ゆきのすけは保護犬からセラピードックに
大木トオルの救いで被災犬は野犬から人々の癒やしの存在に変わった
「被災犬」というのをご存知ですか?
大きな災害が起こった時に、飼い主の家族と離れ離れになったり、避難所や避難先に連れて行けず、行き場を失ったペット達です。
今回ご紹介するのはそんな被災犬の「ゆきのすけ」です。
東日本大震災の後、野犬化して凶暴になってしまったゆきのすけは保護され、今では人々を癒すセラピードックとして活躍しています。
どんな経緯で、どんな活動をしているのでしょうか。
被災犬ゆきのすけが保護されてセラピードック訓練へ
ゆきのすけは2011年の東日本大震災で被災犬となりました。
被災後は野生化して野犬になっており、凶暴化していました。
福島県二本松市で保護された時には、凶暴さから野犬として殺処分になる予定でした。
当時の状況やゆきのすけの状態から人間目線ではありますが仕方のない判断だったのかもしれません。
しかし、救いの手が現れます。
捨て犬など、殺処分される犬を保護する活動をしていた大木トオルさんにゆきのすけは助けられます。
殺処分を免れ、セラピードックの訓練を受けることになりました。
「凶暴性があり、攻撃的で譲渡できない」とまで言われ、首輪をなんとかつけても3日で食いちぎっていたゆきのすけですが、徐々に助けてくれた大木さんに心を許し始めました。
ゆきのすけをレスキューした大木トオル氏
バックには今は亡きセラピードッグ「チロリ」が写っている
・名前:大木トオル
・生年月日:1947年5月23日
・出身:東京都
・職業:ブルース・ミュージシャン
・居住:ニューヨーク
ブルースミュージシャンの大木さん、1976年に渡米し、東洋人として初の全米ツアーを成功させます。
音楽で日米の架け橋となり、その功績でミュージシャンとして永住権を取得。
ミュージシャンとして数多くの全米コンサートツアーを成功させるとともに、プロデューサーとしても多くのアーティストを育てました。
また、音楽活動以外では、国際セラピードック協会の代表として、捨て犬と被災犬の救出と、セラピードック育成を30年以上行なっています。
子供の頃愛犬と別れざるを得なかった経験とアメリカで芽生えた動物愛護の精神による活動で、捨て犬・捨て猫の殺処分ゼロを目指して国内外で活動されています。
ゆきのすけとの出会いもその活動の一環でした。
ゆきのすけがセラピードックとして人々を癒す
野生化し、人を信じられなくなり、人が怖くなり、人に凶暴になっていたゆきのすけ。
大木さんの努力もあり、人に触れられるのも大丈夫になりました。
東京のセラピードックの訓練所で愛情を持った訓練を受けることで人を信じ、人を受け入れ、人とともにいられるようになったのです。
その後様々な訓練を経て、ゆきのすけは野犬初のセラピードックになりました。
高齢者施設や病院、障がい者施設や児童施設、教育現場や刑務所、被災地への訪問活動など幅広く活動しています。
大災害にあい、傷つき苦しんだゆきのすけが愛情によって人とともに在るようになり、同じように傷ついている人々を癒す役割を果たしています。
愛情の輪廻を感じますね。
ゆきのすけ救出が本に
「わがこころの犬たち―セラピードッグを目指す被災犬たち」
著者:大木トオル
出版社:三一書房(2013/11発売)
価格:¥1,620(税込)
内容説明
命あるものには幸せになる権利がある。被災地に置き去りされた犬たちをセラピードッグに・・・
ゆきのすけ他被災犬救助の様子、野生化した状態から人を信頼する犬へと育てていく過程が書かれている。
目次
第1章 放射能汚染地区に置き去りにされた被災犬を救出
第2章 セラピードッグは真っ直ぐな愛情で人を救う―セラピードッグの活躍の場
第3章 犬とブルースが支えてくれた大木トオルの人生
第4章 それまでの常識を覆して捨て犬をセラピードッグに
第5章 1匹の捨て犬が教えてくれた大切なこと
第6章 生きることを絶対にあきらめてはいけない