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犬猫の熱中症対策、5つの間違い

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犬と猫の熱中症対策|屋外よりも室内が要注意!飼い主が犯す5つの大間違い 

2019年7月7日(日) サライ

取材・文/柿川鮎子 撮影/木村圭司

夏本番を前に、ペットの熱中症対策に関して、飼い主さんが犯しがちな5つの間違いを、ひびき動物病院院長岡田響さんに教えていただきました。
犬や猫を大切に飼育し、可愛がっている人であっても、意外と誤解されているケースの多いものばかりです。


犬と猫の熱中症対策

■間違いその1 犬や猫は暑さに強い動物だと思っている
ほとんどの生き物は、寒さよりも暑さに弱い身体の仕組みをもっています。
特に犬や猫は全身を毛皮で覆われており、さらに人間とは違って大量に汗をかいて放熱することができないため、熱が体内に蓄積されやすくなります。
人間ならば、夏でも毛皮を着ている感覚です。
ただでさえ体温上昇しやすい一方、下げるのも大変です。
体温を下げるためには、呼吸で熱い息を外に出したり、冷たい場所への熱伝導など、汗以外の方法で放熱する必要があります。
さらに、人間よりも生活する場所が低く、より地面に近い位置にいます。
真夏の直射日光を浴びて、熱い地面からの反射熱にさらされ、人間より熱の影響をより強く受けます。
岡田先生は「飼い主さんは何となく『犬や猫は人より暑さに強い動物だ』と思っていらっしゃるようですが、そんなことはありません。ペットは人より暑さに弱いものだ、という認識をもっていただきたい」と言います。 

■間違いその2 熱中症は屋外にいる時だけ注意する
熱中症は保険請求の件数も多い事例なのでしょう。
ペット保険会社各社のホームページには、熱中症についての調査報告が掲載されています。
興味深いのは、熱中症が発生した場所について。
アニコムの調査では、リビング:ドッグラン:その他=44:48:8、という割合でした。
アイペットやアクサダイレクトの調査では、熱中症の発生が、1位)家の中で普通に過ごしている時、2位)家の中で留守番中、3位)お散歩中、です。
熱中症が自宅の室内で発生している事例は想像以上に多いのです。
調査している年で多少の増減はありますが、だいたい6割近くが室内で熱中症を発症させています。
さらにそのうちの6割は、家族も家にいた時に発症してしまうのです。
間違いその1でも説明しましたが、人が平気な暑さであっても、ペットにとっては危険な場合もある、ということなのです。
岡田先生は「暑い日の屋外での運動は、緊急性が高い熱中症の危険因子となります。家でも外でも、厳しい暑さの日は、ペットの熱中症に気を付けるべきです」と教えてくれました。


短鼻種と呼ばれる犬種は熱中症になりやすい

■間違いその3 ペットだけの場合、留守中や就寝中はエアコンを切る
飼い主さんが昼間、仕事や用事で留守にする時は、室内のエアコンを消すことも多いはず。
また、夜間もエアコンなしで就寝する人は多いのですが、スイッチを切れば室内の温度は上昇します。
とはいえ、エアコンの冷気が直接ペットの体に当たる場所に長時間いるのも、問題です。
冷え過ぎにも注意しましょう。
「真夏日など30度を超える日は、ペットがいる部屋はエアコンをつけてください。風通しの良い室内が理想ですが、防犯上、窓を開けっぱなしにしておくこともできません。今年もすでに5月の運動会で子供たちが熱中症で病院搬送されたという報道が多く、高齢者の熱中症による救急搬送も今月に入って増えてきています。家族がいない時でも、夜でも、猛暑日はエアコンを24時間つけっぱなしにしておく方が安心ですよ」(岡田先生)。
特に高温に注意したいのは、身体の体温調整機能が衰えている高齢の犬や猫。
また、フレンチブルやパグなど鼻の短い種類は暑さの苦手な犬種です。
脂肪に覆われて熱のこもりやすくなっている肥満のペットや、慢性的な病気をかかえている子も、熱中症の危険が高まります。


下痢と嘔吐が熱中症の初期症状の場合も

■間違いその4 熱中症の初期症状は口を開けてハァハァ苦しい息をするだけ
個体にもよりますが、一番多い初期症状は、さまざまな消化器の異常です。
岡田先生によると、「暑い日に吐いたり下痢をする。いつもに比べて調子が悪そうな場合は、軽度であっても熱中症を疑う必要があります」と言います。
最初は『ほんの少し調子が悪い』ぐらいの夏バテ状態でも、その後、真夏日が続くと、最終的には熱中症となってしまいます。
「熱中症というと、舌を出して息をハァハァさせるという印象が強いようですが、そういう状態になった時はすでに症状が進行して、深刻な事態となっているケースが多いのです。高齢なペットほど、熱中症に罹りやすくなってしまいます。人間でも一人暮らしの高齢者は、暑さを感じないでエアコンを切ってしまい、熱中症にかかるケースがあります。ペットも若い頃に比べると、体力面などで様々な許容範囲が狭くなるのではないか、と思います」と岡田先生。
岡田先生の病院でも、12歳の猫が、なんとなく元気がない状態が続いた後、下痢と嘔吐で来院されたそうです。
飼い主さんは、「ここまで元気がないのはとても珍しい」と心配して、数日入院点滴して、元気になって退院されました。
その直後に、入れ替わりのようなタイミングで、同居していた別のもう一頭の高齢猫が同じような下痢と嘔吐で来院されたそうです。
「飼い主さんは、下痢と嘔吐に心配されて、何か悪いものでも食べたかと悩んでいらっしゃいましたが、原因は熱中症が考えられました。そこで詳しくお話しを聞きなおすと、エアコンなしの室内で、長時間、留守番していたことがわかったのです」。
熱中症の初期症状は、『ハアハアあえぐような息をするだけ』と思っている人は、認識を改める必要がありそうです。
特に、猫は普段、ほとんどハァハァしません。猫の荒い呼吸は、別の病気のサインであることの方が多いようです。 


カットで個性を引き出し、より魅力的になる子も

■間違いその5 すべての猫にサマーカットが適している
極寒の中でも屋外で過ごせるように作出された犬種は、上毛と下毛が二重のダブルコート構造で、身体を保温するような機能をもっています。
夏になると下毛は抜けますが、それでも日本の夏の暑さに耐えるのは大変です。
こうした犬の飼い主さんの中にはサマーカットをして、快適に過ごせるようにしている人が多く、体表温度が下がって快適に過ごせるようになっています。
カットは犬の可愛らしさを表現できるファッションであると同時に、夏を快適に過ごす効果もあります。
ちょっと注意した方がいいのは、犬のサマーカットに関しては、短くすると毛質や色が変わったり、毛が生えにくくなる子がいるそうなので、動物病院やトリマーさんにも相談すると良いと、岡田先生は教えてくれました。


すべての猫がサマーカットで快適になるわけではない

一方で猫のサマーカットですが、米国の調査で、カットが猫に強いストレスを与えているという内容のレポートが出ました。
岡田先生は犬と猫ではサマーカットに対して、根本的に異なる考え方でアプローチするべきだと、飼い主さんにアドバイスしています。
「猫の場合、基本的に嫌がると攻撃的になってしまうため、おとなしくトリミングさせてくれる子は、ほとんどいません。多くの場合は短時間の鎮静麻酔が必要です。鎮静麻酔をするには、健康状態が良くなければ危険です。事前に健康診断や検査が必要になるケースもあるでしょう。その猫がサマーカットできる身体と心(ストレス耐性)をもっているかが大切で、個体によって、事前の検査など、やるべきことにかなり幅が出てしまいます。犬に比べると猫のカットに費用がかかるのはそのためです。当院では、毛玉症の腸閉塞で手術経験がある子など、病気予防的な観点から、1年に数回程度、毛を刈っている子がいます。熱中症対策としてカットを選択する前に、ホームドクターと相談して、納得した上で行う方が良いでしょう。もちろん、カットして問題が無い子もたくさんいます」(岡田先生)。
「熱中症は命の危険を伴います。体が熱くなって脱水し、血液がドロドロになり、短時間で多臓器不全へまっしぐら、という大変危険で怖いものなのです。死に至る怖い病気のひとつと考え、暑さ対策をしてください。今年の夏も厳しい暑さが予想されていますが、暑い日中のお散歩は避けて、日差しの弱い早朝や夕方、夜間のお散歩で、熱中症を防ぎましょう。そしてエアコンを効果的に使って、元気に乗り切ってほしいですね」とアドバイスしてくれました。 

取材協力/岡田響さん(ひびき動物病院院長)
神奈川県横浜市磯子区洋光台6丁目2-17 南洋光ビル1F
電話:045-832-0390

文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。

撮影/木村圭司 


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