松本秀樹さん 飼育放棄0とペットと避難できる環境を目指す
2019年10月28日(月) 日刊ゲンダイ
【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】
犬と全国を旅するバラエティー「ポチたま」シリーズでおなじみの松本秀樹さん(44)。
犬大好きのあまり、人が犬を捨てない社会を目指し、東日本大震災の直後は犬も避難できるように署名を集めたりと、犬のためになる活動を続けている。
死ぬまでに見たい光景は犬が普通に電車に乗る日本!
タレントの松本秀樹さん(C)浅井企画
■犬・猫36万頭殺処分を知ってショックを受けた
番組では犬を探して全国を犬と歩く毎日でした。
初代のポチたまの「まさお君」のことを好きになり過ぎて、犬のことを知るために犬の資格を取得してみたんです。
資格を持っている方や犬のプロの方に知り合いができると、ペットのビジネスには犬に犠牲を強いているところもあると聞きました。
当時ではおよそ36万頭もの犬・猫が殺処分されていることも知って。
1日1000頭です。
かなりショックでした……。
犬と仕事をさせてもらってる僕としては「なんとかしなきゃいかん!」と思い、動物の資格をいろいろと取り、本格的に活動を始めました。
それは「飼育放棄」をなくすこと。
犬を飼った人たちが途中で「この犬、捨てる」と考えないように人間づくりをしたい。
捨てられた犬を欲しい人に譲渡する活動ではなく、僕は捨てる人を減らす側に回った。
殺処分ゼロとよく言われますけど、僕のゴールは飼育放棄ゼロ。
12年前に一般社団法人を立ち上げました。
5年前からは文科省と環境省に後援についていただき、全国の小学校を回り、子供たちにペットについてレクチャーしてます。
大人の意識を変えるのはなかなか難しいから子供たちが15年後にペットを飼った時、捨てようっていう気持ちが湧かないように。
いろいろな活動の中でよく覚えているのは東日本大震災の後のこと。
避難所にペットを連れていくと「犬は入れません」と追い返されるケースが多いと聞きました。
今は4世帯に1世帯はペットを飼っているから、「避難所の4分の1のスペースを犬と猫に与えるか、避難所の4施設のうち1つをペットと避難できるようにしてください」という署名を集めたいと考えた。
「最低1万人集めないと効果がないよ」と言われました。
ブログなどで「みんなお願い、署名集めて!」と呼びかけたら、手書きで住所まで書いて、はんこも押してもらう署名なのに60万人の署名が集まったんです!
個人で活動されてる方やいろんな方たちがかけずり回って集めてくれた。
驚いたのは犬・猫を飼ってない人も犬アレルギーの人も署名してくれた。
「人と犬の居場所をきっちり分けてくれるならいいよ」と。
そんな活動が実り、13年に環境省から出たガイドラインには「災害が起きた時はペットを連れて逃げるように」という内容があります。
その後、犬のイベントに行くと「私、あの時に署名を集めました」と話しかけてくれる方もいて、うれしいですね!
■犬が普通に電車に乗る日
今後、日本から災害がなくなることはありませんから、死ぬまでにやりたいことは飼育放棄ゼロと、災害時もペットとともに避難できる環境づくりですね。
それから公共交通機関に当たり前のように犬が乗られるような、犬と人の両方のマナーづくりもしたい。
日本は盲導犬が電車に乗ると「わ、大きな犬がきた」と場の空気が変わるけど、欧米では飼い犬と一緒に地下鉄に乗れる地域があります。
「ポチたま」の米国ロケで、ボストンで乗った地下鉄では犬をまたいで降りてくれた(笑い)。
こうなるとステキだな、と。
アメリカの犬と日本の犬が違うなら諦めますけど、犬はどこも同じで、違うのは人間なんですよ。
死ぬまでに日本でもそんな景色を見てみたい。
生きてるうちに日本がそうなるには40代の今から死ぬ気でがんばらなきゃと思います。
(聞き手=松野大介)
▽まつもと・ひでき
1974年11月、大阪府生まれ。93年から芸人活動。2000年に開始した「ペット大集合!ポチたま」(テレビ東京系)での旅犬と全国を回るリポートが大人気になり、番組は約20年に及ぶ。動物に関した資格を多数取得し、「松本秀樹のNatural Dog Style」も主宰。動物愛護の活動を続けている。
Natural Dog Style(NDS)
http://www.n-d-s.tv/index.html
CONCEPTNDSとは