人と動物の共生を 女優・杉本彩さんが愛護団体
2014年5月29日 中日新聞
動物の虐待を阻止するために力を尽くしたいと語る、Eva理事長の杉本彩さん=東京都内で
今や子どもの数より多いといわれる日本のペット。
家族の一員として愛される一方、不適切な飼育や遺棄の犠牲になる犬や猫も少なくない。
女優の杉本彩さん(45)は今年二月、一般財団法人「動物環境・福祉協会Eva(エヴァ)」を設立。
人と動物の共生社会の実現に向け、働き掛けを始めた。
国内の犬と猫の推計飼育数は約2062万匹(2013年、ペットフード協会調べ)。
一方、15歳未満の子どもは推計1633万人(総務省)で、過去最低を更新した。
ペットが大きな存在になっている半面、環境省によると、12年度には16万2千匹の犬と猫が殺処分された。
「最終目標は殺処分ゼロですが、飼い主のモラルに訴えるだけでは無理。販売業者のあり方を変えねばならず、法規制なども必要。まずは『アニマルポリス』の設置を呼び掛けたい」と杉本さんは話す。
アニマルポリスは動物虐待や飼育放棄などを扱う機関で、英米などでは法的権限を持つ。
今年一月、兵庫県警が動物虐待事案に対応する初の専門相談電話「アニマルポリス・ホットライン」を設置したが、日本での広がりはまだまだだ。
杉本さんは「動物に関する事柄は自治体が対応するが、問題があっても注意する程度。最近は異常な多頭飼育をする『アニマルホーダー』が問題になったり、劣悪な環境の繁殖場があったりするのに積極介入する機関がなく、警察も動物愛護法を十分理解していないのは問題」と指摘する。
さらに「ひどい環境で犬や猫を“大量生産”するブリーダーがいたり、飼育状況の分からない犬が売買されるオークションがあったり。
行政も流通過程を把握しておらず、対応できないのが現状」と唇をかむ。
ペットショップのショーケースに犬や猫がいる「生体展示販売」も日本ではよく見る光景だが、「先進国からは、ひどい国との印象を持たれる。20年の東京五輪までに絶対になくすべきです」と言う。
また、各地の保健所や動物愛護団体は保護した犬や猫を譲渡している。
大きくなった猫や犬の引き取りを敬遠する人もいるが、「施設を回れば『この子だ』と思える子にきっと出合える。購入する前に、譲渡という方法を考えて」。
自身も東日本大震災の被災地で保護された猫5匹を含め、引き取った猫10匹と犬3匹を飼っている。震災直後から被災地の動物保護施設や個人のボランティアを訪れ、救援物資を渡したり、保護された猫の新たな飼い主探しを手伝ったり。
「被災地から来た猫が出産し、一時は子猫が20匹以上。自宅も会社もシェルターでした」と笑う。
今後は啓発活動やシェルターづくりに加えて、「声を上げる人たちを増やしていきたい」と力を込める。
動物を取り巻く状況は目に見えにくいが「『おかしい』と思ったら声を上げて。人を支え、変える力を持っているペットを大切にしてほしい」。
「動物環境・福祉協会Eva」では、賛助会員を募集している。
詳細はホームページ(団体名で検索)で。
(竹上順子)