猫 増え続け60匹 群馬でも「多頭飼育崩壊」表面化
行政対応限られボランティア負担ずしり
2018年9月14日(金) 上毛新聞社
60匹以上の猫がいる西毛地域の男性宅
玄関を開けるとふん尿の臭いがマスク越しに鼻を突き、やせ細った数匹の猫が近寄ってくる。
机の上やピアノの陰、至る所に猫がいる。
抜け毛や餌にまみれた室内と庭に60匹以上。
大量に繁殖し、十分な世話ができなくなった「多頭飼育崩壊」の状態だ。
■あっという間に
群馬県の西毛地域にあるこの家のあるじは50代の男性。
飼い始めたのは8年前だった。
家族が捨てられた雌猫を拾ってきたが、4匹出産したのを皮切りに次々と繁殖していった。
男性は「あっという間に増え、手に負えなくなった。猫に申し訳ない」とうなだれた。
避妊や去勢をしないまま数が増え続け、正常に飼えなくなった多頭飼育崩壊は全国各地で問題となっている。
鳴き声や臭いで近隣とトラブルになることも少なくない。
高崎市の動物愛護団体「群馬わんにゃんネットワーク」(飯田有紀子理事長)は、県内で飼育崩壊に陥っている9カ所の現場に携わる。
男性の家もその一つだ。
数回にわたって訪問し、健康状態や飼育環境を調査。
8月下旬までに猫を根気良く保護して、避妊去勢手術を受けさせた。
飯田さんによると九つのケースの飼い主は、半数以上が1人暮らしのお年寄り。
寂しさを紛らわせるために飼い始める場合が多い。
経済的な事情や知識不足から必要な手術をせず数が膨れ上がるため、共食いをしたり、重い病気になったり、環境が劣悪という。
■負担に偏り
飯田さんたちは公益財団法人どうぶつ基金(兵庫県)の事業を利用し、不妊に取り組む。
審査を通れば登録病院で避妊去勢手術を無料で受けられる仕組み。
県内では唯一、「ふー動物病院群馬分院」(藤岡市)がこの事業に協力している。
課題は行政の対応が限られ、負担がボランティアに偏っていることだ。
県動物愛護センター(玉村町)は多頭飼いの苦情を受けると飼い主を指導するが、拒否された場合は動けないのが実情という。
法令に基づく行政処分も立証のハードルが高く、これまで適用した例はない。
担当者は「自己責任の側面が大きいことから県予算を投入できず、結果的に民間団体に頼らざるを得ない」と話す。
空前といわれる猫ブームの陰で、深刻化する多頭飼育崩壊。飼い主のモラルが問われるのはもちろんだが、動物愛護団体の善意に頼るのではなく、自治体や地域なども加わって解決策を探る必要がありそうだ。
(高崎支社報道部 斎藤大希)
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猫増え続け60匹「多頭飼育崩壊」(群馬)
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