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年齢考えると、もう犬は飼えない

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年齢考えると、もう犬は飼えない
 「飼うのは命預かること」 

2019年6月19日(水) sippo(朝日新聞)

横浜市に住む主婦、小山ちずるさん(56)は昨年4月、愛犬をがんで亡くしました。
雄の柴犬(しばいぬ)で名前はハル。
10歳3カ月でした。


満開の桜の下を歩く、元気な頃のハル

2008年春、一人娘が大学に進学するのを機に家族で話し合い、犬を迎えることにしたそうです。
飼うのは柴犬と決めていて、近所のペットショップでハルに出会いました。
ハルは散歩が大好き。
小山さんは雨の日も雪の日も、台風が来ても、散歩に出かけました。
好物はリンゴ。
皮をむくサクッという音で気付き、あげるとおいしそうにシャクシャクと音をたてながら食べました。
ところが17年秋、耳の扁平(へんぺい)上皮がんが見つかりました。
あごの骨まで転移していて、手術はできませんでした。
小山さんはそれから1日おきに、弱ったハルを自転車の後ろに乗せるなどして、補液や薬剤投与のために動物病院に通い続けました。
獣医師から「年を越せないかも」と言われていましたが、ハルは翌年4月まで生きました。
18年4月29日夜、小山さんがお風呂から出ると、ハルがはっきり「ワン」と鳴きました。
ヨロヨロと立ち上がってもう一度「ワン」と鳴き、ずるりと倒れ、そのまま息を引き取ったそうです。
去年まではハルと一緒に見ていた桜が、今年もまた咲きました。
その桜の下をひとりで通る時、涙が止まりませんでした。
「ハルと散歩した道を歩いていると、もう一度、犬と生活をしたいと思う時があります。でも私たち夫婦の年齢を考えると、新しい犬を家族に迎えるのはもう無理です」
ハルを飼い始めた時には45歳だった小山さんはいま56歳。
夫は66歳。
犬猫の寿命は、獣医療の発達や栄養バランスに優れたペットフードの普及、室内飼育の推進などにより延びています。
1980年代までは大半の犬が10歳以下で死んでいたというデータがありますが、ペットフード協会の調査によると、18年時点で犬の平均寿命は14.29歳、猫の平均寿命は15.32歳になっています。
小山さんがこれから子犬・子猫を飼えば、その子が最期を迎える頃には70代と80代の夫婦になっています。
また、がんを患ったハルの生涯獣医療費は総額200万円ほどに達したそうです。
それだけの金額を、これから新たに用意できるかどうかもわかりません。
犬や猫をみとるまでの闘病期には、飼い主の体力も必要になります。
いつもハルがくつろいでいた、リビングの南側に面した大きな窓のあたりを見つめながら、小山さんはこう話します。
「ハルにしてあげられたことを、次の犬にしてあげる自信はありません。飼い主が元気でなければ、犬を幸せにしてあげられません。犬を飼うということは、命を預かるということなんです」


ハルとの日々を振り返る小山ちずるさん

飼育放棄の理由「高齢」
およそ1カ月にわたって行った朝日新聞デジタルのアンケートで「犬や猫を飼うにあたり、ためらったり悩んだりすることは何ですか?」と尋ねると、37・7%の人が「自分の年齢(寿命)」をあげていました。
朝日新聞が昨年12月、動物愛護行政を所管する全国の都道府県、政令指定都市、中核市のすべて121自治体を対象に調べたところ、17年度には、少なくとも犬で1299匹(件)、猫で2359匹(件)が「高齢者から、または高齢が原因と見られる理由」で捨てられていました(10自治体は理由未集計。16自治体は件数で回答。4自治体は17年度は引き取り業務無し)。
飼い主の寿命や健康が、犬猫の寿命の延びに対応しきれず、不幸な別れが数多く発生している実態があることが分かります。


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