警察犬の出動、7割以上が行方不明者の捜索 認知症高齢者も多数
2017年9月20日(水) sippo(朝日新聞)
河川敷で訓練する田倉成幸さん
行方不明者の捜索で警察犬の出動件数が増加しており、和歌山県内では近年出動件数全体の約7割超を占める。
一方で、民間の嘱託警察犬の指導手の高齢化、県警の直轄警察犬の費用など課題を抱えており、対策が急務になっている。
7月中旬の午後8時ごろ、和歌山市新庄の指導手三谷博一さん(72)の携帯電話が鳴った。
「70代女性が施設から行方不明」。
愛犬のシェパード「テラ号」(メス・6歳)を車に乗せ、車で20分ほどかけ高齢者施設に向かった。
女性の枕のにおいをもとに、テラ号と一緒に道路や草むらなど約2時間かけて捜索したが見つからず、午前0時ごろ帰宅した。
その後、女性は無事保護されたという。
三谷さんは、30年近く警察犬の指導手を続け、行方不明者の捜索に何度も出動してきた。
ここ数年、事件出動が減り行方不明者捜索が中心になった。
これまで川で亡くなっていた男性や倉庫の床下で動けなくなっている男性を発見してきた。
出動は多い月で5件、平均2件ほどだが、出動は昼夜を問わず深夜も多い。
県警鑑識課によると、県内の嘱託犬の不明者捜索は、ここ数年は20~30件ほどで、10件ほどだった20~15年ほど前と比べると増加傾向にある。
10年ほど前から行方不明者の捜索が出動件数の約7、8割を占めるようになったという。
警察庁によると、行方不明者の捜索の出動件数(嘱託犬のみ)は昨年、過去10年で最多の2605件。
そのうち約4割が認知症行方不明者だった。
一方で、嘱託警察犬の数は減少傾向にある。
全国では2011年に1213頭だったが、16年には1197頭と減少。
飼い主や訓練業者で作る「日本警察犬協会」(東京)は、指導手の高齢化などで嘱託犬が減っているのが主因とみる。
県内でも指導手17人のうち約半数の8人が65歳以上と高齢化が進む。
さらに、近年は小型犬ブームで警察犬に適するシェパードやラブラドルレトリバーなどの大型犬を飼う人が少なくなっていることから、「今後、さらに後継者が生まれない状況が進む」と同協会は指摘する。
嘱託犬のみの運用が難しくなってきたことから、県警は今年度から直轄犬1頭を導入した。
だが、まだ犬舎などの施設がなく、さらに専任で訓練する警察官も1人と人員確保も課題だ。
県警鑑識課の喜多啓之次席は「予算確保や人員確保など課題もある。今後態勢を整えていきたい」と話す。
県警嘱託犬指導手会の田倉成幸副会長(67)によると、指導手の減少で「管轄外」の遠くの地域まで出動する事例が増えているという。
「嘱託犬は指導手の都合などで出動できないことも多い。今後は嘱託犬とうまく補完し合いながら運用していくことが大切」と話している。
警察犬育てませんか(福井)
2017年9月15日(金) 日刊県民福井
人間の3千倍~1億倍あるとされる嗅覚で犯人を割り出す警察犬。
近年、認知症のお年寄りら行方不明者の捜索で活躍し、人命を救うケースが県内でも急増している。
出動件数が増える一方で、警察犬の頭数と指導手の人数は伸び悩んでおり、県警は新たな警察犬の採用活動に力を入れている。
(梶山佑)
増える出動件数、県警が採用活動に注力
県警鑑識課によると、警察犬が出動した行方不明者の捜索活動は昨年は26件で、5年前の4件と比べ6倍以上に増加。
今年は8月末までに28件あり、既に昨年1年間の件数を上回っている。
高齢化に伴い、認知症やその疑いのある高齢者が徘徊(はいかい)などで行方不明となるケースが増えているためだ。
徒歩で移動する行方不明者を探すには、警察犬の鋭い嗅覚が大きな武器になる。
だが、県内の警察犬は現在14頭でほぼ横ばい。
うち10頭は嶺南に集中しており、嶺北には4頭しかいない。
県警自体は警察犬を保有しておらず、指導手らが飼育する犬に委嘱している。
県内の指導手は7人で、うち5人が嶺南にいるため、地域で偏りが出ている。
警察犬として活動できる犬を増やそうと、指導手らでつくる県警察犬協力会は2年前から、一般の犬を対象にしたしつけ教室を開催。
鑑識課員も参加し、飼い主に声を掛けて警察犬の目指し方を紹介している。
同課の担当者は「警察犬はさまざまな場面で重要な役割を担っている。飼い犬を警察犬に育ててみたい人はぜひ相談してほしい」と話している。
不明高齢者発見 大野署が感謝状 勝山の警察犬と指導手
大野署は14日、行方不明になったお年寄りの発見に貢献した勝山市鹿谷町保田、警察犬指導手松明(まつめい)伝治郎さん(73)と、嘱託警察犬ファルコン・オブ・シャイニング・ゴールド号(シェパード、雄三歳)に感謝状を贈った。
感謝状が贈られた松明伝治郎さんとファルコン・オブ・シャイニング・ゴールド号=14日、大野署で