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車いすで駆ける「サンジ」

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車いすで駆ける「サンジ」(上)
 かつてディスクドッグで優勝

2018年1月3日(水) 両丹日日新聞


愛犬・サンジと裕子さん

犬が緑の芝生を駆け、飼い主と息を合わせて、投げられたディスク(円盤)を飛び跳ねてとらえる-。
ディスクを通じて人間と犬が楽しめるスポーツ競技、ディスクドッグ。
京都府福知山市土師宮町の西村慎一さん(51)・裕子さん(47)は、夫婦で一緒にこの競技を楽しんでいる。
コーギー2匹、ボーダーコリー4匹と一緒に仲良く暮らし、その中に専用の車いすを身につけたコーギー犬がいる。
名前はサンジ(11)。
夫婦の愛情をいっぱいに受け、ディスクを追って、りりしく、さっそうとした姿を見せる。
サンジは2005年に飼い始めたコーギーの“長女”ナミ(12)に続き、西村家の“長男”として06年に家族の一員になった。
本格的に競技に取り組んだのは、サンジが1歳のときの07年。
慎一さんの相棒として、練習を積み始めた。
名前を呼んで「来い」とコマンド(命令)すると飼い主の元に戻ってくるようにしつけたり、「待て」「伏せ」などを理解させる。
次に、ボールなどの物を持ってくるよう覚えさせる。
このような基本から、順に一つずつ段階を経て、技の修得に入る。
慎一さんは「当初は簡単にできると思っていましたが、根気が必要でした」と振り返る。出来るまで諦めずに繰り返した。


慎一さんとフリースタイルの練習をするサンジ(5歳のころ)

約半年間の練習の成果を試そうと、サンジと初めて大会に挑んだ。
ディスタンス部門に出場し、初優勝した。
「まさかの結果で、うれしかった。今までやったことが間違っていなかったと確信できた」。
これを機に、一層競技にのめり込んだ。
その後は、フリースタイル競技に挑戦。
小型犬のコーギーでは珍しく、中型犬のカテゴリーで大会に参加した。
いくつもの近畿圏内の大会で上位入賞するなど活躍したが、体への負担を考慮して、13年頃からは競技をディスタンスに戻した。
その間に、ボーダーコリーのロビン(13)、ゾロ(10)、メリー(7)の3匹が家族に加わった。
ちなみに愛犬の名前は、全て人気漫画のキャラクターに由来する。
愛犬たちと競技を楽しんでいるなかで、サンジの体に異変を感じるようになった。
後ろ足を地面にすって歩くようになり始めた。
「認めたくない気持ちが強く、否定したかった」


車いすで駆ける「サンジ」(下)
 雨でも日に3回の散歩

2018年1月3日(水)  両丹日日新聞


車いす生活になってもディスクを追いかけるサンジ

京都府福知山市土師宮町の西村慎一さん(51)・裕子さん(47)夫婦と暮らすコーギー犬の「サンジ」。
夫婦と一緒にフライングドッグの練習に励み、大会で優勝もした。
そんなサンジが、後ろ足を地面にすって歩くようになり始めた。
症状は徐々に悪化し、2015年10月、京都市内の病院でDM(変性性脊髄症)と診断された。
痛みは伴わず、ゆっくりと進行する脊髄の病気で、症状は後ろ足から出現し、進行すると脊髄の前の方にも広がり前足にも症状が現れる。
近年、コーギーでの発生頻度が高く、現時点で治療法はないとされる。
後ろ足を引きずり、家の中でもほとんど動かなくなったサンジを見て、慎一さんは手作りの車いす製作を始めた。
中古のベビーカーの車輪や鉄のフレームを用意し、完成させた。
整備士だったことが大いに役立った。
さっそく、サンジに装着した。
「聞き分けが良くて、助かった」と慎一さん。
嫌がることもなく、すんなり受け入れてくれた。
それまでは、すねた様子だったが、車いすのおかげで思うがままに動けるようになり「表情が明るくなり、目に輝きが戻った」という。
西村さん夫婦にとって、愛犬たちとの時間は生活の一部。
日課は朝6時30分、夕方6時過ぎ、夜9時ごろからの3回の散歩。
雨の日も風の日も雪の日も欠かさない。
毎回、10~15分ほど近所を連れて歩く。
サンジがこの病気になってからもそれは変わらない。
雪が降り積もっても、車いすの車輪に子ども用のスキー板を敷いて歩いた。
おかげで、近所の人から声を掛けてもらい、良い交流になった。


ディスクを空中でキャッチするサンジ(5歳のころ)

裕子さんはインドア派だったが、犬を飼うことでアウトドア派になった。
「犬を通じてつながりが増え、楽しい。散歩するだけでも違う。犬は手がかかるほどかわいくなります」と目を細める。
16年には、ボーダーコリーのレイリー(1)が加わり、6匹となった。
ディスクドッグの大会に出場しているのは、現在メリーとレイリーで、あとの4匹は高齢などのため遊びでやる程度。
慎一さんは「競技を始めて、サンジに多くのことを教わりました。サンジでなければできなかったと思う」と振り返り、「診断を受けた時、競技を辞めさせるのもひとつだが、動ける範囲で続けさせたいと強く思った」と話す。
西村さん夫婦にとってディスクドッグとは、愛犬と思いが通じ合える手段の一つ。
「みんなが高齢になってきているので、体に気を付けながらいつまでも楽しい生活を続けれたらうれしい」


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