<御誕生寺>「命の重み感じて」 人と猫、寺が縁結び 福井
2017年9月16日(土) 毎日新聞
境内で猫を抱く副住職の猪苗代昭順さん=福井県越前市庄田町の御誕生寺で2017年9月14日午後5時42分、大森治幸撮影
◇越前市の「猫寺」が県センターと連携
約30匹の猫が境内で暮らし「猫寺」の愛称で親しまれている福井県越前市の御誕生(ごたんじょう)寺で23日、子猫の里親を探す譲渡会がある。
「一つでも多くの命をつなぎたい」と寺が県丹南健康福祉センター(鯖江市)に提案し、2014年に始まった。
当日は、センターなどで保護されている健康で譲渡に適した猫が集まる。
20~26日は動物愛護週間で、副住職の猪苗代昭順さん(43)は「動物に親しみ命の重みを感じてほしい」と話す。
【大森治幸】
◇23日に“里親”探す譲渡会
御誕生寺は09年に本堂が完成した曹洞宗の寺院だ。
猫好きの住職がかつて、捨て猫を引き受けたことから増え始め、飼育数は一時約80匹にもなった。
13年に同寺の副住職となった猪苗代さんは「このままでは世話をしきれない。参拝者にも迷惑が掛かる」と考えた。
住職と対策を練り、まずは全ての猫に名前と首輪を付けた。
1匹1匹への愛着を深め、かわいがるためだ。
「手をかけ、愛情をかけた猫は表情が穏やかになる」と猪苗代さんは話す。
一方で、フェイスブックやブログも開設。
猫の写真付き記事を投稿して里親を募集すると、もらい手が少しずつ見つかるようになった。
寺の知名度も次第に高まり、今では県内外からの参拝者が年間3万人も訪れる人気スポットとなった。
新たな猫の受け入れをやめる一方、猪苗代さんが考えたのが子猫の譲渡会だ。
「猫寺としてできる社会貢献は、人と猫とのご縁をつなぐこと」と考えた。
境内を譲渡会場として使ってもらうことを同センターに提案。
14年から春と秋の年2回実施することになった。
参加するのは、いずれも獣医師らの診断で健康であることが証明された猫だ。
これまでに寺が独自で探した猫と合わせると、300匹以上が里親に引き取られた。
猪苗代さんは「譲渡会ではほぼ100%里親が見つかる。縁結びの寺としてこれからも続けたい」と話す。
県内6カ所の健康福祉センターでは、保護した犬や猫の譲渡会を定期的に開いているが、昨年度は猫65匹が殺処分になった(犬はゼロ)。
御誕生寺での譲渡会について、県の担当者は「知名度のある寺なので、多くの人に知ってもらえる」と感謝している。
23日は譲渡会の後、境内の地蔵600体の前で、参拝者にメッセージを書いてもらったカップに入れたろうそくをともす「地蔵祭り」も開く。
問い合わせは御誕生寺(0778・27・8821)。
◇猪苗代昭順(しょうじゅん)さん
1974年、宮城県気仙沼市生まれ。高校卒業後、英国に留学した際、一般教養の授業で、哲学者として紹介されていた曹洞宗宗祖・道元禅師の教えに感銘を受け、僧侶になることを決意。2000年、大本山総持寺(横浜市)の貫首だった板橋興宗禅師(現・御誕生寺住職)の下で出家得度した。
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御誕生寺、人と猫が縁結び
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