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ブームの裏で密輸横行 カワウソ闇ルート

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ブームの裏で密輸横行 カワウソ闇ルート

2019年1月23日(水) FNN

その愛くるしさから総選挙も行われるなど、人気のカワウソ。
ブームの裏で、海外からの密輸があとを絶たない。
子どもにも大人にも大人気の「コツメカワウソ」。
東京・池袋のサンシャイン水族館では、2018年10月、コツメカワウソの赤ちゃんが誕生し、先週、一般公開が始まった。
愛くるしいその姿で、早くもお客さんをとりこにしている。
さらに、ペットとしての人気も上昇中。
なんと、140万円を超えるものまで。
しかし、このコツメカワウソブームの裏で、今、深刻な問題が。
サンシャイン水族館・飼育スタッフの板東恵理子さんは、「水族館としては、ペットとしては推奨していない。(個人飼育を)勧めていない。そもそも密輸をするということも考えられないことですし」と話した。
関税法違反の疑いで、21日、警視庁に逮捕されたのは、浜野椋也容疑者(24)と守田和仁容疑者(52)。
2人は2018年10月、コツメカワウソの赤ちゃん5匹を密輸しようとした疑いが持たれている。
タイから木製の手提げかばんのようなものに入れられて日本に運ばれた、5匹のカワウソ。
発見時、2匹はすでに息絶え、その後、さらに2匹が死んでしまったという。
サンシャイン水族館・飼育スタッフの板東恵理子さんは、「群れから離すというのも動物にとっては狭いところに入れられてきているし、動物にとって、かなりストレスになっています」と話した。
また守田容疑者は、2018年6月にもコツメカワウソ3匹を許可なくタイから輸入し、外為法違反などで、逮捕・起訴されている。
その際、カワウソを売り込もうとしたのは、都内のカワウソカフェだった。
カワウソカフェ従業員は、「最初は3頭買ってくれないかと。『それはどこのですか?』と聞いたら、国内ブリード(繁殖)と言っていたが、日本でブリードはしていないので、密輸だなと」と話した。
守田容疑者らは、店側に1匹35万円ほどでの販売を持ちかけたという。
カワウソカフェ従業員は、「これを買ってくれないかという時に、警察に来ていただいて」と話した。東南アジア原産のコツメカワウソは、近年、商業目的での乱獲により、個体数が激減。
絶滅の危機にひんし、ワシントン条約で国際取引が規制され、取引には国の許可が必要だという。
WWFジャパン担当者は、「もし(コツメカワウソを)輸入をする場合には、原産国での輸出許可証の取得が必要。商業目的の取引は、別に禁止されているわけではないんですね」と話した。
そんな中、原産国の1つ、タイでは保護の対象となっており、捕獲や売買が禁じられている。
にもかかわらず、東南アジアの闇ルートでは、違法な取引が横行し、その価格は日本の数百分の1だという。
WWFジャパン担当者は、「原産国(タイ)では、3,000円ぐらいで(違法に)販売。日本になると最低で80万円、最高162万円。密輸事件を誘発している1つの要因になっていると考えています」と話した。
今回、守田容疑者らが買い付けていたというタイで取材すると、バンコク最大とされるチャトチャック市場では、多くの珍しい動物が売られていたが、店頭でコツメカワウソは売られていなかった。
しかし、動物の元密輸ブローカーによれば、「店頭には置かず、3日ほどで用意してもらえる。なじみの客だけに話をしている」とした。
今回、逮捕された2人は容疑を認め、浜野容疑者は、「報酬をもらうため、タイから密輸しようとした」と供述。
守田容疑者は、浜野容疑者に運び屋をさせるため、渡航のチケットを手配したなどと話しているという。



https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20190123-00410432-fnn-soci



ペット「カワウソ」の悲惨な境遇とは

2019年1月23日(水)  tokyohelper 石田雅彦(ライター、編集者)


(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

コツメカワウソ(Asian small-clawed otter、Amblonyx cinereus)をタイから密輸しようとした男2人が逮捕された。
報道によれば、5匹のカワウソのうち発見時に2匹が死んでおり、その後に2匹が死んだという。
ペット需要があるため、高値で売買されている闇市場があると考えられるが、日本の住環境でカワウソを飼うことは不可能に近い。
まず合法的に入手できない。
近年、ワシントン条約で国際的な商取引が規制されている動物の密輸入が急増している。
今回の事件はコツメカワウソで、国際自然保護連合(IUCN、※1)のレッドリスト(※2)の「VU(危急種)」だ。
コツメカワウソは、カワウソの仲間の中でも特に小型で愛らしい姿形をしている。
動物園で見たりテレビ番組などで紹介されたコツメカワウソに魅了され、ペットとして飼おうと考える人が増え、違法な取引も急増しているのだろう。
もちろん、ごく少数だが国内の民営動物園などで繁殖した個体が流通し、ペット市場へ出てくることもなくはない。
だが、これだけの数では、需要をまかなえないだろう。
少なくとも上野動物園など公営の動物園から、コツメカワウソがペットとして売りに出されることはありえない。
だから、コツメカワウソがペットとして扱われていたとすれば、それはほぼ間違いなく違法に密輸されたものといえる。
コツメカワウソは、両親を中心とした数匹~10匹前後の大家族で暮らす。
テリトリーは周囲10km前後と広大で、豊かな水辺が必要だ。

ペットとして飼うのは虐待
つまり、1匹や2匹の野生のコツメカワウソを、日本の狭い住環境で飼うことは一種の虐待と同じことになる。
家族との音声コミュニケーションが必要なコツメカワウソが、精神的なストレスを感じることは間違いない。
また、コツメカワウソもアナグマなどと同じイタチ科の動物で肉食獣だ。
鋭い牙を持ち、凶暴な一面もある。
コツメカワウソの密輸が絶えないのは、国内にそれだけの需要があるからだ。
ペットとして飼うことは、彼らを悲惨な境遇に落とすことにほかならない。
日本には、北は札幌市の丸山動物園から南は鹿児島市の平川動物公園までコツメカワウソに会える動物園も多い。
コツメカワウソを本当にかわいいと思うのなら動物園で会ってあげて欲しい。 

※1:国際自然保護連合(IUCN、International Union for Conservation of Nature and Natural Resources):1948年に創設された国際的な自然保護団体(IUCN日本委員会)。本部はスイス。89の国家会員、129の政府機関会員及び1163の非政府機関会員等が加盟(2017年2月現在)。日本は政府とともに国内のNGO団体などが加盟している。 

※2:国際自然保護連合のレッドリストでは、野生生物の保全状況(IUCNレッドリストカテゴリー)において、絶滅(EX)、野生絶滅(EW)、絶滅危惧IA(CR)、絶滅危惧IB(EN)、絶滅危惧II(VU)、準絶滅危惧(NT)、軽度懸念(LC)、情報不足(DD)、未評価(NE)の9段階に分けてられている。

 石田雅彦ライター、編集者
Masahiko Ishida:医科学修士(MMSc)、横浜市立大学・共同研究員。近代映画社を経てフリー。ネットメディア編集長、紙媒体の商業誌編集長など。自然科学から社会科学まで多様な著述活動を行う。法政大学経済学部卒、横浜市立大学大学院医学研究科修士課程修了、同博士課程在学中。日本科学技術ジャーナリスト会議(JASTJ)会員。著書に『恐竜大接近』(集英社、監修:小畠郁生)、『遺伝子・ゲノム最前線』(扶桑社、監修:和田昭允)、『ロボット・テクノロジーよ、日本を救え』(ポプラ社)、『季節の実用語』(アカシック)、『おんな城主井伊直虎』(アスペクト)など。


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