野良猫が公園から消えた 大阪のボランティア、不妊・去勢手術が奏功
2014年1月29日(水) 産経新聞
野良猫の不妊・去勢手術などの活動を行うボランティアグループ「うつぼ公園ねこの会」のメンバー
=大阪市西区(写真:産経新聞)
大阪市内の公園から野良猫が減っている。
地域住民らのボランティア団体が市と協力し、不妊・去勢手術を施すなど「TNR活動」と呼ばれる取り組みを進めた結果という。
ネコは多産で、放置すると野良猫は際限なく増加。鳴き声や糞尿(ふんにょう)で近所迷惑となり、行く末は殺処分だ。
同活動で処置した野良猫は「一代限りの命」となってしまうが、ボランティアらは「殺処分を防ぎ、寿命を全うさせてあげたい」と話し、動物愛護団体なども活動を後押ししている。
◆さくら耳のネコ
大阪市西区の靱公園。
缶詰を皿にあけると、おなかをすかせたネコが集まってきた。
どれも片耳の先端がV字にカットされ、桜の花びらのようになっている。
「あれは不妊・去勢手術が済んだしるし。『一代限りの命』をボランティアで面倒をみて、地域との共生を目指しているんです」。
こう話すのは、ボランティアグループ「うつぼ公園ねこの会」のメンバー、岡崎千恵子さん(62)だ。
大阪市によると、市内の公園では捨てられたりした野良猫が定着。
近隣住民の苦情もあり、市は平成22年、「増やさない」ことが最善の策としてTNR活動を始めた。
同活動では、近隣住民などで作る3人以上のグループで市の研修を受けて「公園猫適正管理推進サポーター」となり、市が活動を了承した認定公園でサポーターとして野良猫の管理に当たる。
活動内容は、(1)不妊・去勢手術を受けさせる(2)餌やり(3)公園掃除−など。
市によると、こうした活動で24年度は認定公園45カ所で野良猫計51匹が減少。
23、24年度に1公園ずつで野良猫がいなくなり、昨年はさらに3公園で野良猫が姿を消した。
◆「鳴き声減った」
同活動に取り組む一(いち)犬猫病院(同市北区)によると、手術によって、繁殖期の鳴き声がなくなる▽尿のにおいが減る▽性格が穏やかになる−などの効果があるという。
実際、市が20、21年度に試験的に実施したところ、住民は「鳴き声が減った」(73%)、「車や庭を傷付けられなくなった」(63%)との感想を寄せ、71%が「効果がある」と回答した。
活動に対しては「不妊・去勢手術を強いて耳を切るのは残酷ではないか」と批判を受けることもあるが、岡崎さんは「健康な体にメスを入れることへの抵抗は私たちにもある。でも虐待されたり殺処分されたりする方がよほど酷なこと」。
動物愛護団体や環境省も活動を支持しているという。
環境省によると、23年度に全国の保健所が引き取った野良猫は約10万匹。
引き取り手がみつかった約1万2千匹以外はすべて殺処分された。
殺処分の6割以上が子猫だったという。
【用語解説】 TNR活動
野良猫が増えるのを防ぐために、「捕獲して(Trap)、不妊・去勢手術を施し(Neuter)、元いた場所に戻す(Return)」活動。
活動を進める公益財団法人「どうぶつ基金」(兵庫県芦屋市)によると、数十年前に海外で始まったとされ、世界的に広まった。日本では「地域猫活動」とも呼ばれ、環境省が「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」の中に盛り込んでいる。