも無理はないだろう。
また、この頃は保健所も様子が変わって、慣れない技術員から「また入ったんです…」と相談があるという。
ただでさえ少ない保健所の職員が、どんどんコロナ対応に派遣されていて、動物保護の現場がとても手薄になっているようだと下机さんは指摘する。
保健所の現場も混乱を隠せないのだ。
「私たちはすべての生き物を同じ命として扱っています。すべての生き物に、感染も含めて直接コロナは関わってきていると感じます」
穏やかだった下机さんがにわかに厳しい表情に変わる。
「自分の行動が人はもちろん、動物すべての『命』にかかわるので、ぜひルールを守った日常生活をすることをお願いしたいです。そして、一度迎え入れた動物は、最後まで自分の家族として見守ってほしい」
新型コロナウイルスに翻弄される小さな動物たちの命。
動物保護の活動にも大きな影を落としている。
コロナ禍の影響で金銭的に苦しくなり、もしかしたら動物を捨てる人や飼育放棄が増えるかもしれない。
そしてこのまま動物の保護が進まない状況が続けば、殺処分の数が増える可能性は十分にあるだろう。
何十年も動物の保護活動を続けている下机さんの最後に言った言葉が、胸に刺さっている。
「これは試練なのでしょうか。早く収束してほしいです」



【執筆:フジテレビアナウンサー 島田彩夏】

【画像】傷を負い保護された猫たち・・・そして猫180匹を保護しているシェルターの様子は


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