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新型肺炎禍の中国、人間に翻弄されるペットの悲劇

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新型肺炎禍の中国で「猫ブーム」の理由、人間に翻弄されるペットの悲劇

2020年2月14日(金) DIAMOND

新型肺炎で厳戒態勢の中国では、「感染を拡大する」というデマが流れて猫や犬が虐殺されたり、逆に「猫を飼うと感染しない」という誤った情報が広がったりしている。
中国のSNSやインターネットでは、ペットについてどんな情報が飛び交っているのか。
(日中福祉プランニング代表 王 青)


新型肺炎が猛威を振るう中国では、猫や犬までもが影響を受けている。その実態とは… 写真:新華社/アフロ

・誤った情報やデマで 殺される猫や犬たち
中国では新型コロナウイルス肺炎の感染拡大が続き、終息が見えない。
政府が外出禁止などの厳しい規制措置を取り、国や専門家が「自宅にいるのが自分の安全のためだけではなく、国への協力である」「国民の皆さんは自宅にいるが、この行為自身がウイルスとの戦いだ、皆さんが立派な戦士だ」などと呼びかけている。
マスク不足が深刻化している中で、1回の外出で1枚のマスクを使ってしまうので、節約するためにも外出しないのが一番の得策であると皆が思っている。
1月25日の春節から、もうすでに2週間がたつ。
人々は自宅に閉じこもり、外の世界とつながるにはSNSしかない。
先が見えない中で不安と恐怖は増す一方だ。
いやおうなく情報には非常に敏感になる。
どんなささいな情報でも反応して飛びつき、混乱してしまう。
デマか、真実かがすぐに分別できないことも多い。
武漢政府は初期の情報隠蔽や対応の遅れで、ウイルスを封じ込むタイミングを逃し、今日までに世界へ拡がる事態に発展させてしまった。
人々が家で軟禁状態を強いられ、翻弄される状況陥らせたのだ。
ところが、振り回されているのは人間だけではなかった。
今度はパニックになった人間が、もっと弱い立場のペット(愛玩動物)たちに、悲劇を引き起こしてしまったのだ。
約2週間前、こんな情報がSNSで流された。
「猫や犬はウイルスに感染しやすく、新型コロナウイルスを伝播する恐れがある」というものだった。
これは、最初にある専門家が、「ペットを飼っている家庭はペットもきちんと管理をして、ウイルスに触れないように注意してください」とテレビで話した内容が、上述のデマ情報に「変換」されてしまったのだった。
すぐさま各地で猫や犬を死に追いやる行為が発生した。
マンションの上から投げ捨てられたり、生き埋めにされたりして、多数の猫と犬がデマの犠牲になった。
その多くは、政府の社区(町内会に相当)の居民委員会により処分された。
理由を問われても、「この非常時に必要な措置であり、理解してほしい」というばかりだった。

・行政担当者に 生き埋めにされた猫
SNS上では、例えばこんな話がある。
あるマンションの住民が「明け方4時ごろに、ドンという音が聞こえて、誰かの車のタイヤがパンクしたかと思ったら、よく見たら猫が地面に倒れていた」という。
誰かが猫をマンションの上から投げ捨てたのだ。
またある人は、仕事の関係上、自分が新型コロナウイルスに感染しているかどうかの検査を受ける必要があり、数日間自宅を留守することになった。
家を出る時に、自宅を管轄する行政の担当者に、「猫はベランダに隔離している。預かってくれる友人がのちほど連れていくので…」とわざわざ告げて家を出た。
ところが、行政担当者は「家を消毒する」という理由で家に入り、猫を連れ出して生き埋めにしたのである。
数日後、飼い主は帰宅すると、猫がいないことに気がついた。
飼い主は行政担当者を問い詰めた。
「処分した」
「どういうふうに処分したのか?」
「そこの空き地に深く埋めた」
あまりの衝撃に、返す言葉さえなかったという。
飼い主は、行政担当者とのウィーチャット(中国のSNSの一つ)でのやりとりを世間に公開し、今後、裁判を起こす予定だという。
この話は一例に過ぎない。
猫や犬への迫害があちこちで起こり、遺棄、毒殺、生き埋め、投げ殺すなど、残酷極まりない行為が横行した。
まるで大虐殺のように…。
北京の住宅地で犬を散歩させていた女性は、「敷地内にたくさん遺棄された猫と犬がいた」と証言した。
猫や犬たちの無残な姿の写真がネット上では拡散され、愛猫家、愛犬家だけでなく、多くの一般市民らも怒りを爆発させ、炎上状態となった。
「これが人間のやることか?畜生以下だ!」
「体の震えが止まらない…、言葉が出ない…」
「生きる資格がない、死刑だ!」
「胸が裂けるほど痛い、涙が止まらない!」
「恐ろしい!動物に何の罪があるのだ?」
「どうしてこんなことができるの?まるで地獄だ!」
やがてWHOや、中国中央テレビ、人民日報などの大手マスコミが「犬と猫がウイルスを媒介するという根拠はない」とはっきり表明した。
動物愛護団体も早速声明を出し、「動物を保護しましょう」との署名運動を開始した。
SNSでは、これを支持する人々のコメントで埋め尽くされた。
ボランティア団体も猫と犬の救出に乗り出し、遺棄された猫と犬の写真を公開した。
ボランティアの人に抱かれた猫の恐怖におびえる目つき、その弱々しい姿に多くの人が涙を流した。

・虐待から一転 猫を飼い始める人が急増した理由
それからわずか数日後、先日起こったことと真逆の情報が再び拡散された。
これは「武漢にいる約5000人の猫愛好者グループ内には、新型コロナウイルスの感染者が1人もいない」というものだ(真偽は不明である)。どうやらこの話は、猫の虐殺を懸念した猫愛好者グループの人が「実際に、猫を飼っている自分たちは感染していない」という旨の発言をしたことが、「猫を飼えば、新型コロナウイルスに感染しない」という話にすり替わってしまったようだ。
すると、すぐさま猫を飼い出す人が出始めた。
ペットショップの猫は1匹残らず、瞬く間に売れ切ってしまった。
至るところで猫を探し、奪い合う現象が起こった。
これまで見向きもされなかった捨て猫、野良猫、外見が醜い猫さえも拾われ、飼われ始めたのだ。
マスクと同様、猫もたちまち入手困難なものになってしまった。
何と身勝手なことなのだろう。
こうした感染予防のために飼われた猫について、愛猫家からは早々に「感染の騒動が収まったら、再び捨てられるのではないか」との懸念の声が上がっている。
ここで一つお断りしておきたい。
このような記事を書くと、日本の読者からは決まって「中国人は民度が低い」「野蛮だ」という中国批判の声が上がり、中国人からは「中国の恥をさらすな」と非難されることもある。
状況を冷静に見れば、それほど現地は正確な情報に乏しく、人々は不安な日々を過ごしているということの証左でもあろう。
日本のような感染の心配がさほどなく、正確な情報が得られる場所であればこそ、人間は正常な判断ができるのだ。
私があえてこのような記事を書くのも、正確な情報を世間に伝えたいからだ。
確かにペットに対する責任感や倫理観については、中国は日本や欧米に比べると、明らかに希薄といえる。
実際、中国では引っ越すとなると、飼っていた犬や猫をそのまま置き去りにしてしまうケースも多く、捨て犬、捨て猫は珍しくない存在だ。
もっとも、日本の友人らに聞くと、日本が現在のようなペット先進国になったのは、「つい最近のこと」だという。
ペット問題に詳しい日本の知人が言うには、「1973年に動物愛護法(動物の愛護及び管理に関する法律)が制定される以前は、日本も中国と似たようなもので、捨て犬や捨て猫、殺処分されるペットが非常に多かった」という。
また、その知人は「現在も一部のペットショップでは、売れ残りの犬や猫が闇の引き取り業者によって処分される問題などもあり、欧米に比べれば、殺処分される個体も多く、まだまだペット後進国だ」と主張している。
脱線してしまったが、ここで話を戻そう。

・ウイルスより 人間のほうが恐ろしい
今回、中国で猫や犬への虐待は、なぜ、起きたのか。
前述した通り、言うまでもなくデマやパニックにより、人々が理性や正常な思考力、判断力を失っているからだ。
恐怖心から、人はちょっとのことで暴走しやすくなっているのだ。
先進国で倫理的であるはずの欧米で発生した「マスクを付けたアジア人女性に対する暴力」や「アジア人差別」なども、その一例といえるだろう。
猫や犬の犠牲は、新型肺炎パニックの象徴なのである。
現在、中国各地の政府が自分の管轄区域に感染を広げないように必死になっている。
どんな手段を講じてでもウイルスを閉じ込めようとするあまり、過剰ともいえる措置を取っている。
各地の行政担当者は責務を果たしているわけだが、同時に自己保身と、上層部への「忖度」のためでもある。
こうした過剰な状況が常態化することで、常識が麻痺していくことが恐ろしい。
そもそも非常時には、人間よりも、動物が真っ先に理不尽な被害者となるのが世の常だ。
普段は「ペットは家族の一員」とは言うものの、いざという時は、人間が最優先される(かつて私が涙を流しながら見た、高倉健主演の映画『南極物語』のタロとジロも、一種の緊急時の被害者であろう)。
人々も自己中心的となる。
今回の新型コロナウイルス肺炎は、前回のSARSのときと同様に、野生動物に由来するのではないかと疑われている。
この一連の騒動は「人間の身勝手な行為により生じたもので、大自然から人間への復讐かもしれない」との声さえある。
「ウイルスより人間の心の闇のほうが恐ろしい。動物の悲劇から人間の汚い部分が見えてきた」と、中国のSNSは、このような嘆きであふれている。
今後、中国では、事実や情報の開示が求められ、デマやパニックに陥らないように、冷静に事態に対峙することが重要であろう。

・主人や家族を待つ 約5000匹のペットたち
現在、武漢では約5000匹のペットが「留守番」状態にあると伝えられている。
春節で多くの人が故郷に帰ったまま、自宅に戻れないからだ。
中には飼い主が新型肺炎にかかり、入院したまま帰れないというケースもある。
これらのペットの世話は、ボランティア団体により行われている。
それでも、きちんと世話ができているのは全体の20%にも満たないといわれているようだ。
現状は人間の治療や世話を優先せざるをない状況だが、自宅に残されたままのペットたちはどうなるのだろうか…。
自宅で留守番し続ける多くのペットたちが、無事に主人や家族らと再会できる日を願ってやまない。

王 青


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