福島県内避難所でペットの飼い主苦悩 「同行避難」整備進まず
2019年11月7日(木) 河北新報
台風19号に伴い浸水した福島県内の各被災地で、ペットを飼う被災者から避難生活の難しさを嘆く声が上がっている。
県内ではペットの受け入れを認める避難所がなく、県動物愛護センター(三春町)は課題として飼い主がペットと一緒に避難できる「同行避難」の仕組み作りを挙げる。
災害発生時、ケージの貸し出しやえさの提供などに当たる福島県動物愛護センター
■「家族も同然」
中心部の広範囲が水に漬かった本宮市。
10歳の柴犬と暮らす無職男性(77)は10月12日夜、家族を避難所に行かせ、自分は1階部分が浸水した自宅の2階にペットと避難。
翌日、自衛隊のボートで救出された。
「避難所にペットは連れて行けないと考え、自宅に残った。家族同然の犬を置き去りにするという選択肢はなかった」と男性は振り返る。
毎晩、ペットを自宅に残して避難所に戻る生活を2週間以上続ける。
飼い主と半日近く離れ離れで過ごし、犬は日を追うごとに元気がなくなっているという。
男性は「緊急事態だからぜいたくは言えないが、ペットを飼う人が安心して生活できる避難所を造ってほしい」と願う。
同様に1階部分が浸水被害を受けた市内のパート従業員女性(54)は、13日早朝に2階からミニチュアダックスフント2匹とボートで救出された。
近くの避難所に身を寄せた夜、他の避難者から「鳴き声がうるさい。出て行ってくれ」と言われ、自宅に引き返した。
女性は「避難所にペットが入れないということは分かっていた。飼い主として災害への備えが足りなかったのかもしれない」と諦め気味に語った。
■受け入れゼロ
県によると、今回の台風でペットの受け入れを認めている避難所はゼロ。
同行避難を希望する被災者がいた場合、受け入れるかどうかは市町村が開設する各避難所の判断に任せている。
県動物愛護センターでは今回、県中部の被災地で迷い犬となっていた4匹を保護。
ケージの貸し出しなどを要望する被災者からの相談が20件以上寄せられた。
ほかにペットの一時預かりを求める声もあったが、捨て犬や捨て猫の保護が本来の役割であるセンターで預かるのは、感染症予防の面からも難しいという。
ペットの置き去りは東京電力福島第1原発事故でも大きな問題になった。
大越憲幸所長は「地域住民の理解の醸成も含め、次の災害に備えて同行避難が可能な態勢の構築を急がなければならない」と話す。