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犬・猫の大量廃棄や遺棄が横行

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犬・猫の大量廃棄や遺棄が横行
 ペット産業の発展が生み出した“闇”を消すには 

2019年10月10日(木) 週刊女性PRIME


※写真はイメージです

今年6月、動物愛護法が改正された。
背景には、空前のペットブームの中で顕在化した過剰繁殖や飼育放棄、動物虐待などの問題があった。
はたして、法改正によってペットと人間の関係はどう変わるのか。
ペット流通の問題に詳しい朝日新聞の記者、太田匡彦さんに寄稿してもらった。

               ◆   ◆   ◆

ペットブームの裏にある悲しい現実
昭和の終わりごろ、犬の推計飼育数は686万頭(1987年、ペットフード協会調べ)でした。
平成に入ると一気に増え、ピークの2008年には1310万頭に達しました。
犬猫あわせた推計飼育数は'03年に15歳未満の子どもを逆転し、いまや計1855万頭にのぼっています。
この間に、まず犬が拾ったりもらったりする外飼いの番犬から、ペットショップで買って室内でともに暮らす「家族」へと、位置づけを変えました。
近年は猫も、完全室内飼育が推奨されるようになって日々の暮らしの中により浸透し、家族の一員としての存在感を高めています。
周辺ビジネスも発展しました。
ペットにかける獣医療費は増え、エサは残飯からペットフードにかわり、ペットシッターやペット霊園など新たなサービスも登場しています。
ペット関連総市場で見ると、1兆5193億円('17年度、矢野経済研究所調べ)という規模の産業になっています。
ただ、産業としての発展は同時に、「闇」も生み出しました。
犬猫などのペットがこれだけ増え、身近な存在になれたのは、ここ30、40年でいまの形、規模にまで成長したペットショップチェーン(生体の流通・小売業)を中心とする生体ビジネスの存在があればこそです。
このビジネスは、生産設備として繁殖用の犬猫を大量に抱え、工業製品のように子犬・子猫を量産し、競り市(ペットオークション)を介して全国に流通させ、街中や商業施設にある小売店で大量に販売する──という構造になっています。
その過程で、繁殖能力が衰え不要になった繁殖用の犬猫や、売れ残った子犬・子猫が不幸な運命をたどります。
以前は、そうした犬猫が数多く自治体に持ち込まれ、殺処分されていました。
業者からの持ち込みを自治体が拒否できるようになった'13年9月以降は、全国で大量遺棄事件が相次ぎました。
このような状況について'15年11月、「ジャパンケネルクラブ」の永村武美理事長(当時)は、あるシンポジウムでこんな発言をしています。
「急激に規制強化が行われると大量遺棄、廃棄ということが必然的に起こってくる。ブリーディングができなくなっても、それを保健所で引き取ってもらえなくなった。どうしたらいいのか、もう知恵の出しどころがなくて、大量廃棄、遺棄をすることになる」

法改正で犬猫の動物福祉が向上
さらに、繁殖から小売りまでの流通過程で死んでいる犬猫が毎年、少なくとも約2万4千頭いることも、朝日新聞の調査でわかっています。
第1種動物取扱業者にかかわる事務を所管する全国の都道府県、政令指定都市、中核市に調査し、判明したものです。
'17年度も、少なくとも、犬で1万8792頭、猫で5679頭が死んでいました。
このような状況を改善しようと行われたのが、今年の動物愛護法改正です。
超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」が中心になって改正案をまとめ、業者への規制は大幅に強化されました。
生後56日以下の子犬・子猫の販売を禁じる8週齢規制がようやく実現し、さらには、飼育施設の広さや従業員1人あたりの上限飼育数を、環境省令によって具体的な数値で規制する制度が導入されます。
'21年6月(予定)に施行されるこの2つの規制により、繁殖用の犬猫、販売用の子犬・子猫の心身の健康を効果的に守れるようになり、悪質業者の淘汰も進むと期待されています。
ただ8週齢規制に関して、日本犬6種(柴犬、紀州犬、四国犬、甲斐犬、北海道犬、秋田犬)については、繁殖業者が一般の飼い主に直接販売する場合、適用対象外となりました。
「日本犬保存会」(会長=岸信夫衆院議員)と「秋田犬保存会」(会長=遠藤敬衆院議員)が、8週齢規制に強く反対したためです。
また数値規制について、具体的な数値は環境省の省令に委ねられ、同省は来春ごろまでをめどに、骨子案をまとめる予定になっています。
本当に実効性ある規制になるかどうかは、環境省がどのような数値を盛り込むかにかかっています。
ほかにも、消費者トラブルにつながりやすい、インターネット販売や移動販売への規制も強化。
繁殖用の犬猫や販売用の犬猫の遺棄防止などを狙って、マイクロチップの装着が繁殖業者に義務づけられます。
一般の飼い主についても、社会問題化している「多頭飼育崩壊」を念頭に置いた規制強化などが行われます。
今回の法改正は、生体ビジネスにかかわる犬猫の動物福祉を向上させるという意味では、大きく前進したといえます。
今後は、この法律の内容と趣旨を自治体、業者、そして私たち一般の飼い主がしっかりと理解し、適切に運用していけるかどうかが試されます。
その先には、日本で暮らす犬猫などペットたちをおおう「闇」が取り払われた社会が、実現できるはずです。

寄稿者・太田匡彦さん
◎朝日新聞経済部記者として流通業界などを取材。現在は特別報道部記者に。著書に『犬を殺すのは誰か ペット流通の闇』(朝日新聞出版)など


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