猫22匹「動くぬいぐるみ」扱い・・・
ゴミ屋敷、野ざらしケージでネグレクト、エサは食べ残し弁当
2018年4月29日(日) 弁護士ドットコム
不衛生な環境に押し込められた猫
埼玉県三芳町の民家で、野ざらしのケージに詰め込まれて「監禁」されていた22匹の猫。
適正な飼育を放棄された「ネグレクト」という一種の虐待状態にあったが、3月下旬にすべての猫が、NPO法人に保護された。
その現場に立ち会った。
(弁護士ドットコムニュース・山下真史)
●ミイラ化した猫や衰弱した猫がみつかった
すべての猫を保護したNPO法人「にゃいるどはーと」(埼玉県朝霞市)のスタッフは2月中旬、情報をキャッチして、この民家に足を踏み入れたとき、思わず息を呑んだ。
ミイラ化したものなど、計3匹の猫の死骸がみつかったからだ。
野ざらしのケージの中からは、不衛生な環境で衰弱したり、ストレスから毛が抜けたりした猫もいた。
飼い主が食べてあまったコンビニ弁当など、塩分が高くて、猫の健康にとって良くない人間の食べ物がエサとして与えられていたという。
飼い主は、虐待という意識がまったくなく、猫の飼い方について、本やインターネットで調べたり、ほかの人から聞くような能力・努力はできない人物だった。
NPO側は約1か月にわたって、猫を保護するための交渉を飼い主とつづけた。
●飼い主「やっぱり、わたしは悪いことをしていない」
ようやく話がまとまって、すべての猫を引き渡すことになった当日、やはり納得のいかない飼い主が話を蒸し返した。
「やっぱり、わたしは悪いことをしていない」。
猫を世話しているという自己満足に裏付けられた言い訳のような発言を繰り返した。
さすがに「にゃいるどはーと」の東江ルミ子さんも怒りの表情をみせる。
「あれは、猫のことを『動くぬいぐるみ』かなんかだと思ってるんだよ」とつぶやいた。
およそ1時間の説得の末、飼い主の態度を替えて、協力的になった。
飼い主の家はいわゆる「ゴミ屋敷」。
聞くと、以前は家で食事をつくっていたが、現在の台所は物であふれて、料理どころではない。
大きな黒いハエが何匹も飛ぶ。
●「自分たちの残り物を与えるのは、愛情ではない」
飼い主がとくにかわいがっていたのは、家の中で飼っていた4匹の猫だ。
いずれも人見知りで、ケージに入れられることを嫌がっていた。
家の中で飼っていた4匹が、ケージに入れられて、車に載せられた瞬間、飼い主は涙声で「バイバイ、元気でね」と口にした。
目に涙を浮かべていた。
「最後まで育てたかった」「お金をためたら、もう一度面倒をみたい」。
そんな言葉を口にしたが、東江さんは突き放した。
「お金の問題じゃないということがわからないのだから、猫を飼う資格はないよ」
そんな飼い主も地域社会から見放されがちで、孤独だったという背景がある。
「動くぬいぐるみ」で、そのさびしさを紛らわせていたのかもしれない。
だが、それは命を持った動物という尊厳のある扱いではなかった。
「猫に、自分たちの残り物を与えるのは、愛情ではない。自分の思いとギャップがある。まずは、家の中を片付けて、生活のリズムを整えて、生活をとりもどしてほしい」(東江さん)
この日保護されたのは、先に病気検査のために保護した3匹をのぞいて19匹。
東江さんによると、そのうち半分くらいが里親の縁があればいいくらいだそうだ。
縁のない猫は、「にゃいるどはーと」が終生飼養することになる。
弁護士ドットコムニュース編集部
保護された猫たちの写真
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ネコの共食いが起きて「ホッとした」 多頭飼育崩壊の壮絶現場
2018年03月29日
埼玉県にある一軒家から、このほど計24匹の猫が「救出」された。
玄関に足を踏み入れると、猫のフン尿による強烈な悪臭がたちこめ、キャットフードが部屋のいたるところに散乱し、猫の抜け毛も舞いあがる。
世話をしきれないほどペットが増えて、劣悪な環境になってしまう「多頭飼育崩壊」だ。
この家では、猫同士が「共食い」をすることもあったという。
救出の現場に立ち会った。
(弁護士ドットコムニュース・山下真史)
●エサをやりはじめた猫が爆発的に増えていった
「きっかけは、子猫を産んだばかりの野良猫にエサをやりはじめたことでした」
この家の主婦、A子さんが振り返る。
彼女によると、猫のエサやりをはじめたのは、数年前のことだ。
やせ細ったトラ模様のメス猫が、小さな庭の片隅にあるブルーシートの下で数匹の子猫を産んだ。
不憫に思って、エサをやっているうちに、猫たちはやがて網戸を破って、家に自由に出入りするようになったという。
はじめのうちは、親子3人で猫をかわいがっていたようだ。
A子さんも、子どものころ実家で飼っていた猫と重ねていたという。
だが、そうこうするうちに、メス猫のお腹がまた大きくなった。
ある日、家のタンスの裏で、メス猫は出産していた。
一般的に、メス猫の妊娠期間は約60日、さらに1度の出産で5匹程度産むといわれる。
その後、猫は爆発的に増えていった。
●猫の「共食い」を見て、ホッとした
猫を救出したこの日、一家は引越しの当日だった。
本来なら食事をつくる台所のシンクや戸棚にも猫のフンが落ち、猫の毛が雪のように降りつもっていた。
あまりの不衛生さに、思わず「ここって、もう人は住んでいないですよね?」と聞いてしまったが、そうではなかった。
床に撒き散らされた猫の尿が、不快感とともに靴下に染みわたる。
「今から思えば、ちゃんと不妊・去勢をしておけばよかったと思います」(A子さん)
猫の捕獲を手伝いながら、A子さんは後悔を口にした。
猫の不妊・去勢手術には、1匹あたり1万2000円〜2万円の費用が必要だ。
だが、猫は数え切れないくらい増えてしまっていた。
近所は犬を飼っている家が多く、「引き取ってもらえなかった」という。
猫を救出したNPO法人「にゃいるどはーと」代表の東江ルミ子さんは「状況から考えて、24匹は少ない。もっといたはず」と話す。
「ある日、生まれたばかりの子猫の頭が床にポロッと落ちていました。びっくりしましたけど、猫も動物だから、子猫を食べると聞きました。そのあと、実際に食べている瞬間も見かけました。もちろん、かわいそうと思いましたが、ホッとしました。私たちが飼い切れないから、代わりに殺してくれたんだって」(A子さん)
頭数が多くて不衛生な環境のもと、ストレスが溜まってしまったのか、猫たちは「共食い」による「間引き」をしていたのだ。
近所の人によると、A子さん夫婦について「やさしい性格だ」「あまりご近所付き合いをしていなかった」という。ただ、近所の道路に車にひかれた猫の死骸も見かけたこともあったそうだ。
●一家の食費よりもネコ代はかかっていたが・・・
猫のエサ代とトイレの砂代は、合わせて月6万円くらい。
一家の食費よりもかかっていたが、頭数のわりにトイレは2つと少ない。
だから、家全体がトイレとなったのだ。
A子さんの夫は「猫のことは、家内にすべてまかせていた」「猫が死のうがどうも思わない。手術しようとも思わなかった。動物は共食いをするものだ。どうとも思わない」と強気の口調だったが、立ち去り際に「(猫を飼うのは)もうコリゴリ。二度とゴメンだ」とぼやいた。
実は、一家の引越しには、夫の事業がうまくいかなくなったという背景がある。
自宅を売り払うことになり、次のアパートはペット禁止のため、「にゃいるどはーと」に助けをもとめたというわけだ。
業者がやってくるまでの約1時間半、放し飼いの猫たちはパニックになって家の中を逃げたが、東江さんたちは一匹一匹、慎重にネットと素手でつかまえて、ケージに入れていった。
●「子どもがかわいがっていた猫を連れていけなかった」
こうした多頭飼育崩壊は、表面化している事例も少なくなくない。
NHK「クローズアップ現代+」(2016年11月)によると、多頭飼育について全国で年約1800件の苦情があるという。
そして、今回のように、猫たちによる「共食い」まで起きるような、劣悪な環境を強いられてしまうケースも存在する。
だが、行政やNPOにも限界はある。
次のアパートでは、屋外でのエサやりも禁止されている。
A子さんは最後に「子どもがかわいがっていた猫を連れていけなかった」と涙をこぼした。
二度と飼えることはないかもしれないが、もし猫を飼える家に戻ることができたら、やり直したいということか。
だが、夫の事業の失敗がなければ、今回の救出にもつながらなかっただろう。
それでも、東江さんは「流した涙にウソはないと信じたい」という。
たしかに猫はかわいい。
しかし、正しい知識を持たないまま、増やしてしまうと、飼い主の生活も崩壊させてしまう。
東江さんは「猫たちの行く末を最後の最後に案じてくれたのは、せめてもの救いだった」と話す。
野に放たれるという最悪の事態は避けられたからだ。
いったん引き取られた24匹はこのあと避妊・去勢手術を受けて、新しい里親をさがすことになる。
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