温泉客もてなす秋田犬、ふわふわ六つ子の育児奮闘中
2018年6月21日(木) 朝日新聞
秋田県大館市のニプロハチ公ドーム近くにある温泉「ふるさわおんせん」に、秋田犬の「看板娘」がいる。
雌で1歳3カ月の「温(はる)」だ。
5月には子犬6匹を産んだ。
玄関で客を出迎えて愛嬌(あいきょう)を振りまきながら、子育てに奮闘している。
六つ子におっぱいをあげる温(はる)=2018年6月18日、秋田県大館市の「ふるさわおんせん」
温の子ども6匹。雄と雌が3匹ずつ=2018年6月18日、秋田県大館市の「ふるさわおんせん」
温は徳島県生まれで、昨年5月に大館に来た。
「秋田に来ても秋田犬に触れ合えるところがない」。
県外から来た客がそうこぼすのを温泉の運営会社社長の小林薫さん(43)が聞き、飼うことにした。
人なつこい温は、周りに人がいないとさびしそうに「クーン」と鳴く。
だが、顔なじみの客が来ると、しっぽを振って「ワンッ」と元気にほえる。
「顔を覚えていて、『こんにちは』とあいさつしているんです」と小林さん。
かわいらしさが広まり、県外からはもちろん、昨秋にJALの国際線の機内誌で紹介されると、台湾やパリからも客が足を運ぶようになった。
今年3月、青森県弘前市の秋田犬の雄と「お見合い」。
5月13日夜から14日未明にかけて、六つ子を産んだ。
子どもたちに夜中もおっぱいをせがまれ、出産前に比べてちょっと疲れ気味だ。
でも、しつけには熱心に励む。
きょうだいげんかをしたり、1匹だけ離れていたりする子には、「だめよ」と叱るように頭を軽くかむ。
愛情たっぷりの子育てと六つ子の愛くるしさで客をなごませている。
小林さんは「温はお客さんから愛情をもらいながら、ゆったりした心でもてなすことでお返ししているようです。子どもたちもほがらかに育って、親子でみんなを癒やしてほしい」と見守っている。
(渡部耕平)
温と子犬を抱く小林薫さん(左)と姉の佐々木桂さん=2018年6月18日、秋田県大館市の「ふるさわおんせん」
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〈ふるさわおんせん〉
大館市新綱27。営業は午前6時~午後9時半(11~3月は午前6時半~午後9時半)。宿泊や食事もできる。日帰り入浴は中学生以上350円、小学生200円、幼児(1歳以上)50円。第2火曜定休。温の子ども1匹の新しい飼い主も募集している。問い合わせは小林さん(0186・48・4295)へ。