8週以下の子犬、子猫の販売禁止へ
マイクロチップも義務化 動愛法改正へ合意
2019年5月16日(木) sippo(朝日新聞)
生後74日(左)と生後52日のトイプードル
超党派の「犬猫の殺処分ゼロをめざす動物愛護議員連盟」(会長=尾辻秀久参院議員)がまとめていた動物愛護法の改正案について、各党と大筋で合意に達したことが16日、わかった。
生後56日以下の子犬や子猫の販売を禁じる「8週齢規制」を導入するほか、ペットの繁殖・販売業者の飼育施設や従業員数などに関して環境省令で数値規制を行うよう定めるなど、繁殖業者やペットショップなどへの規制強化が行われることになる。
また、販売される犬猫のトレーサビリティー(繁殖・販売・所有履歴の管理)のため、繁殖業者にマイクロチップの装着を義務づける。
動物愛護法は5年に1度のペースで、議員立法により改正される。
前回は2012年に改正され、13年に改正法が施行されていた。
超党派議連では今国会中の改正を目指しており、来週中にも総会を開き、各党から意見を聞いて大筋合意に達した改正案について、承認を得る見通しだ。
超党派議連は昨年12月に改正案の骨子をまとめ、各党と協議、調整を進めていた。
8週齢規制は、成長後の問題行動を予防したり、免疫力を高めてから出荷することで感染症にかかるリスクを減らしたりするために導入する。
ペット関連の業界団体の一部が強固に反対していたが、欧米先進国の多くで既に導入されているほか、前回の法改正以降に、動物行動学の観点から8週齢以降で親元から引き離すことを推奨する研究や論文が世界各国で多数発表されていることを受け、今回の法改正での実現に踏み切った。
世界小動物獣医師会(WSAVA)が「8~9週齢で1回目のワクチン接種」することで、子犬・子猫の免疫力を高めるよう推奨していることなども、勘案した。
また、劣悪な繁殖業者やペットショップが全国的に社会問題化していたことを受け、業者の飼育施設について広さや構造に関する数値規制を導入するほか、従業員1人あたりの上限飼育数なども設ける。
具体的な数値については、環境省令で定めるようにする。
環境省令は、改正法の公布後2年以内に施行する。
なお8週齢規制は、この環境省令によって繁殖業者の飼育環境の改善をはかるのとタイミングをそろえて施行する方向で調整している。
一方でマイクロチップの装着義務化については、自民党どうぶつ愛護議員連盟(会長=鴨下一郎衆院議員)の強い意向などを受けて盛り込んだ。
トレーサビリティーを目的に、販売する子犬・子猫と繁殖用の成犬・成猫への装着を、繁殖業者に義務づける。
また、捨て犬・捨て猫の防止や大規模災害で飼い主とはぐれた場合の対策などのために、所有者明示の目的で、一般の飼い主や動物愛護団体などにも、装着の努力義務を課す。
義務化にあたっては、登録する情報の精査や情報登録機関の指定などに準備が必要なため、マイクロチップの装着義務に関する事項は、改正法の公布後3年以内の施行となる。
動物殺傷罪の厳罰化もはかる。
現行法では2年以下の懲役または200万円以下の罰金で、動物愛護団体などから、器物損壊罪(3年以下の懲役または30万円以下の罰金)と比べて「罰則が軽すぎる」との指摘が出ていた。
超党派議連と各党との間で「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」または「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」のいずれかで調整を進めている。
(太田匡彦)