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猫虐待、見えざるハンター

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《動物虐待》
鉛弾撃ち込まれ糞尿垂れ流しになる猫も、
見えざる“ハンター”の薄気味悪さ

2019年3月7日(木) 週刊女性PRIME

「平和そうなこの公園の一角で、残虐な犯行が繰り返されているんです。おぞましい犯人がいまも公園内を闊歩していると思うと我慢できない」 と地域猫の個人ボランティアを夫婦で10数年続けている加藤英次さん(64)は憤る。

猫の体内から鉛弾
千葉市美浜区の海沿いに稲毛海浜公園はある。
ヨットハーバーやサイクリングコースのほか各種施設を併設し、面積は東京ドームの約18個分。
市民の憩いの場だ。
同園で今年1月8日午前7時半ごろ、いつものように散歩がてら猫にエサをあげていた加藤さん夫妻は、第2駐車場でひとみ(推定10歳・メス)が血まみれでうずくまっている姿を発見した。
「私たちが遊歩道を通ると3、4匹の猫が寄ってくるんですが、ひとみだけ来なかったので、おかしいなと思って捜したんです。右脇腹にケガを負ってヘロヘロになっていたため、すぐ市内の動物病院へ連れて行きました」(加藤さん)
獣医師は、「猫どうしの喧嘩によるものか、人為的な虐待かは特定できない」と言い、止血と点滴治療を施したという。
加藤さん夫妻は、ひとみが回復するまで自宅で預かることを決めた。
当初は水を飲むのもやっとだったが、次第に立ち上がってエサを口にするようになった。
トイレも自分でするようになった。
「それでも、あまり食べないで、ずっと寝ている状態でしたね」(同)
約2週間後、右脇腹のケガとは別に、ひとみの肩甲骨近くのかさぶたの下に金属のようなものが埋まっているのを見つけた。
再び動物病院を訪ねると手術になり、鉛弾1発が摘出された。
長さ約8ミリ、幅約5ミリで鈍い灰色のひょうたん状の弾丸だった。


鉛弾摘出手術



「エアライフル(空気銃)で撃ったんでしょう。無登録ならば銃刀法違反ですよ。猫は毛が厚いし、皮膚も分厚い。それを突き抜けて肉まで達していたんですから十分に殺傷能力はある。人通りのない深夜、エサでおびき寄せて撃ったとしか思えない。獣医からは右脇腹の手術もすすめられたのですが、高齢で弱っていたため耐えられないだろうと思って、それはやめました」(同)
ひとみはしばらく小康状態を保ったが、次第に容体は悪化し、最後はエサもほとんど食べず、糞尿も垂れ流しになった。
2月15日夜、ひっそりと息を引き取ったという。
「約10年前、公園でテント生活をしていたホームレスの飼い猫が産んだ子猫です。名前は歌手の石川ひとみからとった。いつも私たちがエサをあげにくるのを“まちぶせ”していましたから」 と加藤さんは振り返る。
業者に頼んで火葬し、遺骨は現在も自宅にある。
「ひとみのほかにも忽然と姿を消した猫がいる。エアライフルを使うなんて、遊び感覚でハンティングを楽しんでいるようで許せない」(同)

数年間で虐待と思われる事件が9件以上も
さらに2月8日午後5時半ごろ、民間航空記念館の脇で尻から血を流している猫が発見された。
首周辺に鉛弾を2発撃ち込まれていたが、一命をとりとめて現在もボランティアに保護されている。
同園にはひとみのような地域猫が約50匹おり、ここ数年間で虐待と思われる事件が少なくとも9件発生している。
同園を管理する千葉市美浜公園緑地事務所が説明する。
「'16年3月から7月にかけて、合計5匹の猫の首や尻尾、頭のまわり、背中、足に接着剤のような粘着性物質がかけられる被害が起きています。ドロッとした状態から、固まったものまでありましたが、ボランティアが毛を刈るなどの処置をしてくれました」
昨年9月にはビーチセンターの東屋で猫が吐血し、苦しんでいる姿が発見された。
「すぐ現場に駆けつけましたが、ほどなく死んでしまいました。ボランティアが動物病院で検死してもらったところ、耳のうしろに血の塊があったことがわかりました。死因は不明でしたが、人に蹴られたり殴られたりした可能性もあるそうです」(同事務所)
同11月には事務所裏の防潮堤付近で口から血を流して死んでいる猫が見つかった。
「ボランティアが翌日、埋葬してくださいました。“もともとすんでいたところに帰してあげたい”と、木立の中にお墓があります」(同)


前出の加藤さんによると、その猫も撲殺された疑いがあるという。
「ボランティア関係者から私はそう聞いています。園内にはゴルフのクラブを持ち込んでいる人もいる。植栽の奥にいる猫を探すような不審な男が目撃されており、黒い猫だけを狙っているらしい」 と加藤さん。
また、この2月には園内の電話ボックスのガラスが割られる事案もあり、鉛弾を撃ち込まれた可能性もゼロではないという。
虐待多発を受けて同園は動物虐待禁止の看板を8か所に設置。
一連の事件を動物愛護法違反の疑いで調べている千葉県警千葉西署はパトロールを強化しているが、2月27日には同市花見川区の公園で猫が撃たれたという情報もある。
市はどう対処していくのか、問い合わせた。
「事件のことは報告が上がって知っています。ただ、うちは動物愛護法にのっとった適正飼養を指導しているところで、地域猫は該当しないので、ポスターを貼るなど地道な啓発活動しかできないのが現状です。とはいえ、市と公園の部署と警察などが連携して取り組むことが必要だと考えております」(千葉市動物保護指導センター)
園内には防犯カメラがひとつもない。設置に踏み切るのもひとつの手だろう。
(フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)

《PROFILE》
やまさき・のぶあき ◎1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物虐待などさまざまな分野で執筆している。


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