愛犬が見つけた小さな命は不思議な運命の宝物
【保護猫と暮らす】
2017年5月24日(水) @DIME
9歳の愛犬ボーダーコリー海里くんと仲良く並んでいるのは今年3歳になる愛猫「息吹ちゃん」
「あなたがそこにただいるだけで その場の空気が明るくなる あなたがそこにただいるだけで みんなの心がやすらぐそんなあなたに私もなりたい」
詩人・相田みつをさんの言葉のように、Eさんはあの時出会った小さな命に日々癒され、懸命に生きる姿に勇気づけられていると言います。
9歳の愛犬ボーダーコリー海里くんと仲良く並んでいるのは今年3歳になる愛猫「息吹ちゃん」。
猫好きで面倒見のいい海里くんのそばにはいつも息吹ちゃんの姿があります。
そんな息吹ちゃんは怖いもの知らずで好奇心旺盛。元気でおてんばな女の子ですが、左目が見えないハンデ猫ちゃんです。
「片目で左側のヒゲもなかなか生えなかったので、ウチに来たばかりの頃はあちこちにぶつかっていました」
そう語るEさんと息吹ちゃんとの出会いは突然でした。
2014年5月、愛犬海里くんと朝のお散歩に出かけた時のこと。
いつも通る河川敷でいきなり海里くんが普段行かないような場所にグイグイとEさんを引っ張り始めたのです。
まるで、何かに導かれるように・・・。
「臆病で警戒心が強い性格なのでとても不思議に思いました」
海里くんの勢いは経験したことがないほど力強く、なすがままついて行くと、海里くんが立ち止まった場所には赤黒い小さな塊が2つ。
Eさんはバーベキューの生ゴミでも落ちてるのかなと思ったそうですが、よく見ると2匹の小さな子猫でした。
「カラスにつつかれていたようで1匹は内臓が出て既に亡くなっていました。
もう一匹は血まみれの顔でしたが、聞こえないぐらいの声で鳴いていたんです」
それは、愛犬海里くんが見つけた小さな命。
海里くんでなければ出会えなかったかもしれない奇跡でした。
Eさんは「まず助けなきゃ」という想いだけで子猫を保護し、すぐに病院へ。
診てもらうと左目のあたりをカラスにつつかれたようで、目から上顎まで貫通する穴が開いていたそうです。
しかし、お医者さんの懸命な処置とEさんの看病の甲斐あって、一命を取り留めることができたのです。
子猫が助かったことにほっとしたのもつかの間、Eさんはすぐに不安が頭をよぎったといいます。
「ハンデのあるこの子を引き受けてくれる里親さんは簡単には見つからないだろうと思いました。だから私が引き取ってもいいと思ったんですが・・・」
「同居の義母が猫嫌いなのを知っていたので、どうすればいいのか正直悩みました」
現在、ご主人とお子さんと義理の母と暮らしているEさん。
もともと実家では犬も猫も飼っていたそうで、猫の出産を何度も経験していたほどの猫好き。
自分としては子猫を家族として迎え入れたい。
でも家族に迷惑はかけられない。
このままだと誰にも保護されないまま、悲しい場所に連れて行かれるかもしれない・・・。
必死に救った小さな命を前に自問自答を繰り返す日々。
そして、Eさんは決断します。
「義母の説得をすることにしました。何度もお願いしました。そしてようやく許可をもらったんです。その一ヶ月後、退院した子猫を無事に家族に迎え入れることができました」
Eさんの家族に温かく迎え入れられた子猫は「息吹」と名付けられ、新しい家族の一員に。
海里くんにはおてんばで可愛い妹ができたのです。
家族が増えて嬉しい反面、片目が見えないというハンデを抱えた息吹ちゃんの日常は苦難の連続でした。
それは息吹ちゃんにとってもEさんにとっても。
「鼻が利かないようでいつもの場所のいつものお皿に入れないとご飯を食べないこともあります。また、目から上顎まで貫通している穴があるので、水を飲んだ時に穴から鼻に水が入るらしく、グシュグシュして飲み辛そうなんです」
カラスにつつかれた時にできたと思われる穴は手術では完治できず、今もそのまま。
そんな息吹ちゃんを誰よりも支えているのが愛犬の海里くんだといいます。
「海里は完全に私たちと同じ親目線で接してくれました」
息吹ちゃんが小さい時はお尻を舐めてオシッコをさせてあげたり、カサブタだらけの顔を毎日舐めてあげたりと、まるで本当の兄弟か親子のように息吹ちゃんのお世話をしていたそうです。
「海里のおかげで傷だらけだった息吹の顔が今では本当にキレイになりました。今でも毎日舐めています(笑)」
海里くんは優しいだけじゃなく、デキる兄として、しつけも完璧。
息吹ちゃんが激しく走り回ったり、猫じゃらしで激しく遊んだりすると「静かにしなさい!」と言わんばかりに止めようとするんだそうです。
そんな2匹の関係にEさんは「とにかく癒されている」といいます。
そしてもう一つ、息吹ちゃんを家族に迎えたことで大きな変化が。
「なにより変わったのは義母です。今では本当に息吹を可愛がってくれています」
最後「Eさんにとって息吹ちゃんはどんな存在ですか?」と聞くと、こんな答えが返ってきました。
「息吹を見つけたのは私の父が亡くなって1ヶ月後、母はその4年前に亡くしていたので、消えて行く命と生きようとする力の不思議な運命みたいなものを勝手に感じました。海里も息吹も、私の子供と同じぐらい大事な宝物です」
見えない運命に引き寄せられ、あの日、海里くんが見つけた命はEさんの家族に大きな幸せと癒しを届けてくれました。
ハンデを抱えながらも、毎日を全力で楽しんでいる息吹ちゃんはEさん家族と海里くんの愛情に包まれ、今日も元気に暮らしています。
取材・文/太田ポーシャ
@DIME編集部
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愛犬が見つけた小さな命
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