イヌ映画の名匠が贈る“転生した犬と飼い主のラブストーリー”、
その切な可愛さに悶絶!
2017年9月28日(木)
スクリーンから溢れでてくる、犬の一途な思い
犬や猫に限らず、ペットを飼ったことのある人なら誰でも1度は思うはず。
「ねぇ、なに考えてるの?」。
『僕のワンダフル・ライフ』は、そんな永遠に答がわからない問いに、ちょっとしたヒントをくれるかもしれない。
アカデミー賞ノミネート作『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(85年)や、『HACHI 約束の犬』(09年:邦画『ハチ公物語』のアメリカ版リメイク)で、犬と人間を描いてきたラッセ・ハルストレム監督が、犬の一途な想いをスクリーンから溢れさせたのが、最新作『僕のワンダフル・ライフ』(9月29日全国ロードショー)だ。
ゴールデン・レトリバーのベイリーにとって飼い主のイーサンは、命の恩人にして最愛の人。
楽しいことも辛いことも、一緒に乗り越えてきたけれど、犬の寿命は人のそれよりも短い。否応なしにやってくる別れの時・・・
けれど、ベイリーの魂は死なない。
別の犬の姿になってこの世に生まれ変わってきたのだ。
なぜって、夢破れ、愛する人も失ってしまったイーサンのことが心配だから。
ところが、ベイリーが送るのは別の“犬生”ゆえ、そう簡単にイーサンとは再会できない。
生まれ変わるごと、警察犬(シェパード)になって活躍したり、孤独な女性の癒し(コーギー)になって美味しいおやつをたくさんもらったり。
そして、遂にイーサンとの再会を果たす時がやってくる!!
・・・のだけれど、ただでさえ見た目はセント・バーナードとオーストラリアン・シェパードのミックスに変わっているベイリーに、イーサンが気づくはずもない。
そもそも犬が生まれ変わるなんて、頭の片隅にすらない。
それでもベイリーはめげない。
「イーサンを愛し、幸せにするのが僕の役目なのだ」と、心に誓って大奮闘。
ベイリーはその役目を全うすることができるのか、そしてイーサンはそんなベイリーに気づくことができるのか。
飼うことと、家族として信頼関係を結ぶことは別
4頭の犬たちが演じたそれぞれのベイリーは、それぞれにチャーミングで、愛おしい。
カメラがベイリー目線で捉える世界も、おもしろい。
ベイリーの声を担当したのは、『アナと雪の女王』でオラフを演じたジョシュ・ギャッド。
喜怒哀楽の表現が豊かでユーモラスなベイリーの心の声を、生き生きと聞かせてくれる。
「うちの犬もこういう時があるけど、そうか、こんなこと思っているのか」と素直に思えてしまうから、不思議だ。大人になったイーサンを演じたのは、渋味のある演技派デニス・クエイド(『エデンより彼方に』『オールド・ルーキー』『ニュースの真相』など)。
幸せになることを諦めている、そろそろ初老期にも入ろうかという無骨な男がよく似合う。
犬にとって飼い主は絶対だ。
ご飯も散歩もトイレも、言ってしまえば、生きていくことすべてが飼い主次第だ。
けれど、飼育することと、信頼関係を築き家族や仲間として暮らしていくのとは全く別。
ベイリーがイーサンを追い続けたのは、彼にとってイーサンが大切な人だったから。
そして、なぜそんなにもイーサンが大切だったかと言えば、イーサンにとってもベイリーが大切な存在だったからに他ならない。
ひとりと1匹の間には、強い信頼関係があった、というのがこのお話の大前提であることは言うまでもない。
だから、イーサンに気づいてもらえなかったとしても、ベイリーのひたむきな気持ちは変わらない。
おやつやおもちゃと引き換えなんかじゃない、ただシンプルに「愛する人を幸せにしたい」と願うベイリーの健気な姿を見ながら、あなたの胸にこみ上げてくるのは、どんな思いだろうか。
私は本作を観終わった後、こぼれてしまった涙をぬぐいながら、早く家に帰って愛犬を抱きしめたくてたまらなくなった。
我が家にやってきて生後5か月の保護犬「あんこ」。
私たちにしかできない連携プレーも練習しなくちゃ!
文=赤尾美香/Avanti Press
【画像】高齢タレント犬のめんまちゃん