ペット入れず、車中泊も 長野市、台風避難所の大半
2019年12月7日(土) 中日新聞
台風19号で広い範囲で浸水被害に見舞われた長野市では、ペットとともに避難所に駆け込んだ被災者も少なくなかった。
環境省のガイドラインはペットとの同行避難を推奨しているが、多くの避難所はペットを受け入れることができず、車中泊などを選択した被災者もいた。
市は今回の台風災害を受け、ペットの受け入れや居場所などを明確にするように避難所マニュアルを見直す方針だ。
自宅が被災したため一時、車内で過ごすポム。長野市は避難所マニュアルを見直す方針だ=11月10日、長野市の豊野西小で
自宅が床上浸水し、母親(67)、妹と避難所になった豊野西小学校に身を寄せた男性(43)は一カ月余り、同小の校庭に置いた車の中でポメラニアンの「ポム」(雄、七歳)と寝泊まりした。
夜間はエンジンを止め、気温が10度以下に冷え込んだ夜も毛布で寒さをしのいだ。
この避難所は、多くの避難者で埋まってペットを受け入れることができず、男性もポムがほえるなどして他の避難者に迷惑になるのではないかとも気になった。
「この子も家族だから。本来は飼い主と一緒に避難所に入れるなら、それが一番いい」と話した。
同省は、東日本大震災でペットがいるために自宅にとどまり、津波にのまれるなどの被害が発生したことから、2013年、ペットとの同行避難を原則とするガイドラインを作った。
ただ、災害発生当初の避難行動を規定し、避難所での具体的な対応は各自治体に委ねられているのが現状だ。
市保健所によると、今回の台風災害で避難所になった最大54カ所のうち、ペットと一緒に寝泊まりができたのは北部スポーツ・レクリエーションパークと長野運動公園の2カ所のみ。
同パークでは、最も多かったときはペットの犬10匹ほどを受け入れ、同伴の家族は端のまとまったスペースで居住してもらうなどの工夫をした。
しかし、他の避難者から鳴き声などが気になるとの声が上がり、避難所脇の屋外に犬専用のコンテナを置いて対応したという。
現在の避難所マニュアルは、屋外にペット専用のスペース確保との記載があるものの、多くの避難所は規模に余裕がなかったり、動物アレルギーを心配したりしたことを理由にペットを受け入れることができなかった。
このため、ペットがいる家庭の中には浸水を免れた自宅の二階での生活や、避難をためらって自宅に残る人もあったとされる。
市保健所は今回、被災者のペットをボランティアが預かる「一時預かり」の仕組みを設けて利用を呼び掛け、6日現在では猫11匹が利用している。
担当者は「ペットは家族同然で、最近は室内で暮らすことも多い」と話し、ペットに関する避難所のマニュアルを充実していく考えだ。
(伊勢村優樹、安永陽祐)